四十万芽瑠汀



 月  日  曜日


 人形を嶺衣奈にする為に色々と教えてみた

嶺衣奈の映像やCD、写真集、裸の画像

幸いにも私の言う事を聞いてくれるみたい






 月  日  曜日


 嶺衣奈の体が動くようになった

しかも話せるようにもなった!

声は嶺衣奈の声に近い






 月  日  曜日


 見た目が成長しない

木のまんまだ

どうすればいいの?






 月  日  曜日


 人形が入ってた箱の内側に紙が貼ってあった

説明書かと思ったらお札

だけど所々黒く煤けてた




 月  日  曜日


 嶺衣奈が夕食用の豚肉のブロックをかじってた

食べる事も出来るんだね

今後は一緒にご飯を食べよう

成長するかも知れないしね






 月  日  曜日


 テレビで先日の食人家族の特番があってた

カニバリズム

コメンテーターが気になる事を言ってたので調べてみよう






 月  日  曜日


 嶺衣奈は人を食べると、人間に成れるのかも知れない

試しに、遊びに来たほうちゃんを食べさせてみる

すると一気に大きくなっちゃった


 ほうちゃんには悪いけど、嶺衣奈の為だから仕方ないよね?

有難う、ほうちゃん






 月  日  曜日


 どうせ食べるなら、若い女性の方がいい

その方が嶺衣奈の為になると思う

あと、大事に保管してる嶺衣奈の髪や垢、便等も食べさせた


 嶺衣奈の身体能力はすごい

自由に食べさせることにした





 月  日  曜日


 今日で二人目

嶺衣奈の身長が伸びて、顔に凹凸ができた






 月  日  曜日


 三人目

身体は木だけど、嶺衣奈の面影が見え始める

変な言い方だけど、中に嶺衣奈が居て、それに体が合わさって行ってるみたい






 月  日  曜日


 ほうちゃんの件で警察が来た

家出したいと言っていた、と嘘を伝える


 二人目の動画に嶺衣奈が映ってるのよね

大丈夫だと思うけど、リスクは無い方がいいかも知れない


 ほうちゃんの件で言った嘘は、いい考えかも

今後は、居なくなっても騒がれない家出した女を狙う様にお願いした

あの場所なら餌に困らないだろうし

嶺衣奈は賢い、すぐに頷いてくれた 






 月  日  曜日


 嶺衣奈の件は、少し沈静化したみたい

嶺衣奈はもうすっかり、嶺衣奈の姿だ。

嶺衣奈の糧になった人も、本望だろう

肌は硬いけど、温かく感じる





 月  日  曜日


 明日の仕事は、バックダンサー

あの夢見羅観香のだ

正直気が乗ら













『キキィ』



玄関が開く音と、聞き慣れた軋み。

私は日記帳を閉じ、音の方へと顔を向けた。


「お帰り嶺衣奈!今日もいっぱい食べた?」


私の声に、嶺衣奈の顔が艶めかしく動く。

木製なのに、まるで人間の様に口や目が動き、機微な表情を作る。

やっぱり嶺衣奈は、特別な存在なのだと嬉しくなる。


口が開くけど、声は聞こえない。

ううん、だって嶺衣奈の声は私だけに向けられてるんだから。

私にしか聞こえないの。


えぇ、でもギキギィ食べたりないな……もっと食キィ ギキィべちゃダメ?』

「だーめ!食べ過ぎるとお腹が出ちゃうでしょ?」

『残念……芽瑠汀はいギキイィィィィじわるだね』

「嶺衣奈の事を想って心を鬼にしてるんですー!」


嶺衣奈の拗ねた表情に、私は怒った顔を返す。

すると、嶺衣奈の顔が可愛く崩れた。


「明日、貴女の偽物と一緒に居る女と仕事なの。前まではあの女大嫌いだったけど、今は哀れだと思ってるのよ?だって、貴女の偽物で喜んでるんだから」


そう、今、私の傍に居る嶺衣奈が、本物の嶺衣奈なのだ。

嶺衣奈の全部が、私のモノなの。


夢見羅観香は哀れだけど、そのままにしておくのはまずいかも知れない。

悔しいけど、世間の認知度はあっちが圧倒的に上だ。

すると、偽物でも世間は本物だと騙されてしまうかも知れない。


「嶺衣奈の偽物を消して、貴女が本物に成ればいいんだけど……ねぇ嶺」


振り向くと、嶺衣奈が大きく口を開いていた。

びっしりと生えた、赤く塗れた爪楊枝の様な突起物が一杯。


(あ、私、食べられちゃうんだ)


沸き上がるのは、歓喜。

私が、嶺衣奈の血肉に成れる!

嶺衣奈の、命に成れる!!

嶺衣奈と、一つに成れる!!!


「あぁ、嬉



























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る