七人目


それじゃあ、改めまして。

私の名前は鐙原 千歳。

この学院の学院長をやっているわ。

と言っても、皆知ってくれてるわよね?



 はい

→いいえ



あら、そんな事言わないで欲しいわ、堀君。

ついこの間、始業式でスピーチしたばかりなのに。

もしかして堀君、あなた私の話が退屈だからって寝てたんじゃないでしょうね?

駄目よー?春休みは終わったんだから、生活リズムを元に戻さないと。


っと、そうだったわ。

皆、遅くまでお疲れ様。

コレ、差し入れなんだけど皆で飲んで頂戴。

と言っても、学校の自販機に飲料を卸してる所からの試供品なのだけどね。

飲みながらでいいから、私の話を聞いてね。


ささっ、堀君はどれが良いかしら?



 栗の渋皮煮茶

→餅入りおしるこドリンク

 トマトケチャップジュース

 シメ鯖コーヒー

 肥後和牛使用!肉汁80%

 おいしい脱脂粉乳

 飲むアスパラガスピザ



あら、それでいいの?

それじゃあどうぞ。

……皆に行き渡ったみたいね。

えぇ、どうぞ飲んで頂戴?

正直市販されない商品ばかりだと思うから、貴重な体験よ?



じゃあ、今から私が話すのは、太山君の話に出ていた『神隠し』のお話。




それなんだけど……私達は、『レクレーション』と呼んでいるわ。



うふふっ。

太山君が言ってたのは、約10年前の、よね?

だったら、多分アレだわ。

スポンサーの方々が、「追い回されて恐怖するゴミを見たい」って言ってた時のだわ。

般若の他に、大きなハサミを持った怪人や赤マントを演じてたはずよ。

担当していた先生達は疲れたけど面白かったって、実に満足そうだったわ。


スポンサーの方々にも好評だったのよ?

校内の警備カメラ越しに、皆が逃げまどいながら殺されていく様が痛快だったみたいね。


あらあらあら。

うふふ、勘のいい子は嫌いなのよね、私。

無駄よ?

ココのドアは開かないようにしてあるわ。

携帯も電波が入らないのよ。

うふふふ……、どうして?

今から死んでしまう貴方達に言っても仕方ないじゃない。



でも、そうね。

10年前のレクレーションの話だけは、簡単に教えてあげようかしら。


貴方の話に出て来た、速水君達。

彼らは、染髪やピアスと風紀を著しく乱したから、生贄にしたのよ。

何でそんな事で、と思うでしょうね。


それでも、当時は世間的には認められていなかったわ。

風紀を犯す事の甘美を味わう連中も勿論居たし、理解が無い、と人生の年長者である私達を馬鹿にしていたのよ。



だから、理解させてあげたの。

若さからくる増長で、命を失う事があるって事をね。



一人目は、……あら、嫌だわ。

名前が浮かんでこないわね。

まぁあれから沢山のゴミを処分したから、仕方ないわよね。


一人目の男子は、ピアスを外さなかったから。

大きなハサミで腹部を断ち切ったんだけど、自分の贓物を見て絶叫していたわね。

必死にお腹の中に戻そうとしてたのは、実に滑稽だったわよ。


二人目の女子は、染めた髪を戻さなかったから。

同じく大きなハサミで頭皮ごと、ばっさり切ってあげたのよ。

その後は、ハサミで少しずつ足の方から切って行ったのだけど、長くもたなかったわ。

情けないわよね。


三人目の男子は、常にトランクスが見えるようにズボンを下ろしていたから。

何だったのかしらね、アレ。

本当に格好いいと思ってたのかしら?

この子に関しては、今も西校舎の壁の中にいるわよ、うふふ。


四人目の女子は、染髪とピアスの併合罪。

体中に畳針を刺して、全身ピアスが出来る感じで死んじゃったわ。

全身赤く染めれてあの子も満足だったでしょうね。


五人目の女子は、……何だったかしら。

確か、度々授業を妨害してた……のよね、多分。

鉈でミンチになったんだけど、あまり覚えてないわ、くだらない子だったし。


六人目は……速水君ね。

便髪女のせいで生き残っちゃったけど……今頃は海の底で骨になってるんじゃないかしら?

彼の家族ともども、ね。



あらあら、皆大丈夫?

顔色が悪いわよ?

……でも、仕方ないわよね。

さっきのジュースに入ってたの、あれ、毒だから。



→毒?

 何故?

 言いたい事も言えないこんな学院じゃ



えぇ、毒よ。

今から約1時間後に、貴方達は死んだ方がマシと思う位の激痛を味わって、死ぬの。


でも、安心して頂戴!

ちゃぁんと解毒剤を用意しているわ!



→レクレーション……

 どうしてこんな事を?

 信用できない



えぇ!えぇ!そうなの!

今からレクレーションが始まるのよ!


貴方達は、解毒剤を求めて、この学院内を探し回るの!

と言っても安心していいわよ。

何も無造作に隠してあるわけじゃ無いわ。

各地点に、所謂守護者がいるのよ。

彼らとの勝負で勝ったら、解毒剤が手に入るわよ。


うふふ、スポンサーの皆さん、興奮し始めてるわね。

凄い歓声よ。


あぁ、そうだ。

何故、貴方達が今回選ばれたか教えておかないとね。


貴方達はくじ引きで……。



→そろそろ始めませんか?

 まだ話続きます?

 行っていいですか?



あらあら、貴方、生意気ね。

でも、そうやって若さからくる根拠ない自信を壊すのが、堪らないのよね。


実はね、貴方が飲んだジュースは当たりなの。

皆のより強い毒が入っていて、制限時間は半分……30分なのよ。

どうかしら?

まだ虚勢をはれ……。



→そう言うのはいいですから

 話終わらせません?

 早く始めたいんですけど



……もしかして貴方、現実を見ていないの?

文字通りレクレーションとか、ドッキリだと思ってないわよね?


うふふ、でも現実逃避したくなるのも解るわよ。

だから、現実に引き戻してあげるわ。


そして、後悔しなさい。

うふふ……、ふふっ、あはははははっ!

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