第11話 この世界は危険
俺は体が燃えるように熱く感じながらも更に深く集中していた。実際にどのくらいの時間が経っていたのか定かでは無いが、永遠にも一瞬にも感じる不思議な時間だった。
燃えるように熱く感じていた体も、いつしかじんわりとした温かさに包まれていた。
目を開けた俺は自分の体の周りをたゆたう、見慣れた黄色のもやを見て魔力開放に成功したことを知った。
次のステップへと進めることが嬉しくて、目の前で呆然とした表情を浮かべるサラさんに聞いた。
「サラさん、もう僕は魔法が使えるの?」
・・・・・・え、無視まじか。めっちゃ恥ずかしいんだけど、どういうこと?俺頑張ったよね!?
「サラさん、聞こえてる?」
もう一度俺が話しかけると、深くため息を吐きながらサラさんは、
「はぁぁ、やっぱりそうよね。魔力開放ができたのよね。まだ1時間も経ってないのに・・・。
・・・いや、違うわね。言うべきことはこっちね。
ライルおめでとう!!魔法を使える準備が整ったわね。
こんなに魔力開放を早く終わらせた子はみたことも聞いたこともなくて、少しびっくりしちゃったわ。
でも、本当にこれはすごいことなのよ。あなたを誇りに思うわ。もう一度言うけど、本当におめでとうライル。」
良かった、驚いてただけっぽい。急に嫌われたわけじゃなくて良かった。
にしても、そりゃそうだよな。確かに早くて1ヶ月、普通は1年とか言ってたもんね。ただ俺普通の3歳児じゃないからなぁ。
でもズルって言われたらそうかも知んないけど、俺は俺に今できることを精一杯頑張っただけだ。まずは自分の成し遂げたことを誇ろう!
「サラさんありがとう!もっと魔法の練習頑張るからいっぱい教えてね!!」
「そうね、今日は魔力開放したばかりだしもうしないけど、明日から頑張りましょうね。
あっ、そういえばライルにもオリビアにも聞いておきたいことがあるのよ。」
俺が鼻息を荒くしながらやる気に満ち溢れていると、苦笑いをしながらサラさんに釘をさされた。
どうやら無理は厳禁らしい。確かになんか疲労感すごいし、やめといた方が良いのかもなぁ。
というかなんだ?聞きたいことって。これ以上の練習が無理なら、俺は魔力開放の余韻に浸りたいぞ。
「オリビアとライルは、将来どこで働きたいとかって考えてたりする?まだないかな?」
「わたしはね!サラお母さんみたいにおいしいごはんをいっぱいつくりたいの!
でもね、エリーお姉ちゃんはしょーかいっていうところで働きたいっていってたから、そこにもいってみたいの!」
「僕はまだどこで働きたいって言えるほど、どんな仕事があるかを知らないから、何も無いかな。
例えば人気のものだとどんなのがあるの?」
余韻に浸って気持ちよくなる時間は一旦お預けだ。これは聞いときたかったものだし、ちょうどいいから今のうちに知っときたい。
孤児院外のことをほとんど知らない今の俺にとって情報は宝と言える。
「そうねぇ、男の子なら騎士とか冒険者が多いかしらねぇ。やっぱりライルも憧れる?」
「騎士はわかるけど、冒険者って何?何をする仕事なの?」
冒険者かぁ。冒険者ねぇ・・・。名前で大体は察せるけど一応確認したいな。
「あら、ライルは聞いたことなかったのかしら?冒険者は、街の清掃から魔物の討伐まで幅広い依頼をこなす存在よ。F、E、D、C、B、A、Sの7つのランクに分けられるわ。Fが1番下でSが1番上よ。
騎士と違って、最弱の魔物にも勝てないような人から世界有数の強さを持つ人まで、実力の差が激しいのが特徴ね。まあ、登録すれば誰でもなれるから当たり前なんだけど。」
・・・魔物か。なんだってこうもさっきから想像に難くないけど、一応しっかり聞いておきたいようなものが出てくるんだ。
「魔物ってどんなやつらなの?」
「魔物は人間の敵ね。F、E、D、C、B、A、Sランクまでの7つのランクに強さごとに分けられてるわ。
戦い方を覚えたばかりの初心者でも倒せるやつから、ベテランの高ランク冒険者がパーティを組んでも苦戦するようなやつもいるわね。」
・・・やっぱこの世界物騒だわぁ。ただ、ロマンもあるな〜。1人の男としてさすがに興奮せざるを得ないけど、1人の人間としては不安だし怖いな。
「うーん、やっぱり今は何になりたいとかはないかな。もっと魔法が使えるようになって、強くなったら考えるね。」
「ライルは冷めてるわねぇ。ジョンがライルくらいの時なんて棒振り回しながら、『冒険者になってドラゴン倒す!』って言ってたわよ。
まぁ、でもそこがライルの良いところでもあるものね。ゆっくり考えていけば良いわ。」
結局騎士も冒険者も戦闘が基本なんだよなぁ。魔法が戦闘に応用できるとはいえ、今はただ単に魔法に興味があるだけで、よっしゃ魔物ぶち殺すぜ!!とはなれないんだよなぁ。
前世で平和ボケ界の重鎮だった俺が、いきなりそんな殺伐とした世界に入り込もうっていう気にもなれないし。
どうしたもんかなぁ・・・。
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