第118話 クラスメイトの行方
彼女たちは俺のクラスメイトについて知らないようだったので、俺はリーメルとともに部屋を出た。俺たちがこの世界に召喚されたときも、他の学校の生徒とは会わなかった。もしかしたら俺達を召喚する前までは他の学校の生徒がいたが、俺達と入れ替わりでいなくなったのかもしれない。
「この城にいないとなると、じゃあ俺のクラスメイトはどこに…」
「城の人間に聞いてみるのが一番」
悲壮感の俺の呟きを聞いて、リーメルがアドバイスをしてくれた。尋問するということか。それがてっとり早いかもしれない。
俺は廊下を歩いて城の人間を探した。
だが思った以上にこの城に人がいないようで中々見つけられない。魔王軍との前線に出た女帝についていったものが多いのかもしれない。
しばらく歩いてようやく城の人間を見つけた。桃色の髪をした女性。俺たちクラスメイトの訓練の指導を担当した人だ。たしかメアリスさんだったか。おそらくさっき食堂にいた高校生たちの指導もしているのだろう。
俺は迷いなくメアリスさんに話しかけた。
「お久しぶりですメアリスさん。俺のことを覚えてますか」
「あっ!あなたは一つ前に召喚されたグループの」
彼女はどうやら俺のことを覚えていたようだ。俺が女帝に追放されたから印象に残っていたのだろうか。俺が生きてここに戻ってきたことに驚き動揺している。
「アオイさんが言っていたように本当に生きてたんですね。彼女とは会えましたか」
詳しい話を聞いてみたところ、どうやら俺が南の大陸に飛ばされたかもしれないということを葵に教えたのが彼女だったらしい。それで葵と楠木さんはあんなところにいたわけだ。彼女がアドバイスをしなければ葵たちが俺を追って危険な目にあうこともなかった気がするが、あの行動は葵たちの意思だろうからメアリスさんを責めはしない。
「楠木さんは一ノ瀬の能力で石にされて、葵は一ノ瀬に連れ戻されてしまいました。今はたぶん女帝のところにいます。そこにもいくつもりですが、他のクラスメイトの行方をあなたからは聞いておきたい」
メアリスさんは一瞬戸惑ってから、意を決したように話し出した。
「これは別に隠している情報ではないので伝えても問題ないですね。あなたのクラスメイトは戦場に投入されて全滅しました。生死は不明ですが、何人かは魔王軍の捕虜になったという情報があります」
そんなことを淡々と告げるメアリスの胸倉を俺は気づいたら掴んでいた。
「俺たちの命をなんだと思ってるんだお前らは。なんで俺たちがこんな思いをしなきゃならないんだ」
「私には言われても困りますよ。私もあなたのクラスメイトと同じ、ただ女帝に召喚されただけの駒にすぎないのですから」
「あなたも…?」
俺は掴んだ胸倉を話して。彼女は服を正しながら話を続ける。
「側近の黒騎士レオなんかもそうです。女帝の周りの人間は、大半が女帝が召喚した人間です。それ女帝優位の契約で逆らえなくして意のままに操る。本来は女帝の能力や契約に関することを漏らしてはいけない契約があるのですが、私はすでに契約が解除されてるのでもうなんでも喋れます」
やれやれといった態度でメアリスさんは話を続ける。
「女帝カーラは聖教の妨害を押し切って、魔王の力を手に入れようとしています。この世界のあらゆる生物を使役する最強のテイム能力を。その戦いのために、私のような末端の人間の契約を解いて魔力を自分に集中させているのでしょう」
またここでも権能か。それに女帝が魔王軍と戦っていたのは、魔王軍の世界征服を防ぐためではなく実際はその真逆。女帝が世界征服をする力を手に入れるためだったのだ。
「それで俺はどうすれば…」
「私に聞かれても分かりませんよ。あなたにとって重要なことをしたらいいんじゃないですか」
「俺にとって…ありがとうございます。胸倉をつかんですみませんでした。じゃあ俺はこれで」
俺はリーメルと共に城をあとにした。
俺にとって大事なのは憎い女帝を懲らしめることではなく、クラスメイトを助けること。とりあえずまずは女帝や一ノ瀬や葵や捕虜になったクラスメイトがいる、魔王領を目指すことにする。
万能の付与術師は無双する~クラス転移されて追放&奴隷化された俺は気づいたら最強になっていました。救った奴隷たちが作った革命軍のボスになったので、この世界に反逆したいと思います~ にんじん漢 @ninjin_otoko
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