第16話
少々ごたついてしまったが俺と勇気さんはカフェ前で結衣を待つことにした。
しばらく待っていると試験を終えた結衣がやってきた。
「ばっちりでした」
結衣がそう言ってくる。
「兄様と勉強したところ出ましたっ!それから実技も、兄様に教えてもらったところが出ました!」
結衣はニコニコと嬉しそうな顔をしていた。
俺たちは車に戻りそれから家に帰ることになった。
そして、もう少しで家が見えてくる、って距離感になった時だった。
「ん?勇気さん、あれ人立ってません?」
ウチの庭に入る門のところに人が立っているように見えた。
「たぶん、人だね。人が来るなんて話は聞いてないんだけどなあ」
ちなみに俺たちの家には通りがかりで着くとかってことはない。
俺たちの家がある山だが他の街に繋がってたり近道になるような道がなく。
基本的にこの山に入るなら五条家に用事がある人だけが入る、そんな山だった。
そんなことで疑問に思いながらも車を進めてるとやがて誰が立っているのかが分かってきた。
「あれは……」
「一也兄さんですね。勇気さん、俺が話してきますよ、なんの用か知らないけど」
俺はそう言って真っ先に車を降りると一足先に一也兄さんの前に歩いていった。
「よう、零」
向こうも気付いたようで俺に声をかけてきた。
「何の用?兄さん」
「察せないか?」
「無理だね」
わざわざこんな山奥まで俺の事を馬鹿にしにくるような人じゃないのは分かっている。
だからこそ不思議だ。
なんのために来たのか分からない。
俺が困ってると兄さんは「はっ」と鼻で笑って口を開く。
「父さんから伝言がある」
「伝言?」
俺が首を傾げると兄さんは言った。
「今日から一条は本家を降りる、そうだ」
「ん?つまり?」
「今日から一条が分家だ。本家は五条。俺の言いたいことは分かったな?」
「あ、えーっと、それはつまり?」
「俺たち一条はお前たち五条からの虐げを受けることになる、というわけだ。お前が受けてきた暴言の数々を俺たちに正当に言い返すことができるってわけだ」
正直急展開で戸惑っている部分もあるけど、一つだけ確認しておこう。
「よくお父様がそんなこと言ったね?」
「実力主義者とはこういうことだ。他人に厳しく、しかし自分にも厳しい」
「へぇ」
あの人、意外と筋を通すんだな。
(自分の時だけ甘くしない……なかなか筋が通ってるじゃないか)
って思ってたら、勇気さんが近くにやってきたので俺は今までの事を話した。
「えぇ?!じゃあ僕が実質的に本家のリーダー的なポジションなの?!」
勇気さんが自分のことを指さして叫んでた。
それに対して一也兄さんは頷いた。
「そうです。五条 勇気さん。あなたがこれから俺たちのトップになります。よろしくお願いします。何かありましたらなんなりとお申し付けください。いかなる虐げも受けましょう。それが敗者へのペナルティ」
(おぉ?完全に立場が変わったぞ)
俺がそう思ってたら勇気さんはニヤニヤしてた。
「えー、そうなんだぁ。じゃあ命令しちゃおうかなぁ?」
まさか、この人がこんなことを言うとは思っていなかっので、少し身構えたのだが。
「じゃあ、便所掃除でもしてもらおうかな」
割と優しそうな命令で安心した俺だった。
勇気さんと一也は2人で先に入ってった。
俺はと言うと隣にいた結衣に聞いてみることにした。
「ところで本家って変わるんだね」
「一条家が本家になった時に言ってましたよ。一番強い家が本家だって、だから変わることもあるみたいです」
(なるほどねぇ)
とは言え俺の前世は普通の日本人だったわけで、本家になったとしても、アイツらがやってきたような虐げは出来そうにないのであった。
ま、でも俺も人間だ。
多少の虐げはするけどね。
今まで散々やられてきたんだし。
◇
それから1週間ほど。
正直言って優斗と一也の仲は最初は最悪だったのだが、一也兄さんがどんどんとへりくだっていった。
俺はもう確信してた。
(こいつ、自分にもめちゃくちゃ厳しいタイプのやつだって)
人が嫌がることは進んでやって、雑用なんかもしっかりやってた。
ここまできたらさすがに俺の中での印象は改善されてきていた。
そんな中だった。
俺たちは今日五条家のリビングに集合してた。
理由はもちろん、例のやつだ。
結衣は一通の手紙を机の上に置いててジーッと見つめてた。
開ける勇気が出ないのだろうか?
俺は結衣の横に座って聞いた。
「いっしょに開ける?」
「お、お願いします!」
俺は頷いて結衣といっしょに封筒を開けてった。
中にあったのは
学園からの合否の通知書だった。
「ドキドキしますぅ〜」
そう言いながら結衣は手紙を開けていく。
そして叫んだ。
「合格でしたぁ!」
「良かったじゃないか」
「兄様のお陰様ですよ!」
俺の両手を取ってきた結衣。
それから結衣は書類に目を通し始めた。
「えーっと、必要な提出書類……はまとめてありますね」
それから結衣はジーッと俺を見てきて。
「兄様、一緒に必要書類とか書きませんか?!」
「そうだね」
俺は結衣といっしょに書類の用意を始めた。
ほとんどは名前を書いて同意書にサインみたいな感じだったのだが、進んでいくとこんなものが出てきた。
【入部希望者の能力測定表】
みたいな書類。
そこにはこうあった。
ランク:
攻撃力:
防御力:
素早さ:
みたいなゲームのような項目。
いわゆるステータスと呼ばれるものだ。
ちなみに測定方法というものがあり、それで測定して出た結果をここに書いていく、という形式である。
最近は全然計測していなかったから自分のステータスがどれくらいなのか少し楽しみである。
ちなみにこれを学園に送る理由なのだが、クラス分けにも使われたりするそうだ。
って訳で俺はさっそく測定を開始することにした。ちなみにだがこういう測定の時は自分の武器を使うわけではなく、試験用の武器を使うことになる。
よって絶刀は使えないわけなんだけど。
その結果はこうだった。
ランク:D
攻撃力:D
防御力:D
素早さ:D
以前より少しだけマシかな?程度のステータスだった。
前ならオールEだったから。
多少は俺も成長しているようである。
俺が感心していると一緒に測定してた結衣が目をキラキラさせてた。
「どうしたの?」
「さすが!兄様です!紋章がないのに成長なさるなんて!紋章なしでステータスが上がった人なんて私は初めて聞きましたよ!」
どうやら俺は紋章なしだから褒められる基準が凄まじく下がっているようだ。
転生したらダンジョンがある日本でした。超実力主義の家に生まれたけど俺には才能が無かったので追放されましたが超強い魔剣に好かれたので人生イージーモード。「帰ってこい?かわいい義妹が泣くので無理」 にこん @nicon
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