第19話

「あっ……」


「あーほら、だから急ぐなって言ったじゃない」


「す、すまん……」


「もう、しょうがないわね」




 急いでしまったせいで、コップに注いでいたお茶をこぼしてしまった。


 くそ、思わぬタイムロス。


 でも、何故か秋葉の機嫌が良かったおかけで、いつもなら絶対にキレているタイミングなのに少し小言程度で済んだのは不幸中の幸いだろう。




「座ってていいわよ、タオル、私が持ってきてあげるから。えっと、クローゼットの中?」


「えっ!? いや、待っ」




 しかし、秋葉を静止させるには時すでに遅く。


 足が折れている俺よりも数倍素早い秋葉は、ヌルッとクローゼットの前に移動し、閉ざされた禁忌の扉を開いた。


 そうして、開かれた扉から飛び出る、特急呪物。




「ぶっはーーーー!! はぁ……はぁ……し、死ぬかと思った……き、君ねぇ! 仮にも命の恩人の私になんて仕打ちを……あっ」


「あっ」




 間の抜けた彼女と俺の声がリビングに響く。。


 そんな俺たちとは裏腹に、状況が理解できていないであろう秋葉はというと。


 ただ冷静に、雪女を名乗る彼女と俺に対して、交互に雪よりも冷たい視線を向けているだけだった。




 …………あ、終わった。

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Melty girl~雪山で遭難したところを助けてくれた少女が実は雪女の末裔で、一族のしきたりとして、結婚を迫られるハメになった件について~ 村木友静 @mura1420

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