番外編4 初めての幼稚園




 2093年某月某日。

 エリーにとって初めての幼稚園の日。

 マリーに連れられたエリーの足取りは重かった。

「ねぇおかあさん。ようちえんってどんなところ? わたし、いきたくない。おうちがいい」

 エリーは引っ込み思案なところがある。マリーはそんなエリーを幼稚園に連れ出した。それはマリーにとって勇気のいる行動だった。なぜならマリーは医者に「エリーは自閉症の傾向がある」と言われていたからだ。決まったものを食べ、決まった服を着る。口数は少なく、表情も乏しい。幼稚園に通うことで、その回復をマリーは望んだ。

 他の園児が母親に抱いて泣きつく中、エリーは意外とすんなり、保育士の手を握りマリーにさよならをした。

「夕方には迎えに来るからね」

「うん」

 素直なエリーにマリーは少しガッカリした。他の子みたいに泣いて抱きついて来てもいいんじゃないか、と。マリーが幼稚園の入口付近で後ろを振り向くと、エリーはまだ手を振っていた。

「やっぱり淋しいのかしら」

 マリーはエリーに手を振り、幼稚園を後にした。



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全無職時代 とろり。 @towanosakura

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