ライオンの王様

@peacetohanage

第1話

世の中にはとても賢い王様がいます。

彼はライオンです。

しかしライオンが頭に被る冠の中には、小さなネズミが隠れています。

この国は一年中平和でしたが、それには訳が有るのです。

ライオンの王様は国の政治の相談事を、冠の中のネズミにいつも持ち掛けるのですが…その賢いネズミのお陰で国は毎日平和に暮らしていました。

ライオンの王様の相談事に乗るかわりに、ネズミは衣食住を約束されていました。

ライオンの王様が食事をする時には、冠の中でひっそりと同じ物を分け与えて貰い、夜眠る時には王様の寝室のふかふかのクッションの上で仰向けになります。

しかしある時、城で重要な話し合いをしている時にこそこそと一人言を呟く王様を不振に思ったキツネの家臣が冠の中を覗くと、ネズミが見えてしまいます。

そうしてライオンの王様がネズミに何事も相談していたのがばれてしまいました。

その晩、城の誰も彼も王様も寝静まった頃…キツネは王様の寝室にこっそりと忍び込みます。

そうしてライオンの王様も賢いネズミもイビキを漏らしている内に、ネズミの尻尾を摘み上げて一飲みですっかりと食べてしまいました。

次の日の朝、ネズミの姿がちょろりとも見当たらない王様は困惑してがっかりと項垂れます。

今日から一体誰に相談事をすれば良いのでしょう?

その時キツネが寝室に現れて、おはようございますを言うのです。

「王様、今日から私めを大臣にしてくれませんか?」

新しい相談役が見つかった王様は、二つ返事でその申し出を了承してしまいます。

その日からキツネの大臣は王様の相談事に乗るかわりに、王様の様な贅沢な暮らしを要求し始めました。

寛大な王様は、相談役を担っているから…とそれを良しとしたのです。

ある日謁見に来た占い師に、王様は個人的に占って貰いたいからと言って、家臣を謁見の間から全員追い出します。

彼の大切なネズミの行方を聞きたかったからです。

すると占い師はそのネズミを大臣のキツネがある晩丸飲みしてしまった、と答えたのです。

それを聞いた王様は大変怒り、すぐにキツネを森へと追放してしまいます。

相談役を失った王様は、とうとう自分の力で政治を執り行い始めますが、それでも国はずっとずっと平和なままでした。


おわり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ライオンの王様 @peacetohanage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る