いらっしゃいませ、異世界お仕置き館!

@kurakusyun

第1話

「いらっしゃいませ~、今日はどのような種族をお望みでしょうか?」




 歓楽街の一角、大通りに面した大きな館。そこに一人の人族が入っていった。扉を開けて店に入るとカウンターがあり、そこで頭に角を生やした悪魔族の女性、サキュバスが笑顔でその客を招き入れた。




「あの…その…ボク初めて…で…」




「はい、大丈夫ですよ~。ここは貴女の望みを(どちら側)でもしっかりと叶える事が出来る館ですから~。失礼ですが、どちら側をお望みでしょうか~?」




「えっと…ボク…は…叩かれたい…です…」 




「は~い、キーの方ですね?ではこの種族表からお選びください。男性、女性、両性具有もおります~」




 胸がはちきれんばかりのボンテージ衣装でしなを作りながらその受付サキュバスは笑顔でそう言った。その仕草の一つ一つが妖艶で異性も同性も思わず生唾を飲み込んでしまう。




「あ、あの、凄く力の強い種族っていますか…?」




「はい、そうですね。こちらをご覧ください。比較的単純に力が強いとなりますと、ドワーフ、竜族、ヴァンパイアノワール、変わったところですと魔導ゴーレムなどが在籍しております。こちらは単純な命令を先に与えて、その通りに動くといういわゆる機械式のスパンキングになりますね」




 笑顔で特に恥ずかしげもなくプレイの説明をしていくサキュバスの受付。そう、ここはあらゆる種族が働いている風俗店。それもスパンキングに特化したお仕置き専門店だった。


この大陸で魔族や蛮族と人族が争っていた時代は幼い勇者が魔王を討伐した事で終わった。今や小競り合いはあるもののそれぞれの国家からあらゆる種族が行き来し、混在し、平和を謳歌していた。




「う、どうしよ…」




 店に入ってきた人族は女性。年齢はまだ十代だろうか、姿形は少女と言っても過言ではない。


冒険者だろうか、背中にはマントを羽織り、豪華な剣を差している。




「お悩みでしたらこちらがお勧めです。ご存じかもしれませんが、こちらのヴァンパイアノワールはノスフェラトゥの中では最高峰です。その中でも人族から「血濡れの姫」と呼ばれていた女性体で、人間の身体を簡単に引きちぎれるくらいの力がありますよ~」




 恐ろしく物騒な事を笑顔で在籍表に乗っている種族をおススメしてくるサキュバスの受付の言葉に彼女は真面目な顔をして、ふむふむと頷いて聞いている。




「こっちの…ゴーレムはどうですか?」




 段々と乗り気になってきたのか少女は自分から事細かにパートナー選びをし始めた。




「はい、もちろん魔導兵器ですからゴーレムの力は最強です。全力で腕を振り回せば家一軒簡単に吹き飛びます。しかし、趣味嗜好の事ですから細かい命令は無理です。淡々と叩くだけになりますね」 




 ようは機械と同じく、お説教や強弱の打ち分け、時間差などのじっくりとお仕置きをしてもらう事は出来ないという事だ。




「な、なるほど…」




 早々にこの恥ずかしいやり取りを気鋭上げたい気持ちと、自分の欲望を叶えたい気持ちがせめぎ合いながら彼女は在籍表を食い入るように見つめた。


 その間もサキュバスはニコニコと怪しい笑みを浮かべながら彼女の言葉を待つ。




「えっと…じゃあ…ヴァンパイアノワールさんで…」




「は~い、かしこまりました!では、こちらの料金とこちらの書類にサインをお願いいたします~」




 彼女は挙動不審なくらい慌てて懐から布袋を取り出すとその中から金貨を鷲掴みにしてカウンターの上にジャラジャラと置いた。




「あ、お客様~、多過ぎです~。はい、二枚頂きますね~。では、こちらにサインを…あら?あ、はい、結構です~。あ、装備の方はこちらでお預かりいたしますね~。それではお部屋は二階の5番になります。お部屋の方は全室防音の魔法が掛かっておりますのでプライベートは絶対漏れませんのでご安心くださいませ~」




 彼女は背中に背負っていた神秘的な剣を少し躊躇いながら預けると、言われた通りに階段を上がって二階へと向かった。














 どんな冒険の時、どんな強敵を目にした時、それよりも心臓がドキドキと高鳴り、耳元でなっているかのような感覚。呼吸が浅くなって、胃の辺りが苦しい。彼女はそれでも自分の望みをかなえる為に、震える手で扉に手を伸ばした。




「よう来たのぅ。ん?何じゃ、お主勇者ではないか。こんなところで何をしておる」




 思い切って空けた扉の向こうにいたヴァンパイアノワールが彼女、女勇者を見た瞬間そう声を掛けてきた。




「え?あれ、ボ、ボクの事知ってるんですか?」




「当り前じゃ。儂はこれでも魔王軍幹部じゃったからのぅ。まぁ、人間支配に興味はないから適当に討伐軍の相手して遊んでいる間に、魔王がお主に討たれたからこうして人間の国で趣味を楽しんでいる訳じゃ」




 貴族のような豪華な真っ赤なドレスに身を包んだ二十代前半の若い女性、ヴァンパイアノワールの血濡れの姫がベッドの上で足を組んでいる。ぱっと見は絶世の美女の貴族の姫が町中の宿にいるという奇妙な絵にも見える。だが、分かる者に分かる怪しい妖気と黄金に光る瞳が彼女が人間ではないと示していた。




「は、はぁ、趣味ですか…え、と血濡れの姫さんはそう言うのがお好きで何ですか?」




「姫と呼ぶがいい。ふむ、そうじゃの。儂は若い女子が尻を真っ赤に腫れ上がせながら泣き叫ぶのがことのほか好きじゃな。つまり、お主とは真逆じゃ」




 そう言われた彼女、女勇者は救世の英雄とは思えないほど身を小さくして顔を真っ赤に染めて恥ずかしがった。




「うぅ…確かにそうですけど…」




 女勇者は生まれた時から勇者になる運命だった。そのせいで魔物に命を狙われ、元女戦士である母親は身を守る術を教える為にそれはそれは厳しく育てた。ほんの一瞬の油断が死を招く。それを分かっている母親は愛する我が子を守る為に心を鬼にして戦い方を教えた。


 課題がクリアできない時はお尻百叩きは当たり前。サボったりしたら道具を使って、こっぴどくお尻を叩いた。女勇者は時には反抗したが、それが母親の愛だと十分に知っていた。だからかもしれないが、こうして平和になった今ではあの厳しかったお尻叩きが恋しくなってしまうのだ。




「ま、それも和平がなった今の世には関係ないな。ただの客とキャストじゃ。で、今日はどうして欲しいのじゃ?儂が本気で叩いて大丈夫かの?」




「あ、はい。えっと…ですね。僕レベルが上がり過ぎちゃって、強い人に本気で叩いてもらわないと痛くないので…。その、お母さんみたいに…膝の上でお尻…叩いて欲しいです…」




 女勇者はただの少女のように両手で真っ赤になった顔を隠して蚊の鳴くような声でそういった。


もっとも、そんな声でも姫の聴覚には全て聞こえている。




「あー、なるほどのぅ。お主既に人族を超越しておるからのぅ。防御力も最高か。ふむふむ。で、OTKじゃな。よしよし、では儂も本気でお主の尻が真っ赤になるように叩いてやろう。さぁ、膝の上に乗るがよい」




 千年を生きたノスフェラトゥ族の姫の瞳が怪しく光った。妖艶な笑みを浮かべて、真っ赤な唇からきらりと犬歯が見えた。




「は、はい…」




 こんな姿はパーティのメンバーや城の皆には見せられたものではない。そう思いながらも女勇者は熱くなった顔を隠すようにして、変な汗で濡れた額を拭いながら恐る恐る姫の膝に腹ばいになった。


 こうして誰かの膝の上に乗るのは久しぶりの事。13歳で仲間とともに旅に出て以来だ。こしをしっかりと掴まれてぐっとお尻が突き出されてしまっている。


 女勇者の中性的な美少女と言える顔が恥ずかしさでまた紅く染まった。まだお仕置きが始まってもいないのにもじもじとお尻を所在なさげに揺らしてしまう。




「さぁ、尻を出すぞ。ふふふ、儂も楽しみじゃ。勇者の生尻を叩けるとはの」




 豪華な真っ赤なドレスの上で姫が嬉しそうに笑う。太ももは柔らかく、腕も細い。しかし、そのレベルは女勇者に迫り、簡単に人を引き裂く事が出来る怪力を持っている。 


 姫のしなやかな指が女勇者の短いスカートを捲り上げる。女勇者はびくりと反応するが、姫はお構いなしに続いてその下の黄色いタイツに指を滑り込ませた。




「うぅ…」




 羞恥を煽るようにゆっくりとタイツを脱がしていく。その下の白い下着に包まれた引き締まった丸いお尻を外に晒す。




「ほぅら、女勇者の悪い尻が出てきたのぅ。これか、叱られなければならん尻は」




 もじもじと太ももを擦り合わせて恥ずかしそうにしている女勇者の下着の包まれたお尻をぺしりと面白そうに叩く姫。そして、そのまま下着のゴムを引っ張るようにしてずるりと太ももの辺りまで引き下ろした。


 女勇者はその懐かしい感覚に心臓が飛び出るほど鼓動が高鳴り、緊張し、僅かばかり期待をする。




「さぁ、仕置きじゃ。母上から仕置きされて久しいのじゃろう?その間の悪さを儂がじっくりと反省させてやろう。尻叩き百回じゃ!」


 姫はそう言うと女勇者の腰を引き寄せしっかりと掴む。超人の域にいる女勇者でも動けないほどの怪力だ。お尻を突き出した格好のままほとんど動く事が出来ない。母親にされたお仕置きの時のようにただただお尻を叩かれ続けるだけの状況。




(ボク…お尻叩かれるんだ…お母さんにされてたみたいに…うぅ…心臓が飛び出そう…)




 女勇者が身を固くした次の瞬間、姫は大きく手を振り上げ女勇者の丸い引き締まったお尻に手を振り下ろした。




 バチンッ!




「う…っ!」




 お尻が強く叩き潰され、びりびりとした電気が走った。久しぶりのお尻の強い痛み。そう思ってその痛み感じていると次々と平手がお尻に振り下ろされてくる。 


 


 バチンッ!バチンッ!バチンッ!バチンッ!




「うぅっ!わっ!ああっ!いっ!」




 姫はその怪力を使って思いきり女勇者のお尻を叩いていく。女勇者は母親にお仕置きをされていた事を思い出し、冷や汗が出てきた。自然と心まで子供に戻っていく気がした。




 バチンッ!バチンッ!バチンッ!バチンッ!


 


 風切音がするほどの強烈な平手に、お尻を叩く乾いた音が部屋中に鳴り響く。




「ああっ!ごめんなさいっ!痛いっ!痛いぃっ!」




 お仕置きを懐かしいという気持ちや恥ずかしいという気持ちが消えて、ただただ痛いという気持ちに支配されていく。母親にお仕置きされているという錯覚に。




「ああっ!うぅっ!いたぁいっ!ごめんなさぁいっ!」




「仕置きじゃからなぁ。ほれ、母上に変わって尻を真っ赤に腫れ上がらせてやろう」


 


(お母さんのお仕置きと同じくらい痛いぃっ!なんで?斬られたりする方が痛いはずなのにこんなに痛く感じるの?ああ、ボクも無理…っ!)




  バチンッ!バチンッ!バチンッ!バチンッ!




「ああ、ごめんなさいぃっ!待ってぇ!ひぃーっ!いたいぃっ!」




 女勇者は本気で身悶えして、痛みから逃がそうとお尻をくねらせる。痛みに強くなっているはずだが、必死に許しを乞うてしまう。お仕置きの恐怖から逃れようと。しかし、姫は巧みに平手を降らせてお尻を真っ赤に腫れ上がらせていく。




「ああー、もう許してぇっ!ひぃっ!うわーんっ!」




 バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!




 女勇者は完全に子供に戻ったかのように両手両足をジタバタとさせ、真っ赤に腫れ上がったお尻を晒したまま泣き叫んでしまう。


 


 バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!




「ああーんっ!ごめんなさぃっ!ごめんなさぁいっ!おかぁさぁんっ!」




「ほれ、もっと尻を出せ!逃げようとする出ない!悪い子じゃ!」




「ごめんなさぁいっ!」 




 バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!




 お尻がジンジンとして平手が落ちるたびに背中を弓なりにしならせ、頭を跳ね上げてしまう。母親の鞭を受けた時と同じように泣き叫び。両手を宙に彷徨わせてしまう。


 


 バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!


 


「なんじゃ、足を上げるでない!尻を突き出さんか!」




「ああっ!ひぃっ!ごめんなさいぃっ!おかあさぁんっ!ごめんなさぁいっ!」




 バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!




 もう女勇者の中には母親とのお仕置きの思い出しかなかった。お仕置きをされていた頃のように頭の中は痛いしかない。許されたくて必死に謝った。お尻が熱くて痛い。完全に子供に戻り、母親に謝り、許しを乞い、大暴れして、そしてようやくお仕置きは終わった。












「あ、うぅ…痛ったぁい…」




 平手のお仕置きだけなのに鞭で打たれたような痛みがずっと続いている。その痛みに女勇者は顔を顰める。回復魔法で治す事もできるが、彼女はそれをしなかった。




「お尻が熱い…えへ…お母さんにお仕置きされた夜もずっとこうしてお尻を擦っていたなぁ…」




 右手でスカートの上からお尻を擦る。擦るとズキリと痛むが、擦らずにはいられない。お尻の熱さが全身に回ったようにじんじんとしていた。




「お尻ペンペン久しぶりにされちゃった…うーん、でもやっぱり…お母さんがいいかも…あ、そっか…魔法で防御力下げて…うん!」




 もはや母親のお尻ペンペンで泣く事は無い。しかし、あの温かさを求めて女勇者は久しぶりに故郷に戻ろうと決めたのだった。

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