神々は死んだのか

無名の人

神々は死んだのか

2022年を境に(その予兆は10年以上前からあったにせよ)この数十年間我々が慣れ親しんできた諸々のものが音を立てて崩れ始めたように思われる(2022年の瓦解)。それまで社会のあらゆる分野で「壁打ちテニス」に勤しんできた方々が、「壁の崩壊」を目の当たりにして茫然自失の状態で立ち竦んでいるようではある。


振り返ってみると、20世紀以来の懐かしい神話の数々が思い出される。「国体」としてのアメリカ/「反共無罪」のマザーM一族/「安全と安心」の原子力ムラ/「敵に対する絶対的信頼」に基づく奇妙な核抑止論/「18歳お受験偏差値」に基づく(似非?)能力主義/「触らぬ神に祟りなし」の J 帝国とその取り巻き企業群/「ブランド信仰」の果ての品質偽装天国と「電子立国ニッポン」の類の共同幻想・・・


これらの「現象」に共通する心理は、(「自らの思索と努力を通してより良い未来を構築する自由」から(意識的または無意識的に)あえて逃走するかのような)「現在の延長線上にある無難な近未来」が未来永劫持続可能であるという無邪気な思い込み、または思考停止ではなかったか。


ニーチェが生きていたら「神々は死んだ」と力強く断言してくれるだろうか。それとも、「サンタクロースと同じく、20世紀の神々はあなた方一人ひとりの心の中で永遠に不滅です」と優しく囁(ささや)いてくれるだろうか。


21世紀を「新たな飛躍の起点」にするか「終わりの始まり」にするかが、今こそ我々一人ひとりに問われているような気がする。


昭和天皇は、「人間宣言」によって、「そもそも現人神(あらひとがみ)は存在しなかったのだ」と(新たな主権者たる)国民に教えてくださった。20世紀の神々が「人間宣言」をする日が来るのだろうか。来るとしたら、如何なる形で我々はその日を迎えるのだろうか。望むらくは「玉音放送なし」であらんことを。


2023.8.15

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