俺の天賦は『イマジナリーフレンド』

ココア味のうどん

第1話:イマジナリーフレンド

「僕にはいるんだ....イマジナリーフレンドが。」


 中学生の頃、友達に言ったことがある。その頃の僕は悩みに悩んでいて、それを親や友達に伝えたことがある。もちろんそのときは簡単に勇気を出せたわけじゃないし、何度も何度も勇気を振り絞ってみて初めて言うことができた。そのときの友達には虚言癖だと言われ馬鹿にされたが、親は信じてくれた。


 しかし、周りから「おかしな家族」と風評被害にあうようになり、親に負担はかけたくなかったため、中学生後半辺りになって、僕はを共有することを諦めた。普通の人になったのだ。よくあるオカルトなんて何も信じやしない。ただ、僕は普通を演じて、そして一生を過ごす。そう決めたんだ。








 高校生になってから2週間ほどが過ぎた。入るまでは怖かった高校生活も、始まってみれば楽しいもので、友達もできて満足に過ごしていた。

 家に帰って、ご飯ができるまで課題をするのが僕のルーティンだ。今日は高校の友達と新作のゲームをするため、早めに終わらせておきたいところだ。お母さんはこの部屋には急ぎの用事以外では入ってこないため集中できる環境にある。


「一人だと集中できていいなぁ~」


そう呟きながらチョコを頬張る僕。あぁ、なんて幸せな環境だ。素晴らしい...—―—―—―—


『むむむ』


...なんか声がするが気のせいだろう。そう思い数学のノートに取り組む僕。


『無視しないでよ!ひとりじゃないでしょ!!!!!』


やれやれ...と思いながら顔上げる。僕の目に金髪の髪の少女がうつる。


「咲、勘弁してくれ...課題を終わらせたいんだ。」


『やだ!...だって課題終わらせた頃にはご飯でしょ?そのあと風呂入ってどうせ友達とゲームじゃん!』


「何がいけないんだ?」


『私は何すればいいのよ!』


「寝ればいいんじゃね?」


『一日中寝てろって?!そんなの嫌!つまんない!』


「俺が先生に怒られろってか。」


『うん!』


殴ってもいいかな?そう思ってしまっても仕方がないと思う。というかこの場面を見たほとんどの人が同意してくれるだろうなぁ...うん。でも殴れないからそんなことを考えても意味がない。

 この少女は咲という。なぜ俺の部屋にいるか疑問に思うだろうが、答えは簡単だ。この子は現実には存在しないのだ。そう、俺のイマジナリーフレンドである。ちなみに俺の意思とは関係なく動き、そして話すため、ほぼ人間といっていい。不思議なものだ。


「後でキャンディーやるから落ち着けなー」


『どうやって食べろと!?わたし意識だけなのよ?アストラルよ?ひどくない?!』


「なんでもいいから課題だけやらしてくれよ、後で考えるから」


『...わかった。』


「やれやれ...」


落ち着いたと思い机に向かう俺。こんなめんどくさい課題など早く終わらせてゲームでもしようと思っていた。その時だった。急に床が光りはじめ、部屋中がまばゆい光に照らされていた。また先が何かしたのだろうか...そう思い慌てて咲のほうを見るが、咲のほうを見てみても驚いている様子で、どうやら咲の仕業ではないらしい。

 俺は状況がおかしいことに気が付く。


「まずい..ッ!?逃げなきゃ...!」


そう叫んでつかの間、意識はもうろうとし始め、ついには途絶えてしまった。








目を覚ました時、そこは森の中だった。目の前には見知らぬ複数人の人物がいた。隣を見ると咲もいた...まぁ俺だけのイマジナリーフレンドだからはぐれるとかはないと思うけど。


「あなたが勇者サマ?」


フードを被った集団の中で真ん中に立っていた人物が声をかけてくる。声的に女性であることがわかる。


「なんだあんた。俺を拉致してどういうつもりだ。」


『そーよそーよ!!!』


こういうときは情報が必要だ。少し強気になってしまったが、話をする必要がある。咲も落ち着いたのか、俺の後に続いてきた。でもちょっと乗り気なのはなんでだろうか。


「拉致したつもりはないんですが...おっとごめんなさい、挨拶がまだでしたね。」


詫びの一言をいれて、フードを取り始める。


「初めまして、異世界の勇者サマ!私の名前はニア。魔族の第一王女にして魔王様の剣です!」


綺麗な容姿とは裏腹に何というか、元気な人だな...。

性格の部分でも気になることがあるが、もっと気になる部分がある。


「ありがとう、俺は拓斗だ。よろしく。ところで聞いていいのかわからないんだが...その角は...?」


『私も思ってた!なんなのかしら』


「あぁ、これですか。これは魔族の特徴ですよ!魔族は自身の力の特徴が体の一部として顕現するんです!勇者サマの世界では違ったかもしれませんが、この世界に生きる人々は一定数が天賦という力を授かって生まれてくるのです。しかしそれとは別に、我ら魔族は特性というものも持っており、その力に耐えるために身体が進化した結果このように外見的変化が現れるようになったのです。」


なるほど、この世界がやばいことは分かった。


「それは分かったが...なぜ俺が勇者なんだ?だいたい、俺にそんな力はないんだが。」


「それはですね...異世界の勇者サマにはこの世界の常識では考えられない力が宿るからです。あなたは世界を超えるという理を外れる行為を行いました。理を外れた者には、理を壊せるほどの力が宿るのです。私たちは、その力を借りたいのです。」


「なるほど、つまり俺はこの世界に来たことで新たに力を得たと。」


「そういうことです!」


『じゃあ拓斗はこの世界じゃ最強ってこと?!』


「そういうことです!!!」


急にそんなこと言われてもなぁ...というのが感想だ。強大な力は利用される。実際目の前に利用しようとしている人物がいるのだから警戒はしておいたほうがいいだろう...てかちょっと待てよ...?


「見えてんのかあんた、この子が。」


「あんたではなく、ニアですよ!えぇ、ずっと見えてましたよ。」


『この世界じゃ幽霊なんていそうだもんね!私が見える人がいてもおかしくないか』


「いや、咲は俺の中の幻覚のはずなんだが...」


「とにかく、二人はこの世界のことなんてあまりわからないでしょうから、私たちの住まいにご案内します。安心してください、悪いようにはしません♪」


その言葉が一番信用できないんだが...。それでも俺たちに選択肢はないからついていくしかない。まぁ起こってしまったら起こってしまっただ。この世界を生き抜いてやるしかない。俺と咲はニアについていくことを決め、魔族の住む場所へと向かうことになった。





 

















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