【ストーリーと見所】

一人の少女が地球に向けて出立するところから始まる、SF小説。

物語の本編はそこから少し前に遡り、本編では彼女が地球に旅立つことになったきっかけが語られる。

未来の世界、操縦者≪オペレーター≫と呼ばれる……まぁ、語弊があるかも知れないが手っ取り早くいえば超能力者的な力を持った人達が暮らしている。

月に暮らす彼女は師と呼べる一人の老人と共に様々な訓練をしながら平和に生活をしていた。そこに一人の女性が現れて……と言った感じの物語。

あんまり語りすぎるとネタバレになってしまうので、程々にしておく。

で、こちらの小説電撃小説大賞に応募したということもあってか、実に電撃文庫している。いや、意味がわからないかも知れないが本当に読めばわかる。本当に、電撃文庫しているのだ。

ストーリーとしては大きな戦いや派手な展開などはなく、世界観を語ったりそこで繰り広げられる主人公と老人の絆、そして彼女が成長して決意を固め、旅立ちが書かれるている。

丁寧な物語の入り方、かなり作り込まれた世界観、そしてそれを伝える綺麗な文章は流石と言ったところで、実に読みやすく物語もするりと頭に入ってくる。

特に15話前後からの展開は驚かされるものがあり、その辺りから一気に集中して読み進めてしまうほどだった。

後半の場面も中々に感動できるものがあり、全体的にストレートに出来がいい。

文句なしに、人にお勧めできるSF小説。

【個人的に気に入った点】

丁寧な導入から始まり、物語が盛り上がる部分はしっかりと盛り上げてくれたところ。

派手なアクションなどはなく、感情に強く訴えるような場面と文章、台詞回しは個人的にかなり気に入った点。

実際のところ欠点が全くないかと言われるとそんなことはなく、物語の方向性を含めて立ち上がりが若干遅い点などがある。

ただしそれを補えるほどに面白く、情緒的、何よりも残酷さの中にある深い優しさにとても惹かれる小説だった。

【こんな人にお勧め】

SFが好きな人。

丁寧な物語の展開や、人通しの強い絆と優しさ、そういったものを含めたドラマが好きな人に強くお勧めできる小説。

またSFではあるが文章はかなり読みやすい。用語なども比較的わかりやすく、その上でSF的な要素もちゃんと詰まっているので、SF入門としてもお勧め。

【本編URL】

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