第59話 書けない時はこんなもの

Take1

水門みかどさんを殺しておいて、よく来られたわね」

 仏壇の前で手を合わせる男の前で女ははっきりと言った。水門永子えいこの命日から一年を過ぎたある秋のことである。男は女の声に動じる事無く、目を開け水門の遺影を少しの間見てから、再び目を閉じて手を合わせた。

「まだ根に持っているのか?」

 男は静かに口を開いた。目を閉じていても隙の無い姿勢。女は軽く舌打ちすると男の頭に銃を突きつける。

「持っていないとでも思って?」

「……だよな」

 男は銃を気にすることもなく静かに座布団から離れ、立ち上がる。女はその動作を静かに見守りながらも、銃の向け先を変えることは無かった。

「あの子、永子を殺したのはあなたね」


Take2

 ある都市河川の水門から下流に数十メートルのところに少女が浮かび上がった。わたしはその少女の遺体を抱きしめてからなんとか背負って逃げることにした。水を含んだそれはまだ命日を


Take3

 どうしようもなく何かの音を立ててみたいときがある。むしゃくしゃしているとき、恥ずかしい過去を思い出したとき、ふと衝動に駆られる。壁を叩いたり、


(三題噺没より)


※「根」「命日」「水門」の三題噺を書こうとしたのですが、どうやっても「水門」に意識が引っ張られてしまい、書けませんでした。悩んでも書けないときは一週間単位で書けない。そんな感じのわたしです。(2024.3.30)

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