幽霊の声が入った歌
幽霊の声が入った歌 ~プロローグ~
カーテンを閉め切り、電気をすべて消した室内。
冷房の音だけが響く闇に、長方形の光りが生まれた。
光は正面に女性の輪郭をなぞり、室内が人の存在を認めていく。
「……嶺衣奈ちゃん」
光に様々な色が付き始めた。
まずは、女性二人の画像。
光を見る茜色の髪の女性と、あさぎ色の髪の女性が、肩をくっ付け合い微笑んでる。
次も、同じ人物の画像。
二人とも水着を着て、海を背景に笑っている。
次も、その次も、そのまた次も。
画像に映っているのは二人で、その顔には笑顔が張り付いている。
やがてそれは一人……茜色の女性のみとなった。
「なんで、死んじゃった、のかな」
女性がイヤホンを付け、切り替えた画面をタップすると、曲が流れだす。
彼女自身が歌う、世間から持て囃される歌。
歌の内容は「いなくなってしまった大事な人の夢を、私が引き継ぎ叶えます」・・・そんな内容の歌だ。
聞きなれた、いや、歌いなれた曲の為、自然と唇が歌詞をなぞる。
歌は丁度サビの部分。
女性は目を瞑り唇を動かすも、途中でそれが止まり、くぐもった声が漏れる。
巻き戻しをタップし、同じサビの部分を聞く。
それを繰り返す。
繰り返す。
繰り返す。
繰り返す。
「やっぱ、嶺衣奈ちゃんの声、だよね。……どうして」
ノイズにも聞こえる、その部分。
だが、彼女は違うと。
コレは明確に、人……いや、人ならざる者の声だと、解ってしまった。
「私の事、恨んでたの?……ねぇ、嶺衣奈ちゃん」
再び彼女は、サビの部分を聞く。
タイミングは丁度、サビの始まり。
「あっ……!」
手が震え、女性はスマフォを落としてしまった。
柔らかなカーペットの上に落ちるも、はずみでイヤホンのジャックが外れてしまう。
そして、闇の世界へと、その声が溢れ出した。
「だから私忘れないよ!I can make your dre
動きが止まった女性の後ろ。
あさぎ色の髪をした女性の顔が、そこにあった。
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