君の姿が見えるまで
昏昏
第1話
後ろから、自分が追いかけてくる。
姿も、形も、服装も、走る速さも自分だった。
暗くて顔は見えないが、きっと同じように僕なのだろう。
僕は僕なはずだ。
僕以外の僕がいるなんて信じられない。
噂で聞くドッペルゲンガーも流石にここまで似てないはずだ。
今わかる違いは、体力だ。
僕はなんとか気力のみで走って、今にも意識が途切れそうだが、後ろの僕はその速度を少しも緩めることなく、僕に追従する。
追いつかれらたらどうなるかなんて想像したくもない。
だけど、もう限界かもしれない。
足にもう力が入らない。今走っているのか歩いているのかもわからない。
これが最期なのかと思うと、今までの思い出がビデオのように再生される。
頭は、必死に逃げろと言う。
・・・体は、もう、諦めたいらしい。
足がもつれ、へたり込む。
ようやく、もう一人の僕が走らず、歩き出した。
つまり、追いかけられているのは僕の勘違いなどではなく、目的は、僕だったのだ。
背格好が僕とはいえ、顔は違うかもしれない。
なぜこの思いに至らなかったのかと思いながら、なんとかして顔を見ようとする。
太陽も沈み、黄昏色に染まる世界で相対する。
まだ顔が見れない。
まだ。まだ。まだ。
ひぐらしと、蛙の声に混じって、何か異音が聞こえた。
何かをひたすらにつぶやいているようだ。
呟きながら、こちらに向かってくる。
ようやく見えた。顔は。
君の姿が見えるまで 昏昏 @IkiikI
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