第三章 サイン会
金曜日。
いよいよ明日は麻耶のサイン会というわけで、麻耶の大ファンである俺はそれはもうワクワクドキドキとした心境でいたのだが、それはどうやら麻耶もそうだったようだ。
今週初めのほうはまだ落ち着いた表情をしていたのだが、サイン会が近づくにつれてどんどん険しい表情をすることが増えていった。
これは、少し心配だ。
とはいえ、お兄ちゃんとして何かしてやれることがあるのかというと、難しいところだ。
夕食を終えた俺は、いつものようにだらだらとリビングで休憩していた。
麻耶はというと、ソファ前に置かれたテーブルにて、何度もサインの練習をしていた。
明日のサイン会に向けて、失敗は許されない……そんな感じの表情だ。
普段の落ち着いた天真爛漫な笑顔を浮かべる麻耶も可愛いが、今のようなきりっとした表情はまた違った味わい深さがある。
麻耶は本当に世界一可愛い妹だと再認識させられる。
これほど可愛い麻耶を写真に収めないなんてのは人類の損失になる可能性がある。
俺はスマホを取り出し、麻耶のほうへと向けると、それに気づいた麻耶がピースを作った。
違う、違うんだ麻耶。そのピースも可愛いけど、俺は仕事モードのきりっと麻耶を写真に収めたかったんだ。
でもまあ、これも可愛いので良し。
また一つ、麻耶フォルダが潤ったところで、俺は麻耶に問いかけた。
「サインはもう問題ないのか?」
「うん。書くのは大丈夫なんだけど、本番のときに失敗しないかちょっと不安だよ」
「……そうだよな」
今麻耶は紙に書いて練習しているが、本番はCDのパッケージに書くことになる。
材質が異なるわけで、その差によってちょっとしたミスが生まれないとも限らない。
「よし、麻耶ちょっと待ってろ」
「え? どうしたのお兄ちゃん?」
困惑する麻耶に、俺は急いで部屋からCDを持ってきた。
麻耶の初めてのCDということで俺は近くの店で大量購入したのだ。最初は三枚くらいあればいいかと思っていたが、気づけば買い占めかねん勢いで購入してしまっていたのだが、それはまあ仕方ない。
そのうちの何枚かを持ってきて、テーブルに並べた。
「これにサインしてみたらどうだ? 本番のときみたいになるだろ?」
「なるほど……! ありがと、お兄ちゃん!」
ぱっと瞳を輝かせる麻耶の眩しさに、目が潰されそうだ。
「それじゃあ、さっそくやってみたいんだけど、ちょうど良かった! お兄ちゃん! 頼みたいことあるんだけど……」
「ああ、なんでもやるぞ! アイスでも買いに行ってこよっか?」
「パシリじゃないよっ。ファンの人を演じてほしいなーって思って。実践形式で練習したいんだよねっ」
「ああ、任せろ」
麻耶の天才的な発想に俺は首を強く縦に振る。
早速とばかりに麻耶がソファから立ち上がり、サインペンを片手に持ったままニコニコと微笑む。
……麻耶がそこにいると、まるで家がイベント会場のように見えてくる。
麻耶の演技力はかなりのものだ。俺も、しっかりとマヤファンを演じる必要があるな。
持ってきたCDは三枚ある。これを使って、麻耶の実践訓練に付き合おうじゃないか。
まずは一つ咳ばらいをして喉の調子を整える。
それから、テーブルに置いた一枚のCDを持ち、ちょっと見る程度のマヤファンになりきってみる。
よし、イメージが固まった。さっそく麻耶の前へと一歩踏み込み、それからCDを差し出す。
「あの、マヤちゃんのファンです! 毎日配信見てます! アーカイブも必ず三回は見直すようにしてます! これからも頑張ってくださいね!」
恐らく、これくらいだろうな。
マヤファンを演じながらCDを差し出すと、麻耶は少し驚いたような表情を浮かべてから、にこりと笑う。
「えっ、熱心に見てくれてるんだね。ありがとね!」
麻耶はCDを受け取って、テーブルに置いてからサインを書いてくれた。
少しペンが滑ってしまったのか、紙に書いてあるものに比べるとちょっと違っているが……これはこれでいいよな。
まったく同じサインになるよりかは一人一人違うほうが味がある。
サインされたCDを受け取った俺は、それから列を離れるようなイメージをして、もう一度CDを手に取って麻耶の前に立つ。
次は、普通の麻耶のファンをイメージだ。
「マヤちゃんの大ファンです! 配信いつも楽しみにしてます! もう朝昼晩の三食のおかずみたいなものです! アーカイブも必ず五回は見直してます! これからも頑張ってください!」
「ええ⁉ そんなに見てくれてるの? ありがとねー!」
麻耶はまた目を少し見開いてから、CDにサインを書いてくれた。
さっきより綺麗だな。この短時間でここまでの成長を見せるなんて、やはり麻耶は凄い妹だ。
麻耶の急成長を心中で涙しながら喜びつつも、最後の一枚を持って再びファンになりきる。
今度は熱狂的なファンだ。これは簡単だ。
「麻耶ちゃん! いつも見まくってます! もう軽く十回以上は見返すようにしてますし、暇さえあればずっと配信を流してます! とにかく体調を崩さないように頑張ってください! 本当に無茶だけはしないようにしてくださいね……っ!」
「本当にありがとね! これからも頑張っていくから応援よろしくねっ」
麻耶はすらすらと慣れた様子でサインを書いていき、それで訓練終了だ。
俺は並べられた世界で三枚しかないサインCDを、大切に保管すると決めつつ、麻耶をちらと見る。
「どうだった麻耶?」
「お兄ちゃん、迫真の演技だったね」
「そりゃあ、麻耶のためだからな。全力も全力だ」
「でも、あそこまで熱心すぎるファンの人たちっているかなぁ? お兄ちゃんくらいじゃない?」
「え? いやまあ、最後のは完全に自分をモデルにしたけど、それ以外は一般的なファンじゃないか?」
そこまでおかしなファンではないと思うが。
「そうかな? でも、とりあえずサインは大丈夫そうかな? あとは来てくれた人たちと自然に話せるかどうかだね」
「今は完璧だったじゃないか」
「だってお兄ちゃんなんだもん。どこまでいってもお兄ちゃんはお兄ちゃんだからね」
「ま、麻耶……すまん。力になれなくて……っ」
クソ……っ。俺が姿形まで変えられるような特殊魔法を持っていたら麻耶の訓練にもっと付き合ってあげられるというのに……っ。
自分の才能のなさを悔しがっていると、麻耶は首を横に振った。
「いやいや、十分十分。それに私は思ったんだよね。ファンの人たちを全員お兄ちゃんだと思えばいいんだってっ」
したり顔で言った麻耶がとても可愛らしく、吐血しそうになりながらも頷いた。
「……そうか。とにかく、頑張ってくれ」
応援することしかできないのが悔しくてならない。
笑顔で頷いてくれた麻耶はそれからぽつりと口にする。
「あとは、イベントが無事成功してくれることを祈るだけだね」
「まあ、そこはマネージャーさんとかイベントスタッフとかもいるんだし大丈夫じゃないか?」
「うん……でも、明日は流花さんもいるからね。流花さんのファンって結構熱狂的な人も多いから、かなりバタバタするんじゃないかって予想なんだよ」
「あー、確か一緒にサイン会をする人だっけ?」
どのような人なのかは分からないが、麻耶よりも人気がある人らしい。
お兄ちゃんとしては悔しいが、いずれ麻耶が抜かすはずだ。
「そうだよっ。もう、お兄ちゃん忘れないでよねー。流花さんじゃないけど、別の事務所でちょっとした事件も起きたことがあるから少し心配しているんだよね」
「まあでも、会場は警備体制もしっかりしてるんだろ?」
「うん。冒険者の人たちも集めるからかなり体制は万全だよ」
まあ、それなら大丈夫だろう。
ただ今の時代、目に見えるものだけが凶器じゃないからな。
魔法はとても便利だが、どこでも使える凶器でもある。
迷宮や魔法が出現した当時は、それはもう犯罪者もかなり増えてしまい、大変な時代だったらしいしな。
僅かながらの不安はあれど、そういった事件が発生するなんてのは稀だ。
「よし、明日のためにも今日はもう寝て英気を養わないとね」
「……そうだな」
俺も楽しみすぎて眠れるかは不安だったが、明日のためにきちんと休まないといけない。
せっかくの麻耶の晴れ舞台だ。
明日は全力で楽しもう。
土曜日。
今日は待ちに待った麻耶のサイン会だ。
次の俺の配信については、霧崎さんが日程を調整中なので今は存分にこのイベントを楽しめる。
そういえば、一応今日のイベントは麻耶と……あと別の人の合同サイン会だったか。
確か、ルカとかそんな感じの名前だっけ?
前回の配信で何かそんなことを言っていたよな。
俺はフードを被って顔が隠れるようにして、イベント会場へと足を運んでいた。
……なんか配信を始めてから街中で声をかけられるようになったからな。
今の時代顔出ししている一般人も多いので、大した影響はないだろうと思っていたが、大被害だ。
これなら顔を隠して配信すればよかったよな。
って言っても、黒竜を討伐したときの映像がニュースとかで取り上げられまくっているので、今更か。
そういうわけで、現在はマスクにサングラスもつけての怪しい格好での参加だ。
ここまで隠せばバレることは少ないだろう。
荷物検査を無事突破した俺は、その日のサイン会の列に並んでいた。
列は二つある。
麻耶と……もう一人の女性だ。
あっちはあっちで事務所の子なんだよな。
列は……圧倒的に麻耶のほうが負けている。
くそ、麻耶のほうが絶対可愛いのに……!
我が事のように悔しい。ただ、いつかはきっと彼女を超えるはずだ!
だって麻耶は可愛いのだから。そんな気持ちとともに俺は麻耶の列に並ぶ。
やがて、警備として冒険者たちも会場へと入ってきた。さらに、マネージャーなどのスタッフたちも慌ただしく動き始める。
いよいよ、イベントが始まるのだろう。
イベント開始の時間が迫ったそのときだった。
――来た。
麻耶ともう一人の子の列のほうへ、女性がやってくる。
「皆お待たせー!」
「これから始まるから、ちょっと待っててね」
麻耶ともう一人のルカという子が声をあげる。
「おおおお! 麻耶ー!」
彼女らの登場に合わせ会場は一気に盛り上がり、俺も麻耶ファンとして周りとともに歓声をあげる。
そして、サイン会が始まる。皆一言二言の挨拶とともに、購入していたCDの表紙にサインを書いてもらっている。
列はゆっくりと進んでいく。
俺の番まであと三人だ。
ここまで来ると麻耶の声も聞こえてくる。
ファンとの交流をしている麻耶の成長した姿に、お兄ちゃんとして歓喜しているときだった。
何やら、ルカ側の列のほうからじんわりとした魔力を感じ取った。
その魔力は、列に並んでいた人間からのようだ。
……なんで魔法の準備をしているんだ? それも、明らかに悪意のこもった嫌な感じのものだ。
俺ももうすぐ麻耶に会える位置まで来て、そうなるとルカ側の席も見えてくる。
麻耶には劣るが、可愛らしい子だ。
魔法を準備している人間は、見た目は普通の青年に見える。
ただ、どこか表情が不気味だ。寝不足なのか、目元にはクマがあり何かぶつぶつとつぶやいているのかずっと口元は動いている。
俺も楽しみすぎて、若干の寝不足ではあるのでクマとかがあるのは分かる。
だが、あいつが用意している、火属性の魔法は意味分からん。
準備しているのが警備をしている冒険者ならば分かる。
だが、その魔法は列に並ぶファンによるもの。
……明らかに、異常だ。
ただまあ、大丈夫ではないだろうか。
麻耶とルカ。そのどちらにも冒険者の警備はいる。
……まあ、これだけ駄々漏れなら膨れ上がった魔力にも気づいていることだろう。
もしも、何かあれば警備が対応するはずだ。
俺も……もうすぐ麻耶のサインをもらえるんだ。ここで列から飛び出したら、それこそ俺が不審者にされてしまう。
そう考えていたときだった。
「はい。次の方……」
落ち着いたルカの声とともに響いた。
呼ばれた男性は、俯きながらゆっくりとルカへと近づいていく。
……そして――次の瞬間、その狂気に染まった顔を上げる。
「ルカちゃん! 僕だよ! 次郎だよ……! ルカちゃんに会いに来たんだよ!」
「え?」
「驚くよね⁉ 驚いちゃったよね⁉ ごめんね? でも、僕何度も君と会ってね、君を僕のものにしたいと思ったんだ。だから、今日ここで殺してあげるねっ!」
明らかに様子のおかしい彼の言動に、ルカの表情は真っ青になっていく。
「……ど、どういうこ――と……⁉」
ルカが問いかけた瞬間、男性の狂気が牙を剥く。
彼が叫んだところで、ようやく異変に気づいた冒険者たちが駆け出す。
「邪魔だよォ!」
割り込んだ冒険者を薙ぎ払うように男性が魔法を放った。
その魔法は想定通りの火魔法だ。
冒険者もすかさず魔法を放って身を守ろうとしたが、弾き飛ばされる。
あの次郎と名乗った男、かなりの力を持っているな。
その魔力を使ってやることが、こんなことだというのが残念で仕方ない。
すぐに別の冒険者が駆け出したが、次郎の視線はルカへと向けられる。
「それじゃあルカちゃん! 一緒にあの世で幸せに暮らそうね……っ!」
放たれたのは、火魔法。
ルカの顔を狙ったその一撃は――しかし俺が片手で受け止めた。
「うおっ! あつっ⁉」
「へ?」
俺が火を払うように手を動かすと、男は怯んだ様子を見せたがすぐにルカへと飛び掛かる。
だが、その顔面を俺は鷲掴みにした。
「は、放せ!」
「放したらおとなしくしてくれるか?」
「するかバカ!」
「じゃあ、放さないって」
俺が思い切り力を籠めると、彼は悲鳴をあげながら俺の腹を蹴りつけてきた。
「てめぇ……! 麻耶のための服なんだぞ⁉」
せっかく麻耶のためにおしゃれな服を選んできたというのに、靴跡がついてしまった。
地面を転がりながらもすぐに体を起こし、男は狂気に染まった表情とともに叫ぶ。
「邪魔するな!」
多少の身体強化を使っているのだろうが、かなり粗末なものだ。
振りぬかれた拳をかわすと、即座に魔法が襲い掛かってくる。
その連携技は見事だ。本当に、冒険者として鍛えていればそれなりの実力者になれただろうにもったいない。
こちらに迫ってきた火を――俺はローソクの火でも消すかのようにふっと息を吹いて消し飛ばした。
こうしていると誕生日を思い出すな。
麻耶が一生懸命作ってくれたケーキ。それに麻耶がローソクをさして火をつけて俺の誕生日を祝ってくれたんだ……。
男は驚いた様子だ。
まさか、こんなあっさり処理されるとは思っていなかったようで怯えた表情で俺を見てくる。
「ば、化け物……っ」
「いやいきなり人に奇襲仕掛けておいて人をそう呼ぶのは酷くない?」
「う、うわあああ⁉」
男は慌てた様子で逃げ出したが、俺はその先へと移動し彼の前に立つ。
逃げ道をふさがれた男はそれでも諦めずに拳を握りしめる。
無駄に度胸のあるやつだな。だから、こんな行為に及んだのかもしれないが。
迫ってきた男の拳をかわし、その手首を掴んだ。
「放せ! 放してくれ!」
俺は拳を固めて男に微笑みかける。
最後の別れは笑顔で。これ大事。
男は必死に俺から逃げようしたが、逃がすわけがない。
俺はぐっと拳を握りしめる。
「蹴りとパンチどっちがいい?」
「い、嫌だ! やめてくれ!」
「んじゃ頭突きで!」
本人の意見を尊重し、蹴りも拳もやめてあげて思い切り頭突きを放った。
「あがっ⁉」
悲鳴が僅かに漏れると同時、彼はそのまま倒れた。
意識がなくなったようだ。
……まったく。
俺は戦闘によって汚れてしまった服を見て、がくりとうなだれる。
この服は去年の五月三日に麻耶と一緒に買いに行ったお気に入りの服だったのに……。
また今度で買いに行かないと。
そんなことを考えながら、ちらとルカを見る。
驚きと戸惑い、そんな表情のまま彼女はぺたりと座り込んでしまっていた。
「怪我してないか?」
「え……あ……う、うん」
手を差し出すと彼女は困惑したままの表情で俺の手を掴んだ。
とりあえず、外傷はなさそうだよな。
「良かった良かった」
ひとまず、気を失っている男は冒険者たちが取り押さえてくれている。
問題、なさそうだな。
一連の騒動で騒がしかったイベント会場は、すっかり静まり返っている。
ていうか、なんか皆の注目が俺に集まってしまっているように感じる。
改めて俺は近くにいたスタッフに声をかける。
「サイン会は無事続行で大丈夫か? 大丈夫ですよな? ていうか俺また並び直したほうがいいです? どうなんですか?」
「え、えーと……そ、それは」
スタッフは何やら困惑した様子でちらちらと周囲を見ていた。
もうすぐ麻耶のサインをもらえるのだ……。
ここで、中断されてしまっては困る。
お願いだから、俺まででいいから続けてくれ……っ。
そんなことを考えていると、近くにいた女性が俺を見て何やら感動したような目を向けてくる。
「あ、あの……本物のお兄さんですか?」
「おいこら。誰がお兄ちゃんだ。おまえの兄になった覚えはないぞ?」
俺がじとりとそちらを睨むと、彼女は歓喜の声をあげる。
「ほ、本物だ! ファ、ファンです! サインください!」
その対応で、なぜか本物認定されてしまった。
彼女が目の色を変え、鼻息荒く迫ってくるとさらに別の人たちまでも寄ってくる。
「オ、オレもです! 生お兄ちゃん見たかったんです!」
「この前のミノタウロスの戦闘興奮しました! ぜひまたお願いします!」
「さっきの凄かったですね⁉」
「ルカファンですけど、お兄さんのファンでもあります! お兄さん! サインください!」
ミノタウロスの群れのように、人々が俺へと集まってきた。
迷宮配信者事務所「リトルガーデン」について語るスレ101
541:名無しの冒険者
【速報】至宝ルカ、襲撃される
542:名無しの冒険者
は? どういうことだよ⁉
543:名無しの冒険者
サイン会に過激なファンが参加していたらしくて、それで魔法で攻撃されそうになったとかなんとか
544:名無しの冒険者
魔法って……本当厄介だよな
事前に持ち物検査したところで防げないもんな……
545:名無しの冒険者
一応魔力を封じ込める魔道具はあるけど、さすがに全員につけられるほど準備できないからな……
546:名無しの冒険者
魔法相手じゃどうしようもないよな
547:名無しの冒険者
ルカちゃんは大丈夫だったのかよ⁉
548:名無しの冒険者
Twotterのトレンドやばくないか?
物騒なことしか書かれてないんだけど
549:名無しの冒険者
緊急搬送とかは嘘だぞ
あれは適当なこと言ったファンが原因だ
550:名無しの冒険者
マジで?
でもルカちゃんは大丈夫なのか?
551:名無しの冒険者
それが、現地にいたお兄ちゃんが守ったらしい
552:名無しの冒険者
……は?
553:名無しの冒険者
ワロタw お兄ちゃんマジで行ってたのか
554:名無しの冒険者
SNSとかやってないからお兄さんの行動とかまったく分からないんだよな……
555:名無しの冒険者
公式のSNSあるぞ?
なお、【本人がやりたくないと話していたので、事務所で運営しています】という注意書きがあるけどな
配信日とかは告知されるけど、本当それだけ
556:名無しの冒険者
あそこまで堂々と代理たてて炎上しないのは凄いよなw
557:名無しの冒険者
普通代理でやっているのバレたら結構言われるからな
558:名無しの冒険者
だから最初から代理でやってることを公開してるんじゃないかw
559:名無しの冒険者
炎上というか変な感じに注目されてるけど、もう信者みたいなやつらがいるおかげで無傷なんだよなぁ
560:名無しの冒険者
そもそも、炎上しても本人に声届かないしな
561:名無しの冒険者
いや、マヤちゃんが配信で言っていたけど、「炎上したらお兄ちゃんに伝えてるよー」って配信してたぞ
562:名無しの冒険者
マヤちゃん鬼で草
563:名無しの冒険者
っていうか、どうなんだ? 現地の情報はないのか?
564:名無しの冒険者
撮影とかは禁止されてたからな。SNSでの文章での報告しかない
565:名無しの冒険者
現地民だけど、流れ書く
ルカファン?がサインの番になる
奇妙なこと叫んでルカに魔法で攻撃
お兄さんが間に入って男ボコス
そこからいつものお兄さん無双
犯人は警察に引き渡してとりあえず、一時間程度遅延したけど、落ち着いたところでサイン会継続
以上
566:名無しの冒険者
おつ
お兄さんが真っ先に気づいてたんだよな。さすがだわ
567:名無しの冒険者
もしかしてやらせか?
568:名無しの冒険者
現地民だけどやらせは考えにくいな
警察も来てたし
569:名無しの冒険者
お兄さんは魔法発動するのが分かったみたいなんだよな
570:名無しの冒険者
え? そんなことできるのか?
571:名無しの冒険者
一応高ランクの冒険者は把握できるらしい
まあ、現地の護衛の冒険者はCランクくらいだし、まず感知能力高くないと難しいぞ?
相手の魔力の強弱は感じられるけど、魔法の発動のタイミングとかまでわかるかはわからん
書いてて思ったけど、お兄ちゃん一流の領域なのか? マジ?
572:名無しの冒険者
まあ、お兄さん、黒竜ソロで倒してるし、そのくらいできてもおかしくはないけど
ていうか、お兄ちゃんいなかったらルカちゃんマジで危険だったんじゃないか?
573:名無しの冒険者
いなかったら顔に火魔法喰らってたからな。最悪死ぬ。最低でも顔にやけどの跡が残ってたはず
574:名無しの冒険者
うわ、最悪だろ……アシッドアタックみたいなもんだよな。
575:名無しの冒険者
やっぱり現代だとよほど警備を厳重にできない限り、リアルイベントはやめたほうがいいよ
この前も芸能人のイベントに乱入されて魔法をぶっ放されたとかあったしさ
そういう犯罪者集団っていうのもいるみたいだし
576:名無しの冒険者
本当な……
「リトルガーデン」もそこらへんしっかりしたほうがいいよな
577:名無しの冒険者
ていうか、ルカファンはあんまりお兄ちゃんに絡むのやめてやれよ
ルカちゃんが配信でコメントしてから、めっちゃさわいでたよなw
578:名無しの冒険者
あれがあるから、男性配信者のデビューはしてこなかったんだもんなw
この前の炎上はそれだったみたいだけど、命助けてもらってんだから感謝しろよな
579:名無しの冒険者
まあ、さすがにこれでアンチも多少は減るんじゃないか?
580:名無しの冒険者
それはそれ、これはこれ。っていってるやつが多いんだよな
581:名無しの冒険者
どちらにしろ、今夜のルカ×マヤコラボ配信が楽しみだな。
582:名無しの冒険者
そこで今回起きたことを色々聞きたいよな
でも、あんまり話したい内容じゃないよなあ
大丈夫か?
583:名無しの冒険者
さすがに話すだろ。ファンも心配してたし。ていうか、普通にサイン会継続なんだな……やばくないか?
584:名無しの冒険者
やばくないぞ
お兄さんがマヤちゃんのサインもらってからは警備の手伝いしてるから
585:名無しの冒険者
草
586:名無しの冒険者
お兄さんが警備とか豪華すぎるww
ていうか、それなら冒険者の警備いらないじゃん
587:名無しの冒険者
冒険者たちはお兄ちゃんのほうに並ぼうとしているファンたちを整頓してたぞ
588:名無しの冒険者
草
無事、サイン会を終えた私は今日のイベントに一緒に参加していた麻耶ちゃんとともに、事務所へと戻ってきていた。
サイン会のあと、私と麻耶ちゃんは事務所でコラボ配信をする予定だったから。
事務所に戻ってきた私は……まだ、少しドキドキしていた。
……何事もなく終わって、良かった。
イベント会場にいたときはただただそのことばかりを考えていた。
急に現れた……悪意を持った存在。
私だって、Cランク冒険者だ。もしもあそこが迷宮で、対峙しているのが魔物なら……反応もできていたと思う。
でも、実際は、違う。相手は悪意を持った人で、私の命を狙っていた。
恐怖で体が竦み、まったく動けなかった。
……そんなとき、自分の怪我も顧みずに体を張って守ってくれたのは――。
「……麻耶の、お兄さん」
颯爽と現れ、怯むことなく私を庇ってくれて――。
一切の反撃の余地を与えず、犯罪者を無力化し――。
私を安心させるために、手を握って微笑みかけてくれた。
最後には、無償で警備の手伝いをして、会場の人たちを……ううん、何より私を安心させてくれた。
正直言って……襲われた後からずっと怖かった。
あのままサイン会を続けることができたのは、お兄さんがすぐ近くで守ってくれていたからだ。
「……かっこ、よかったな」
ぽつりとつぶやいた自分の言葉に、恥ずかしくなってしまった私はぎゅっと唇を噛んだ。
違う……別に、深い意味はない。
そう自分に言い聞かせていると、部屋の扉がノックされてびくりと肩が跳ねあがる。
一度大きく息を吸って、乱れていた呼吸を整えてから、扉を開ける。
「流花さん。今日はわざわざコラボしてくれてありがとうございます」
そこには、無邪気に微笑む麻耶ちゃんがいた。
私と麻耶ちゃんは高校生同士。私のほうが一つ上だけど、年齢が近いということもあってプライベートでの交流が多い。
「ううん。私も麻耶ちゃんと一緒に配信したかったから。今日は楽しもう」
……うん、いつも通りの微笑を浮かべられたと思う。
麻耶ちゃんと関わっていると、どうしてもお兄さんの顔が浮かんできてしまい……意識しないようにする。
「はい。よろしくお願いします!」
麻耶ちゃんがわざわざ、という言葉をつけたのはたぶん登録者数の関係だと思う。
コラボ配信が決まったときの麻耶ちゃんの登録者数は十万人。私のほうが多かったから、『わざわざコラボしてくれた』という感覚なのかもしれない。
私は別に、盛り上がれる相手とコラボできればと思っているんだけど、事務所の子たちは皆私と接するときはそんな感じだった。
「そういえば、今日の生配信は大丈夫なんですか? サイン会で、えーとその…………色々ありましたけど」
麻耶ちゃんは言葉を選びながら問いかけてくれる。
こちらを配慮してくれる優しさは嬉しいけど、ドキリとしてしまう部分はある。
……でも、こんなときだからこそ。
私は休むわけにはいかない。
大事なファンの人たちを安心させるために。
「……大丈夫。ちょっと怖かったけど、あなたのお兄さんが助けてくれたから」
配信を休んだりしたら、きっとファンの皆は余計に心配してしまう。
ここで元気な姿を見せないと。
「あっ、それなら良かったです……。それとお兄ちゃんが……なんかすみませんでした……いつもあんな感じなので」
「大丈夫、気にしてない。それに助けてもらって……凄い助かったから。お兄さん、強いんだね」
「ふふー! そうなんです! お兄ちゃんは凄いんですよ! でもいつものお兄ちゃんなら異変にもっと早く気づくと思うんですけど、今日はなんか調子悪かったのかもです」
「……もしかして、麻耶ちゃん見てたからじゃない?」
「あっそれはあるかもです。以前も気を抜いて電柱に頭をぶつけちゃったことあったんですよね」
「えっ、それ大丈夫だったの?」
「色々大変でしたよ……電柱折れちゃうし」
「……えぇ」
「はい。あのときはお兄ちゃん凄い! としか思ってなかったですけど、お兄ちゃんめっちゃ強かったんですからそりゃそうですよね」
嬉しそうに麻耶ちゃんは笑っていた。
……自慢の大事な兄、とは麻耶ちゃんのお兄さんが配信活動をする前からも聞いていた。
どうやら紛れもない本音だけど、ちょっと凄すぎる……。
……そんな麻耶ちゃんに、聞きたかったことがある。
「……お兄さん、あのあとしばらくイベントの警備手伝ってくれてたけど、今日は家に帰った?」
「サイン会が中断されてはいけない!」、「俺が警備する!」と叫んでいた。
警備についていた冒険者にも、魔力探知のコツとかを熱心に指導し、冒険者たちの質が一段階上がったとかなんとか……。
……それと、お兄さんのファンたちがサインが欲しいだなんだと少し話をして、事務所のスタッフたちや冒険者たちで断っていたり。
今度はお兄さんが勝手に麻耶ちゃんのチャンネルのアドレスが載った名刺のようなものを配ろうとして霧崎さんに怒られたり……。
とにかく会場にあった悪い空気はすぐになくなっていた。
お兄さんが配慮して、空気を悪くしないようにしてくれたのかもしれない……。
それはまあいいとして。
彼は私のことはまったく知らないというのに、あそこまでファンや……私のことを大事に守ってくれていたのが、嬉しかった。
ただ、混乱していて、あそこまでしてくれたお兄さんにお礼も何も言えていなかった。
もしもまだ近くにいるのなら、お礼を言いたかったんだけど――。
「はい。今日の配信を見るために準備する! って言ってましたね」
「そっか……」
相変わらず、妹が大事なお兄さんだ。
……でも、麻耶ちゃんから聞いていたから理由も分からないではない。
両親が魔物に殺されてから、お兄さんと麻耶ちゃんは二人だけで生きてきた。
当時小さかった麻耶ちゃんは、そこまで生活が変わることなく過ごせたことを、今では凄い感謝している、と。
ここまで二人が仲良くなったのは当然だと思う。
……二人が大変な思いをしてきたことは知っていたから、私はなるべく配信で二人が生活できるようにという意味でちょこちょこお兄さんの配信にコメントを残していたけど……あれのせいでちょっとだけ炎上させてしまった。
謝罪やお礼、色々と伝えたいことがあった。
麻耶ちゃんがいるから配信を見てくれるだろうし、そこでお礼は伝えるつもりだ。
……それとは別に、お兄さんに直接会ったときにもまた伝えよう。
「お二人とも、そろそろお時間です」
「流花、大丈夫?」
私たちそれぞれのマネージャーが部屋に迎えに来てくれた。
私のマネージャーは今日のサイン会のこともあってかなり心配してくれていたが、私は首を縦に振った。
「大丈夫。麻耶ちゃん、行こっか」
「はい!」
……とりあえず、まずは今日の配信から始めていかないと。
私は麻耶ちゃんとともに配信を行うための部屋へと移動する。
そこに着いたところで、私たちは椅子に座る。
ここは以前、お兄さんが配信に使った場所だ。事務所で配信する場合は、いつもこの部屋を使う。
これ、お兄さんが座った椅子という可能性もある。
いやいや、変なことは考えない。
一つ咳ばらいをしてから、私は配信モードに切り替える。
お兄さんも見ているんだ。変な姿は見せられない。
それからすぐに配信が始まり、いくつもの心配するコメントが表示された。
〈なんかSNSで見たけど、不審者に襲われたんだよな!?〉
〈ルカちゃん大丈夫なの!?〉
「わっ。流花さん。凄く心配されちゃってますよ!」
麻耶ちゃんがコメントに反応する。
事前にこの流れは予想していたので、私は少し説明口調になりながら話していく。
「……とりあえず、私は無傷だった。その場にいた人たちに取り押さえてもらったから、心配しないで」
ピースを作ると、コメントにも「良かった」、「心配してた」といったものが増えていく。
これで、ひとまず一段落だ。
私も安堵していると、今度は別のコメントが来ている。
〈なんか現地にいた人たちに聞いたけど、お兄さんが助けたんだろ?〉
〈マジでサイン会行ってたんだな……〉
〈お兄さん配信見てるのかな? ルカちゃんを助けてくれてありがとう!〉
〈公式チャンネルあるんだし、そっちでコメントとか残してくれないかな? 本当にありがとう!〉
……それは確かに私も思った。
あとで直接お礼を伝えに行こうとは思っていたけど、その前に事前に話くらいはしたい、と。
私も自分のチャンネルでお兄さんや麻耶ちゃんの配信にコメントを残しているので、お兄さんにも返事してもらえたらなぁ、と思っていると、麻耶ちゃんが苦笑していた。
「あっ、お兄ちゃん。自分のチャンネルに関してはログインのパスワードとか知らないんだよね。全部運営に任せる! って言ってるから」
〈草〉
〈でもマヤファンだし今日の配信は見てるだろ〉
……それは確かにそうかも。
麻耶ちゃんのファンだから、という理由に少しだけ引っかかる部分はあるけど、仮にお礼を伝えるチャンスでもあると思う。
「麻耶ちゃん。お兄さんって配信見てる……?」
「見てるかな? まあ今見てなくてもたぶんあとで見るかな?」
だよね。
麻耶ちゃんの言葉に安堵していると、コメント欄が大きく盛り上がっていった。
〈ルカファンからです! お兄さんありがとうございました!〉
〈お兄さんのおかげで今日の配信も見れています!〉
〈現地にいました! お兄さんめちゃめちゃかっこよかったです! あなたの弟になります!〉
〈私もあなたの妹になります! ありがとうございますお兄ちゃん!〉
……なんだか、ファンたちもだんだんおかしくなってきたような気がするけど、うん、気にしないでおこう。
「私からもお礼を言わせて。あのときは色々あってお礼も伝えられてないから……本当にありがとう。また今度、直接お礼を言わせてください」
〈ルカちゃんから直接お礼だと……?〉
〈……せめて、お礼はプライベートじゃなくて見えるところでお願いします〉
〈嫌だよ、ルカちゃんが関わるのは……〉
〈おいおい。ただお礼言うだけでなんだよこいつら……〉
〈一部のルカファンはやばいんだよな〉
〈ルカちゃん、気にしなくていいからな……!〉
コメントは決して多くないけど、やっぱり私のファンからすると嫌な気分になる人もいるようだ。
そこが結構難しいところ。
「あはは。まあお兄ちゃんもそんなに気にしてないから大丈夫だよ。サイン会が中断しなくてよかったよかった、ってくらいだったしね」
〈ファンの鑑か?〉
〈でも実際、お兄ちゃんいなかったら普通はあそこで中断とかだよな……〉
〈ほんと、現地にいたファンとしては感謝しかないわ……〉
〈俺も。地方から今日のために電車乗り継いで来てたからほんと感謝だったわ〉
……それは確かにそうだと思う。
「それなら……良かった。お兄さん、火魔法直撃してたと思うけど大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫大丈夫。身体強化で自然治癒能力をあげたって言ってたよ」
「……そ、そんなこともできるの?」
「みたい。お兄ちゃんに聞いたら大丈夫だって」
私は麻耶ちゃんの話に唖然とするしかなかった。
もしも、あの魔法が私に直撃していたら傷が残っていたと思う。
本当に、凄い人だ。
〈……相変わらず化け物で草〉
〈マジで現役冒険者でも上位のほうだよな?〉
〈上位ではあるよな。海外の冒険者には核兵器級の化け物もいるからな……お兄ちゃんがその領域に到達しているかは分からん〉
〈少なくとも、日本だとトップ級だよな?〉
〈そこは実際に戦ってみないことには分からんな〉
コメント欄ではそんなお兄さんの強さについて考察し始めた。
「実際どのくらい強いんだろうね」
「どうかなぁ……。私もお兄ちゃんがちゃんと戦ってるところあんまり見てないからよく分からないんだよね」
「そっか。この前の黒竜以外で何か強さが分かる出来事とかってない?」
どのくらいの力かはちょっと気になっていた。私も、生まれ持っての魔力量がCランク冒険者ほどある。
でもお兄さんの底は全く見えなかった。
「うーん……そんなに思いつかないかなぁて、あっでも昔修学旅行で新幹線に乗ったんだけどね」
「うん」
「そのとき、お財布忘れちゃって。やば! って思って目的地に着いたとき、お兄ちゃんがお財布持って待っててくれたんだよね」
「…………どゆこと?」
「私もいつものストーキングかな? って思って流してたんだけど……」
「それはそれで流したらダメなやつじゃない?」
「いいのいいの。もしかしたら、新幹線より速く走ってきてたんじゃないかって今なら思うんだけど、どうかな?」
「……か、可能性ありそう」
〈草〉
〈何その話〉
〈兄のやべぇ話もっとしろw〉
コメント欄が盛り上がっていく。
……最初、私がお兄さんの配信に出たときは結構コメント欄も荒れていたものだった。
ただ今は、かなりお兄さんも受け入れられているようだ。
私としては、今の雰囲気は嫌いじゃない。
「他には……お兄ちゃんは――。あっ、お兄ちゃんからメッセージ来てる。麻耶の配信が見たいから俺の話はやめろ! だって」
「いや、これ二人の配信なんだけど……あっ、お兄さん。今日はありがとうございました」
……やはりお兄さん。麻耶ちゃん以外にまったく興味を持っていない。
そこに少し不満はあったけど、ひとまずお礼を言わないと。
サイン会のときはバタバタしていたし、終わったらすぐお兄さんいなくなっちゃってたし。
本当は直接会って伝えたいけど、それはまた今度にしよう。
〈マジで配信見てるのか〉
〈お兄ちゃん、ありがとな!〉
〈また今度配信してくれよ! 登録しておいたからな!〉
〈迷宮の配信とか、他の人とのコラボとかでもいいからな!〉
「あっ、リンネちゃん来てるよー」
「本当だ。リンネちゃんも冒険者学園に通ってる子だし相性いいかも?」
〈リンネちゃんじゃん〉
〈確かに、リンネちゃんは冒険者学園通ってるんだし、それはありかもなw〉
事務所の、私たち配信者同士のグループLUINE《ルイン》があるのだが、男性がデビューすると聞いたときは皆、お兄さんのほうを心配していた。
というのも、やはり女性しかいない事務所なので、ファンの人たちからすると思うところがあるようなのだ。
私は一応彼の先輩なので、ほっとしていた。
……まあでも、これはお兄さんのキャラ性のおかげでどうにかなっているのかもしれない。
「あっ、それでお兄ちゃんについてなんだけど……」
「……あっ、続けるんだ」
「うん。結構お兄ちゃんに会いたい人がいるみたいだから、一つアドバイス。お兄ちゃん、夜とか、人目につきにくいときは空跳んで移動するから目のいい人は見つけられるかも。流れ星を探すみたいな気持ちで夜空を見てみてね」
「いやだよ。流れ星だと思ったら麻耶ちゃんのお兄さんだったなんて」
神宮寺リンネ〈それは……ちょっと嫌かもです〉
〈最悪で草〉
〈何も願いごと叶わないどころか呪われそう〉
〈分かりました! これから空を見続けます!〉
……そんなこんなで、私たちの配信は続いていった。
妹の迷宮配信を手伝っていた俺が、うっかりSランクモンスター相手に無双した結果がこちらです【増量試し読み】 木嶋 隆太/角川スニーカー文庫 @sneaker
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