第12話 魔力操作

魔力開放を終えた次の日、俺は自由時間になるやいなや、


「サラさん!今日は何させてくれるの!!」


サラさんへ特攻した。早く!早く俺に魔法を教えてくれ!


自分でもわかる。今の俺は目がキラキラと輝いている。サラさんも前途ある若者が積極的に学びに来ていることに対して無碍にはできないだろう。


「絶対すぐ来ると思ってたわよライル。オリビアも連れてくるからちょっと待ってなさいな。」


しょうがないわね、とでも言いたげな顔を浮かべながら俺を置いてオリビアを探しに行った。


なぜだサラさん!!やる気のないやつは放っておこう!!俺に魔法の全てを伝授してくれよ!!


・・・冗談だよ、わかってるよ俺だって。焦っても意味ないし、生徒は俺だけじゃないしね。


・・・オリビア連れてくれば良かったなぁ。自分のことばっか考えてたわ。


少々やる気がほとばしりすぎていた俺は、1人廊下に取り残されたおかげで冷静になれた。


「ライル〜、オリビアも連れてきたわよ。さぁ、始めるわよ〜。」


あれ、サラさん上機嫌だな。さっきも不機嫌って感じじゃなかったけど、どうしたんだろ。


「サラさんなんかあったの?すごい機嫌良く見えるけど。」


「あら、そんなに顔に出ちゃってた?恥ずかしいわね。でもそうね、とっても上機嫌よ。


ライルがやる気満々なのはあれとしても、オリビアもやる気になってくれてるのは本当に嬉しいのよ〜。


毎年教えてるけど、1日目が終わってもこんなに前のめりの姿勢できてくれるのは珍しいから、教える側としてはやる気が出るのも当然よ。


・・・あと、ライルはどう考えても面白い魔法師に育ちそうだし。」


あ〜、確かに魔力開放ってめちゃくちゃ集中力使うし、それでいて魔力開放できるまでは成長が感じられなそうだから、3歳児にこれを毎日やろうって言っても普通はきついよな。


てかよくオリビアはやる気満々でいられるな。俺という成功体験を目の前で見てるからかな?逆に差を見せられてるみたいで萎えちゃいそうだけど。


そんだけオリビアが素直で良い子ってことかな?・・・逆説的に俺が汚れてるみたいだからこの説はなしの方向で。いや、この考え自体汚れてるか。


まあいい。魔法の練習も1人で黙々とやるより一緒にやる人がいたら嬉しいに決まってる。


「さて、早速やっていきましょう。オリビアは昨日と同じように魔力開放をしていくわよ。覚えてる?昨日やったことは。」


「うん!きのうやったあとも、1人でずっとやってたの!できなかったけど・・・。


でも、ライルにできたならわたしもできるでしょ?だからがんばる!じゃないとライル一人ぼっちになっちゃうでしょ?」


めっちゃ良い子だぁ・・・。眩しすぎて失明しそう。純粋を具現化したらオリビアになると言っても過言じゃないよ。


おままごとのせいでちょっと苦手意識持ってたけど、3歳女児としては普通のことだし、俺の精神年齢が肉体と乖離してるせいでもあるからな。


オリビアがやる気を出せる一端になれたら良かったよ。一緒に頑張ろうなオリビア。


「あの後も頑張ってたのねオリビア、とても偉いわ。でも無理だけはしないでね。


ライルのことを気にするあなたはとても優しいわ。ただね、焦らないで欲しいの。昨日も言ったけど魔力開放は早くても1ヶ月、普通は1年かかるのよ。


頑張るのは良いことだけど、頑張りすぎもよくないわ。」


本当に心配そうな顔をしながらオリビアに話すサラさんだったが、そこで言葉をきると今度はいたずらっ子のような笑みを浮かべて、


「それに、私もハルトも他のみんなだってオリビアとライルのそばにいるのよ?ライルをひとりぼっちになんかしないわよ。」


とオリビアに言うと、オリビアは安心したような顔でうなずいた。


・・・まじであったけぇ。家族っていいわぁ。


オリビアとしては、すぐに魔力開放を成功させて次のステップへと進んだ俺が、遠くにいっちゃうような感じがしたのかな?


それに対してサラさんは、魔法の進捗くらいでどうにかなるような関係じゃないでしょ?家族でしょ?と言ってくれたわけだ。


家族みんな俺が守れるようになりてぇなぁ。2人は心が強くて優しいから、俺は魔法なり剣なりの物理的な強さをもってしてみんなを脅威から守れるようにしたい。


今以上に魔法の練習に身が入るってもんだよ。まあ、焦らずにだけどな。


「さ、各々練習にうつるわよ。オリビアは昨日と同じように魔力開放の練習をしながら少し待っててね。ライルに今日からする魔力操作の練習方法を教えるから。」


次は魔力操作か。魔力の操作かぁ。魔法を使うための最終準備段階っぽいな。自分の体から出てるだけの魔力をうまく自分で操れるようにするってことだろうから、それできたら次は魔法の練習に入れそうだけどどうなんだろう。


「ライル、今日から魔力操作の練習に入るわ。まず最初になんだけど、魔力は自分の体から感じられるかしら?


昨日までと違って自分の体の中に魔力を感じられるはずなんだけど。たまに魔力開放が終わっても、魔力量が少なくて上手く感じられない子もいるのよね。」


「大丈夫だよ、しっかり感じれてる。まだ1日しかたってないから、自分の体の変化に違和感はあるけど、逆に言えばそれだけ強く感じれてるよ。」


なんか体がムズムズするというか、昨日まで体になかったものが急にあらわれたことによる違和感が拭えないんだよな。しかも自分の体に宿っているものなのに、制御できない。


魔力操作がうまくできるようになればこの違和感も消えるのかな?それとも時間が解決してくれるものなのかな。

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(仮)俺だけ魔力が視える世界で、自由な冒険者ライフ カット @zero90

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