第14話 居場所

☆鈴島林檎(すずしまりんご)サイド☆


私なんかに2人が何の用だろうか。

そう思いながら私は目の前に座っている園島という人とその横に居る英二を見る。

英二も園島さんも私を見ながら真剣な顔をしている。

その姿を見ながら私は目線を目の前に動かす。

そこにはケーキとコーヒーが置かれている。


「...それで私にお話とはどういう件」

「...私は君のエッセイを読ませてもらったよ」

「!」

「それで君の人生を見つめ直してみた。...私は...本当に過酷で深刻な人生を歩んでいるんだね。...それで私は...」

「?」


私は園島さんを見る。

すると園島さんは「...私は君に謝ろうと思う」と言い出した。

そして「君が浮気した件については謝罪を頂きたい。だけど状況が状況だ。憂慮する必要があると思ってね」と言ってくる。

私は驚きながら英二を見る。

英二は私を見ながら苦笑していた。


「という事だ」

「...でも私自身は考えても私が悪いから憂慮は必要無いけど」

「...そうもいかない。君は...君自身でそうなりたかった訳じゃ無いだろう」

「...その通りだけど。...だけど」

「私はうやむやになるのが嫌いでね」


そう言いながら園島さんは私を見てくる。

それから「悪い事は悪い事として謝るのが礼儀だ。だから君の事をあまり知らずに広めて悪かった」と謝ってくる。

私はその姿におどおどしながら英二をまた見た。


「...まあ取り敢えず何か飲まないか」

「...」

「...そうだね。何かを飲もうか」

「英二はこれで良いの?」

「...これで良いのか分からない。だけど今のお前なら...な」


言いながら英二は私の肩を掴んだ。

それから笑みを浮かべる。

私はその笑みに眉を顰めながら考えた。

そして立ち上がる。


「...分かった」


と呟きながらだ。

そして私達は飲み物を取りに行った。

並んでいると「時に」と園島さんが言葉を発した。

それから「今日から知り合いだね」と言う。


「...え?...確かにそうですね」

「...まあこれを上手く構築していっていつか君とは友人になりたい気がするね」

「...私はそんなにいい人じゃ無いから駄目ですよ」

「私はそうは思わないな。君は...少なくとも前よりかは良くなっているよ」


そう言いながら園島さんは笑みを浮かべる。

やがて列がはけてから飲み物を入れれる状態になった。

それから園島さんがオレンジジュースを選択した。

英二はコーヒー。

私は紅茶にしてみる。



「私も小説を書くんだ。実は」

「...ああそうなのか。ミステリーか?」

「失礼だな。ラブコメだよ。人を見掛けで判断してはならない」

「...いや。まあ...予想外だ」

「失礼だな」


そんな感じで会話をする園島さんと英二。

私はその姿を見ながら微笑んでいた。

それから手元の紅茶の面を動かす。

すると「君はエッセイしか書かないのかい」と園島さんが聞いてきた。

私はその言葉に「そうだね」と返事をする。


「ふむ。君は...ああ。もし良かったら私の友人に会わないかね」

「...園島さんの友人?」

「彼女はネット小説のプロでね。引きこもりなんだけど」

「...しかし私なんかが...お会いしても」

「何。気にするな。...恐らく相手も会いたがらないから」

「いや待て。それじゃマイナスじゃねーか」


英二が顔を引き攣らせながらツッコミを入れる。

私もクスッと笑いながら「そうなんですね」と言う。

園島さんは「そうだな。基本的に人に会いたがらないから」と苦笑い。


「...しかしいい社会勉強にはなるだろう」

「その人は何で引き籠っているの」

「...三島桃(みしまもも)というが...彼女は...心理的にマズくてね。まだ治らないPTSDで引き籠っている」

「...PTSD?」

「そうだ。PTSDだね。...彼女は...自らの親の事故死を目にしたんだ」


そう言いながら園島さんは目線を外に向ける。

私は「...」と考える。

という事は片親な私にとっては...簡単に言えば印象に残る存在か。

思いながら私は同じ様に外を見た。


「誰もが誰もこの星に君だけでは無いぞ。ワトソン君」

「...そうだな。星」

「...」


何かその言葉はしっくりくるものがあった。

私は思いながら2人を見る。

それからケーキを食べた。

砂糖控えめのケーキだが...何だか甘ったるく感じた。


「...という事で会ってくれるかね」

「...私なんかで良かったら会います」

「そうか。彼女は...小説のフォロワー数が半端じゃ無いので勉強になるだろうね」

「...有難う。園島さん」


そう言いながら私はケーキを食べる。

そして糖分をそこそこに摂取した。

それから聞いてみる。


「三島さんという人は...その。笑顔ですか」

「...彼女が笑顔を浮かべる事は先ずない。そしてそれは本心かも分からない。だけど私達はオフ会で繋がった。...だから君を誘った」

「...そうだったんですね」

「ああ」


私はその言葉を聞きながら考える。

(友人とはそういうラフなもので良いのだろうか)と。

私も少しだけ羽目を外しても良いのかもしれない。

そう思えた。

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彼女に浮気された俺は2人の義姉妹に迫られている訳ですが アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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