先輩、卒業おめでとうございます。

義為

本編

「先輩、卒業おめでとうございます」


 

 ありがとう〜!なんて、無邪気に笑わないで。

 泣いてよ。

 私が我慢してるように。



「春から西の大学ですね!

 ほんっと、らしいですよね〜!

 先輩はどこでも生きていけるたくましさがありますから!」



 こっちの言葉忘れちゃうかも?だなんて、嫌だ。

 知らない先輩になっちゃうのは、辛いよ。



「うっそだ〜!

 またテキトーなこと言っちゃって!

 周りを染めちゃうのが先輩なくせに!」



 本音と建前と言うけれど、私の言葉選びは氷山の一角だ。

 ほら、私が貴方をどれだけ狂おしく想っているか、知らないでしょ。


 

 寂しくなるな、なんて嘘、吐かないで。

 私と違って、嘘つきな先輩。



「彼女さんに怒られますよ〜?」



 からからと2人して笑う。

 いつも通りの、最後の、お決まりのネタだ。

 先輩の隣には、あの人が居る。

 これまでも、これからも。



「じゃあ先輩、またいつか!」



 もう会うことはないでしょう。

 さらば、私の醜い憧れよ。



「僕はへそ曲がりじゃないので、こっちの大学に進学しますけどね〜!」



 そう、会うことはない。

 貴方とは元々無関係な人間だった。

 また、そうなるだけ。



 きっと、一生忘れない。

 先輩、卒業おめでとうございます。

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先輩、卒業おめでとうございます。 義為 @ghithewriter

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