寝台下に残されていた手帳


陽落村の権力者の一族

桐原 矢三やそ

が残した手記(一部を抜粋)


(翻訳:郷津ありす)




4月15日


兄上のお陰で権宮司となれた

最初の仕事は未だ山神を信仰する老人共の処理


ただし殺すわけにはいかない

石神様に捧げる事とする


しかし練習とは言え

この文字は未だ慣れないな





4月18日


石神様に捧げた結果

21人中 4人が山神様の寵愛を受ける

残りは成り損ない

老人だとやはり効率が悪い





5月9日


見た目のせいか外からの連中に舐められている気がする

私は桐原家次男だぞ

村一番のインテリゲンチャなんだぞ

あの人足共は石神様へ捧げてやる





7月20日


今期も問題なく国へと鉄を納入できた

残りは別へ売りつけ村を豊かにするのだ


しかしあの鉄が元は人間だと知ったら役人どもはどのような顔をするのだろうな





8月30日


労働者を石神様へ捧げすぎてこの村を疑う連中が出て来た

やり過ぎだと兄上達から非難されたが私は村の繁栄の為にやったのだ

私が宮司になるべきなのだ





9月 日


失敗した

失敗した

失敗した

失敗した


どうしてだ

なんでだ

一体どこで間違えた





 月 日


兄を事故に見せかけ殺し宮司となったのに

石神様

こいつは何なんだ

契約とは何だ

受け答えを失敗した

約束など知らない





 月 日


アイツの怒りに触れ、村人が成り損ないになってく

成り損ないが人を襲う

山神様を頼りどうにかして貰うしかない

あの一族の娘を贄にせねば

























 月 日


私は悪くない

私は何も失敗していない

間違えていない

非難される覚えはない


私の功績を遺すべくこの手帳を隠す


コレを見た者へ

私のこの村への献身と尽力を後世へ伝えて欲しい







 月 日




(手記はココで終わっていました)

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