エルフの手紙

季節は巡り僕が天使になってから

早くも一年が経とうとしていた。


その間も郵便をしてたわけなんだけども…

気付いたことが1つ。


ここ、王都シルフォリアには意外と多くの種族が生活してるってこと。


もちろん人間は多いんだけども、

中にはエルフやドワーフもいた。


全員、人間に見えるように認識阻害してるみたいだけど

正直僕から見れば誰がどの種族かなんてバレバレなんだよね…


(これも天使の力ッ!!)


うるさいですよ女神様。

静かにしててください。


もちろん気付いてる人も気づいてない人もいるわけなんだけど、

一応の平和が保たれているならそれでもいい。


というのは嘘で、

僕は今、内心穏やかじゃない。


というのも

おかみさんから出張受け取りの依頼が来たといわれたから。

とある都合で郵便屋まで来れない人が

頼むのが出張受け取り。


郵便屋が手紙を受け取りに出向く。


別に受け取りに出向くことは苦でも何でもない…

問題は、この依頼をしてくる人って

完全に何か厄介事を抱えてる人なんだよなぁ


例えば外を出歩けないくらい顔が民衆に割れてるとか…

例えば法に触れるギリギリのグレーゾーンを攻めたような物だったり。


大丈夫かなぁなんて思いながらも仕事ですからと割り切って

指定の場所に着く。


…着いたんだけど、何もないよ。


たどり着いたのは中央地区の外れ、

少し寂れたような場所だった。


「こんな寂れたとこに

依頼主、ホントにいるのかなぁ?」


「寂れたところで悪かったね。」


突如足元から声が聞こえた。


びっくりして飛びのくと地面にあった扉が開く。


「あれま、可愛い郵便屋さんだね。

寒いだろ?さぁ中に入った入った。」


扉の中から顔を出したのは

年齢不詳の女性、いわゆる美魔女ってやつだ。


連れられて中に入ると

そこには壁一面にお酒が保管されている。


「今日の依頼はアタシじゃないんだ。

依頼主はあの子だよ。」


指さした先にいたのはお姉さん。


絹のような肌、そしてとがった耳、

エルフだった。


なるほど理解した。

たしかに王都ではエルフなどを含んだいわゆる亜人が住むことは合法になっている。


しかしそれでも人間とは厄介なもので

自分と異なる者には無意識に注目してしまうものだ。

それも少しずつなくなってきてはいるものの

未だ完全とは言える状態ではない。


特徴的な耳などを認識阻害で隠せれば

全く問題はないのだが

それを全員が全員できるとも限らない。

実際に僕だってまだできるわけじゃない。


そうして稀有の目にさらされ続けることは

この人たちにとってもいい気分じゃないだろう。


(ということはこの美魔女もエルフ!?)


「ようやくお気づきみたいね。

ここはこの都に窮屈さを感じたエルフが

唯一ありのままでいられる場所なのよ。」


美魔女の耳の認識阻害が解かれる。

思った通り、その耳はとがっていた。


(この人、天使を欺くって…

どれだけ高位のエルフなのやら…)


グラスを磨いていた女性が

僕に気付いたようで駆け寄ってくる。


「ゆ、郵便屋さんですか?

わ、私はレオナ・クリシェって言います。

実はこれをロイド・クロムナさんに届けてほしくて…」


なにやら恥ずかしそうにもじもじしながら

渡してきたのは1通の便箋。


「拝見しますね。」


えっと、宛先はどこかなっと…!?


裏返して宛先を確認してぞっとした。


そこに書かれていた宛先、

それはダークエルフ領だったからだ。

外との接触を断っているダークエルフに宛てて手紙なんて

普通に郵便を使っちゃ、まず届かない。


だから同じく亜人で且つ郵便屋の僕を頼ったということね。

なるほどなるほど。


それにしてもエルフからダークエルフに宛てて手紙?

どういうこと?


魔法に長けた種族であるエルフとダークエルフ。

でもその2つの種族は

なにやら昔から仲が良くないってうわさは聞くんだけど…


「その手紙はつまりね、あぁいうことなんだよ。」


そのですね、耳打ちされても分かんないんデスケド…


「あの子の顔見てみな。」


言われたとおりに見てみると

レオナと名乗った女性が身悶えている。


耳をすませば

「あの人のところに届くかな…?」なんて顔を赤らめながら言っている。


―ピッッシャーン!!!!


「つまりは“そういうこと”ですか!?」

「そうさ、つまり“そういうこと”なんだよ」


了解しましたぁ!!

そういうことなら、この僕にお任せを。


愛を運ぶキューピッド、大天使ガブリエルの名にかけて

この手紙、必ずやお届けいたしましょう!!


「必ず届けてくださいね。」


「では大切なお手紙、お預かりいたします。」


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お届け物は天啓ですか?~転生先は大天使!?運ぶは加護か神罰か~ かつをぶし @katuwobushi

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