VRゲーマー少女の「青春攻略法」と、それに何故か巻き込まれた俺。

朝露

アオハル・チュートリアル!

電脳勇者は青春の夢を見るか?

第1話 新学期前の深夜って滅茶苦茶ネット過疎いよね

さくら

それは、出会いと別れを感じさせる、春の花。

青春の象徴を見上げながら、俺は。

「まじでヤバい…これは俺至上10番目位にヤバい…」

結構強力な睡魔に襲われていた。



少し状況を説明しよう。

俺は鳴神なるかみはじめ。二年生になって大体8時間が経過した男子高校生。

そう、今日は1学期の始業式。学生生活の中でもトップクラスの重要な日だ。

だと言うのに…

「滅茶苦茶に徹夜オールしてしまった…」

昨夜、俺はあろうことかVRMMOゲームで遊び倒し、結果として布団に入らずに朝日を迎えてしまった。

言うまでもなく自業自得、全ては俺のせいだ。

只、残念ながら自身の過失を認めても眠気は消えてくれない。

「はぁ…こんなことなら寝とけば良かった。」

だから、こうして自分を恨む事しか出来ないのだ。

「まぁ始業式の後は最悪寝てても良い…取り敢えず行事には出ねば…」

愚痴か決意表明か自分でも分からない独り言を呟き、俺は若干ずり落ちて来た鞄を背負い直した。





「やぁやぁなるちゃん。死ぬ程ダルそうだけどダイジョブそ?」

なんとかぶっ倒れずに登校し、92%気合いで耐えた始業式の反動で机に突っ伏している俺に、そんな挨拶、或いは問いかけが飛んできた。

「マジでクソねみぃ…なんかカフェインくれよあずま…後『鳴ちゃん』はヤメロと」

「僕は某万能猫型ロボットじゃ無いので都合良くコーヒー持ってたりはしないし、鳴ちゃん呼びもやめないよ。」

妙なハイテンションで俺の要望に返答するのは、肩辺りまで伸びた髪と、男性にしては比較的細めの体躯から、中性的な雰囲気を感じさせる糸目の人物─────俺の友人である一之瀬いちのせあずまである。

「…使えねぇなぁ。」

「君の数少ない友人を『使えない』扱いは人の心無くない?」

「黙れ。後俺は別に友人が多くないだけで少ない訳じゃない。」

そんなごく普通の会話をしていると、不意に東がニッコリと微笑んだ。

「…じゃあさ、鳴ちゃん。目が覚める事言ってあげようか。」

俺は嫌な予感がしていた。こいつがこのような事を言う時は大体『裏』がある。

「お前、なんか企んだりしてないよな?」

故に、俺は疑問と警戒を内包した一言を放つのだが、

「まさか!僕の行動は100%善意で出来てるんだよ?」

…大体この一言が返ってきて、それで終わりだ。

まぁ、この眠気を解消できるのなら、こいつの下らない悪戯も甘んじて受け入れるか。

「…なんだよ、目が覚める事って。」

「さっきからさ、多分1年生かな?女の子が君を熱心に見つめてるよ。」

全く呆れた。そんな明らかな嘘で俺をからかうつもりなのか?

「…ハァ、疲れるからもう少しマシな嘘をいてくれ。」

俺は東に向かってそう言い、新学期初日から大胆な居眠りを敢行しようと─────

「いやいや、マジだって。ほら、そこ見てみな?」

「…?」

そんな東の声に、俺は机に突っ伏したまま顔を廊下の方に向けた。


「…!」

その少女は、俺と目が合い、少し物怖じするように赤面して顔を背けた。

つまり、俺を見ていた。


「…マジかよ…」

「マジ、だったでしょ?」

何故か自慢気な東の声が、眠気の消え失せた脳に響いた。














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