第2話
制御ができず声を上げ、息子が大泣きし、開いたドアにぶつかって生首がごろごろと私の方へ転がってきた。
「来るなーー!」
「どうしたのっ」
私は妻の呼びかけに答えられず、生首を指差すことしかできなかった。息子のしばらく寝られなさそうなレベルの泣き声に諦めたのか部屋の明かりをつけると、まぶしくて目を細めた。
「何があったの?」
うっすら目を開けると、そこにあったはずの生首が無かった。
「人間の、首が、顔が、転がってたんだよ」
「変なこと言わないでよ。せっかく寝たのに。疲れてるんじゃない?」
確かに、腰はじんじんと痛んでいるし、手首を捻ると痛むことがある。とはいえ精神まで参っているわけではなかった。
声を割って泣く息子を振り返ると、生首の転がった方と真逆のところに身体を向けて泣いていた。
「今日は私が寝かせるから、あっちでゆっくりしてて」
見間違いだったのか……。でも確かに蹴った感覚は残っている。何だったのだろうか。もう一度明かりを消して、音を立てないようにドアを閉めたあと、四つん這いでソファーまで行き横たわった。
「ぎいいやあああ」
妻の絶叫と息子の大声が耳を劈いた。ああ、やっぱり見間違いではなかったのだ。
子どもの見つめる先 佐々井 サイジ @sasaisaiji
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