第六回 褒めることができるようになりましょう

 さて、ここからが補修といいますか、新規に書き直しになります。タイトルだけは探すことができましたので、第六回のタイトルは同じものになります。わたし程度の人間が創作論を再度書くなんておこがましいですし、血迷っているとしか思えませんが、読者が一人でもいるのであれば、書いてみようかと思います。

 

 折角ですので新しいアプローチで書いてみましょう。今回は何故、根性論として「褒めること」が必要なのでしょうか、という点です。


 第四回で「物事をまっすぐ見る」ということを書きました。一見、この一言が簡単に思えるでしょうが、「まっすぐ見る」というのは、実は大変だということを、再確認してみましょうではありませんか。


 わたしは主婦で子供が二人おります。毎日、彼らと接していますし、ご飯も食べさせないといけません。時にはわたしがやりたいことを中断してでも、彼らが話したいことや悩みを聞いてあげる必要があります。このようなシチュエーション、わたしだけではなく、親であれば普通に発生するところではないでしょうか。

 こんな時、わたしたちは毎回、無心で彼らに向かって、真っ直ぐな気持ちでいられるでしょうか。そんなこと、聖人でもないかぎり不可能ですよね。時には「後にして!」と拒否をしたり、イライラして言わなくてもいいことを言ってしまうでしょう。子供たちの日頃の生活態度を思い出して、本題とは関係のないお小言を与えてしまうことも予想できます。


 自分の心に用意がないと、わたしたちは感情のままに相手に接してしまう生き物です。それは仕方のないことでありますが、避ける方法はあります。それが「褒める」というスタンスなのです。

 つまり、「褒めることができる」というのは、自分の余裕を作り出す手段なのです。自分にいつでも相手を褒めることができる自信と余裕があれば、細かいことに心乱されることなく、相手に接することができます。それがないときのわたしたちは、ただその場の雰囲気と感情に飲まれてしまうのです。


 物書きとして「褒める」スタンスを持っているということは、他者の作品の素晴らしさや面白さの真理にアクセスしやすいということでもあります。わたしは褒めるという行為こそが、書き手にとって大事な素養だと思っています。作家だけではありません。何かしらの創作をしていて、他者をあるいは自身を褒められない人間は、狭い価値観でしか活動ができません。これは道徳的な観点についてではなく、物事を「まっすぐ見る」ことのできるスキルの有無を指摘しています。

 わたしたちは何かを産み出さなければいけません。何かを誰かを、褒め、励ませない人間が、どうして心揺さぶる作品を作れるでしょうか。わたしたちは常に読者から作品を通して人間性を試されているのだと理解するべきだと思うのです。


 さて、第三回で批評やアドバイスは一切無視しましょう、とお伝えしました。これは何故かを別角度からお話すると、批評やアドバイスは「読者」がするものであって、わたしたち「作者」がするものではないからです。わたちたちは素人ですから、好きに書けばいいですし、読者は好きに批評やアドバイスをすればいいのです、ただ、わたしたち作者が読者の言うことに従う義務はありません。


 読者や他の作者からの批評やアドバイスは、わたしたちの「まっすぐ見る」勇気を削いできます。ですので、一切無視しなくてはなりません。わたしたちは自分の目を曇らせないためにも、何事にも褒めることができる自分を磨き上げなければなりません。ここに根性が必要なわけです。


 重ねて、わたしたちは「批評やアドバイス」から遠ざかる訓練もしなければなりません。これはらすべて根性論として実施すべきことだと、わたしは考えております。


 素人創作において、「読者からの意見はどんなものでも大切にすべき」というスタンスは、一見、真摯で誠実そうな態度に思えますが、わたしから言わせれば、邪念を入れるだけで、何の意味もないことだと思います。むしろ、そういったノイズから遠ざかったクリアーな気持ちで、人間や物事の真理を突いた作品を書いて読者に還元する方がよっぽど良いのではないかと、わたしは常日頃考えております。


(続)

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