バレンタインデーの奇跡

マイペース七瀬

第1話

2024年2月14日が、近づいている。

 ヨシアキは、もう40代後半になっていた。

 この年齢になって、ヨシアキは、最近、母親と死別した。

 それは、悲しい話だった。

 最後に口を利いたのは、いつだろうか?

 ヨシアキは、優しい性格だが、少し、短気なところがあって、最後にあった時、母親のジュンに、「親離れ子離れをしてくれ」と言って、母親のジュンは、少し、気力を落として、「そうね、ヨシアキの言ったとおりね」と言った。

 それが、最後の言葉だった。

 それから、暫くしてから、母親のジュンは、亡くなった。

 …

 実は、ヨシアキは、食品メーカーの会社員だが、ヨシアキは、自分で、職場で、カラオケサークルを作っているが、人がいない。

 だが、と思った。

 今日は、2024年2月14日である。

 因みに、昨日は、大好きな有村架純さんの誕生日だった。

 一応、ヨシアキは、有村架純さんのファンだが、現実、そうは行かない。いくら、ヨシアキは、有村架純さんが、好きでも、現実の有村架純さんは、バレンタインデーのプレゼントをするわけがないと思った。

 朝、京急快特青砥行きで、横浜駅を出て、品川駅まで行った。

 そして、品川駅から会社まで出た。

 会社は、五反田にある。

 先日、首都圏は、大雪が降った。

 ヨシアキは、つるっと滑った。

 そして、そんな中、ヨシアキは、東海道新幹線で、大阪まで出張に出かけた。一人で、のぞみ号で、新大阪まで行ったが、本当は、誰もいないと気がつく。家族だって、あんな口論をして別れ、母親に酷いことを言った。恋人だっていない。

 先日は、2月9日なんて言って、「フグの日」と思った。

 ダジャレだが、フグだって毒を持つと思った。

 そして、会社の同僚の20代後半のマミが、笑っていた。

 マミは、女優の有村架純さんに少しだけ似ている。または、長澤まさみさんとか。

「フグの日だから、毒を持たないと」なんていつも話をしていた。

 …

 会社は、何故か、いつもラジオがかかっている。

 今日は、商品の倉庫にいる。

 そして、今日は、2024年2月14日だ。

 ラジオのDJが、

「今日は、お待ちかね、バレンタインデーの日ですね」

「ええ、そうです」

 と二人のタレントが話をしていた。

 その時、急にラジオが切れた。

ーえ、ラジオが、壊れた

 となった。

 その時、現場の監督が、

「誰か、歌ってくれませんか?」

 と言った。

 ヨシアキは、本当は、と思った。マミも、一緒に来ている。目立ちたがり屋の人間になるが、良いのだろうか?

 やっぱり歌いたい気持ちだってあった。

 そして、困った。色んな妄想があったが、

「はい」

 と言った。

「僕が、歌います」

 と言った。

 監督は

ーおい、今から、川村君が歌うようだ

 と言った。

「BGMなしで歌います」

 拍手が沸いた。

ーロマンティック、恋のアンテナは~

 といきものがかり『気まぐれロマンティック』を歌った。

 本当は、ヨシアキは、いつも歌っていた。彼女がいなくて、悶々としているヨシアキ。そして、涙ぐみそうになっているのをこらえて、3分歌った。

 いきものがかり『気まぐれロマンティック』の振付をしながら。

 いつもYouTubeの動画を観て、自然と覚えていた、いきものがかり『気まぐれロマンティック』の歌詞も振付も。

 そして、拍手があった。歌い終わると。

 …

 倉庫の仕事が終わって、ヨシアキは、昼ご飯を食べようとした。

 そういつも一人だった。

 その時、ヨシアキの隣に、マミが、座った。

「今日、いきものがかり『気まぐれロマンティック』、良かったよ」

 照れていた。

「あんな歌、まだまだだよ」

「いや、そんなことない、自信を持ったら」

「そう?」

「うん」

 と言った。

 今日の昼ご飯は、トンカツ弁当だった。コンビニで買っていた。

「川村さん」

「はい」

「これ、今日の一等賞」

 と言って、ホワイトチョコレートを、ポンッとあげた。

「今日のバレンタインデーのプレゼント」

 とマミが、言った。

「今日、帰り、一緒に食事に行かない?」

 2024年2月14日、ヨシアキは、マミと二人で、仕事が終わって、街へ食事へ行ったららしい。バレンタインデーの日に。

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バレンタインデーの奇跡 マイペース七瀬 @simichi0505

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