ええ、少し。

◆◇◆◇◆◇◆◇


 そして、場所は変わり、人間界旧王都。

 その一角にあるとある家に、コックは飛んで降り立った。


『マスター……マスター! いらっしゃいますか、マスターッ!』






 ———ここに来るまで、色々とコックは考えていた。

 イデアからもらった言葉の数々。コックの思う、コックなりの———そして、マスター……白にとっての、最高とは。



 それはまあ、コック1人の手でチョコを作ることではないか。


 そんなありきたりな結論に行き着いたのも、それはあったのかもしれない。


 ———しかし、コックは。

 コックの思う『最高のチョコ』、しかして、『最大の愛』とは、また別の結論に行き着いていたのであった。


「……おう! もちろんいるぜ……ってか、兄さんイデアに『ここにいろ』って言われたもんな、俺……」


『ええ、それも……実は、わたくし絡みでございまして……』



「……コック?」


 どこか、この時のコックの態度は、恥じらいを見せているかのようにどうもよそよそしかった。


 それは言葉遣い、声だけじゃない。何かを隠しているかのような仕草も含めて、白は何らかの違和感を感じ取っていた。


『家に……上がらせていただいても、よろしいでしょうか』


「ああ、別に……いいけど……どうした?


 そもそもお前絡みって言ったがよ、何だってこんな……サナが仕事の昼間に来たんだ、お前?」


『いえ、サナ様が……いない、から……来たのです。


 むしろいたら、色々と危ないですから。氷魔法とか放たれて』


「そうか。……そう、なの…………か?」


 だがまあ、コック自身がそう言うなら、と白も納得する。


「で、何しに来たんだよ、お前?

 もう修理は…………なんか終わってなさそうだな、大丈夫か……そこ?」


 白が指差したのは、スライムとの戦いで負傷した、コックの右腕の話だった。


 ……それもそのはず、ちゃんと貫かれたところに穴は空いており、コックは右腕を動かすことはできなかったのだから。


『え?……あ、ああ……大丈夫、です……ご心配、ありがとう……ございます』


「あ?……おお……」


 うろたえる2人。白もコックも、ある程度常人からは逸脱した肩書きを持つ2人であったが、この時限りは普通の、それこその少年少女に戻っていたのかもしれない。


「でよ、本当に何しに来たんだよ、コック?

 兄さんから聞いたのはな、なんか……渡したいものがある……って聞いたけど」


『ええ、もちろん。渡したいものだって……あります。


 ———でも、わたしにとっての『最高』のやり方を考えたのです』


「は?……最高の…………やり方????」


 そう言うと、コックは台所にまで移動し、イデアにもらった例の袋の中身を……全て出してしまった。


「コック、それは……?」


『———ええ、少し。


 少し、クックしてみようかと思いまして』


「は———え、えっと……クック? 料理????」


『ええ、

















 ———貴方と、で。



 ……マイ・マスター』

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