四人目



おっと、僕が4人目かい?

場が温まった頃に僕を指名とは、君は中々見どころがある。


あぁ、自己紹介がまだだったね。

僕の名前は狭間はざま 栄作えいさく

君と同じく、三年生だ。


しかし今のはすごかったね。

まさかここに本物の化け物が潜んでいたとは。

この学校に居ると大なり小なりああいうのを見てしまうんだけど、アレはいけない。

僕が退治してあげようか?

君もそれなりにやるみたいだが、僕には遠く及ばないからね。



→必要ありません

 是非とも!

 死にますよ



おや、僕を心配してくれているのかい?

大丈夫!こんな事もあろうかと、僕はイタコの通信講座を受けているんだ。

そこら辺の悪霊に後れは取らないさ。

さぁ、堀君、さっきのロッカーを開けるんだ。



→彼女は無害です

 りょ!

 死にますよ



本気で言ってるのかい?

君はもしかして、人間と人間に在らざるモノが共存できると考えてるのかい?

それはいけない!

実に危険な考えだよ、堀君。

悪い事は言わない、さぁ、ロッカーを開けるんだ。



→今はあのままで大丈夫です

 狭間様の御心のままに!

 死にますよ



成程わかったよ。

君は彼女に惚れたんだね?

だからこうも頑なに……いや、ならばやめておこう。

僕は馬に蹴られて死にたくはないからね。

だけど、彼女はちょっと臭いそうだ。

消臭に気を付けてあげてくれ。



それじゃあ、僕の話を始めよう。


いやぁ君達は実に運がいい。

この僕の話が聞けるんだから。


僕はね、君達とちょっと次元が違う存在なんだ。

どう違うのかと言うと……むむむ、言語化できない気がして来たよ。

それだけ、僕は高尚なんだ。


なぁ、堀君。

僕と言う存在は何なのか、君にはわかるかい?



→狭間栄作

 狐?

 狐



そう!

いやぁ解ってるじゃないか堀君。


君の言う通り!

身長192センチ、体重68キロ、スリーサイズはもちろん秘密。

好きな食べ物はコンビニのおでん、嫌いな食べ物はピータン。

3学年だけじゃなく1学年2学年、しかも中等部までにファンが多いハンサム!

ソレがこの僕、狭間栄作さ!



……むむ?

反応が薄いなぁ。

堀君はともかく、どうして皆怪訝そうな目を向けてるんだい?

成程成程、「あまり見た事無い」とか「名前すら聞いた事無い」なんて思ってるのかな?

君達が考えてる事くらい解るさ、僕は察する事が出来る男だからね。


だけど、それも仕方ないのさ。

普段、僕はオーラを抑えてるんだ。

考えても見てくれ、僕がいつも通り登校するとするよ?

すると僕を慕う子達が集まって、皆の通行を邪魔してしまうじゃないか。

授業も始められず、先生にも迷惑をかけてしまう。

だから、僕は泣く泣く自身のオーラを抑え込んでるんだ。



→早く話を始めて下さい

 素晴らしいです狭間様

 殴りますよ



全く、君、そんなんじゃモテないぞ?

男たるもの、心に余裕を持っておかないとね。

でもまぁ、君の言う通り、そろそろ話を始めようか。

僕は空気を読める男でもあるからね。


さて、僕がココに取り出したる、この紙。

コレが何だか、君にはわかるかな?



→こっくりさん

 御教授下さい狭間様

 破りますよ



うん、流石に知ってるようだね。

正確には、ウィジャボードという名前だよ。


こっくりさん。

漢字で書くと、狐狗狸さん、だ。

狗と狸と言う文字があるけど、狐の霊を下ろす降霊術さ。

断じて狸は関係ないからね?

あんな愚鈍で下品な奴らを降霊するモノではない、って事を覚えておいてくれ。


まぁ、こっくりさんについての説明は不要かな?

その歴史は古く、西洋ではテーブルターニングと呼ばれた、占いの一種さ。

時代に合わされたソレが漫画で紹介されて、爆発的に広がったって奴だね。


あぁでも、遊びだとバカにしちゃいけない。

こっくりさんは儀式なんだ。

全種族の頂点たるお狐様が、哀れで愚かな君達人間に少しだけかまってあげるんだ。

こっくりさんをするのではなく、こっくりさんをさせて貰う。

そこをはき違えてはいけないよ?


君達は今、こう思っているはずだ。

こっくりさんなんか、全国にあるだろう、って。

だけど、違うのさ。

この学校のこっくりさんは、純粋に力が強いんだ。


何故かって?

そりゃ当然、この僕が行うからさ。

こっくりさん検定4段の僕が行うこっくりさん。

堀君、約束しよう。

今回、君は最高の記事が書けるってね。


じゃあ、100円玉……いや、それじゃあ弱いか。

500円玉ならば完璧に呼べるはずだ。

さぁ堀君、500円をこの紙の上に置くんだ。



→置く

 置かない

 その場でジャンプして下さい



うんうん、素直な子は好きだよ。

勿論Likeの方だけどね。

それじゃあお見せしようか。

最高のこっくりさんを。


さっ、500円玉に指を乗せるんだ。

僕も乗せて、っと……よし。

では皆様、ご唱和下さい。



こっくりさん。

こっくりさん。

おいでください。



……むむむ!

来たね!

君は感じるかい?

この素晴らしいお狐様の力を!

この部屋だけじゃなく、学校中に広がるのが解るかい?


おぉ、お狐様がやる気に満ちて……うん?

何やら顔色が悪い……?

ま、まぁ、そういう日もあるんだろうね、お狐様だから。


ささっ、堀君。

こっくりさんに聞きたい事はあるかな?



 貴方は狐ですか?

 大丈夫ですか?

→ココに住んでいるのですか?



堀君、何かな、その変な質問は。

お狐様は、君達が想像もつかない高次元で高貴な場所から来てくれて……。

ややっ、500円玉が動き始めたね。



【す】【み】【ま】【せ】【ん】



……うん?

何だコレ?

あ、いや、堀君、君が動かしてるのかな?

ダメじゃな……おっと、また動き出した。



【お】【ま】【え】【は】

【た】【゛】【ま】【れ】



ほ、堀君?

ヒドイな。

いくら温厚な僕でも、流石に怒るよ?

とりあえず指を離してくれ、って、待って待って!

指をまだ乗せてないよ!

なんで動かしたんだい!?



【て】【き】【い】【は】

【な】【い】【て】【゛】【す】


【た】【す】【け】【て】



……すまない、皆。

ちょっと待っててくれるかな?

急用思いだしたんで、ちょっと部屋の外で電話をかけてくるよ。



……。


……。


……。




な だよ、アレ。

今日 こっくりさ で皆を驚か るって話だろ


……え?

いや、違 よ?

彼 堀と言うここ 生徒だって。



……は?

入れ替わ てる?


え?

あ はぁ?


あ 八俣っ!?


あの七不 議も裸足で逃 出す、あの?


なん 知ってるん よ。

……お前が逃げ して来た学校、そこ の!?


……う、うん。

そ、そう のか。



解っ 。



……。


……。


……。



待たせ、じゃない、お待たせしました。

いやぁ、大変申しわけありません、八、じゃなく、堀……さん。

どうも今日は、その、力が不安定なようで。


あ、いや、代わりに明日までにちゃんとした怖い話は用意させて頂きますんで!

だからその、許して下さい助けて下さい!


あぁいや!

コレは、僕は本当はこんな喋り方なんです!

だから気にしないで下さい。


……あ、は、はい。

別の話は紙面で提出すればよろしいんですね?

はい!ちゃんとその場所に。

えぇ、はい!

お任せ下さい!



えっと、……あ、500円お返ししますね。



じゃあ、僕、じゃなく私の話はここまでです。

なんかこんな形になってすみません。



あ、帰します!

今帰します!



こ、こっくりさん。

こっくりさん。

お帰り下さい。



……はい、帰りました。

おらさっさと帰れ!


僕……私の話はこ、ここで、終わりです!


次の方、どうぞ!

うぅ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る