カブトムシのかぶお

まる。

カブトムシのかぶお

私は昔から動物が好きで特に犬が大好きだった。しかし家では犬を飼うことは禁止されていて、飼っていいのは虫かごに入る生き物のみ。小学2年生くらいの夏休みにカブトムシを取りにいって数ヶ月飼っていた。名前は「かぶお」。私が付けた名前だ。名前のセンスを散々親にいじられ改名するよう言われたが、これ以上良い名前は思いつかなかった。名前の評判は悪かったがみんな呼びやすかったのか、かぶおゼリー食べたかな?とか、かぶお生きてるかな?とみんな大切に育てていた。肌寒くなる頃までかぶおは長生きし、そろそろ危ない時期だと感じていた。学校に行く前と帰った後は必ず生きているか毎日確認した。学校から帰りドアを開けた瞬間、母は私にかぶおが動いていないと告げた。そろそろとは思ってはいたけど、いざ目の前の

かぶおの死を見ると涙が一気に湧き出した。割り箸で優しく触っても押し返してくれないことに、再び涙が止まらず「かぶおーーー!」と泣き叫んだのを今でも覚えている。近くの公園に父と埋めに行き、大好きだったゼリーや木の枝をいれてやった。しばらくは私にかぶおの話をしないようにしていたが、ある日母に「かぶおが動かないって言って、まるが確認したあとのかぶおーーー!って泣き叫んだときは映画のラストシーンかと思うぐらい感動的だった」と。8歳の子どもがこんなにも感受性豊かで映画のワンシーンを見ているようだったと、今でもたまに話になる。私もあの時のことはよく覚えているし、映画のワンシーンみたいだったと思う。あれは演技ではないけれどらもしかしたら子役になれたかもと今では思う。

何年経ってもかぶおのこと家族みんな覚えているよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カブトムシのかぶお まる。 @tototo23

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ