第5話 回想・パンツも全部ですよ?
それでは騎士精神論を始めます。
《優れた戦闘能力》
《健全な精神》
《騎士である自覚と誇り持ち、礼節を忘れぬこと》
《弱者への敬意と慈愛。また、彼らと生き、彼らを手助けし、殻らを擁護する気構え》
《自らの生活の場、糧であるルビス王国への愛国心と忠誠》
《国王への厳格な服従》
《我らの正義と良心を抑圧・減失しようとする敵に対する不屈の戦い》
《敵前からの退却の拒否》
《真実と誓言に忠実であること》
《悪の力に対抗して、いついかなる時でも、どんな場所でも、正義を守ること》
この守り倣うべきとされた十からなる指針。
いわゆる騎士の十戒があるというのは前回の授業でやりました。
今日は騎士の十戒の現状について語りましょう。
騎士の十戒は、王国が定めた法とは違います。
強制力もなければ、違犯したからといって罰則があるわけでもない。
それでも騎士は、これらの教えをないがしろにはしません。
なぜかといえば、周囲からの信頼を得るためです。
国民はもちろん、他の騎士も、騎士の十戒から逸脱した者を騎士とは認めないのです。
ちなみに騎士道とは、騎士の十戒を遵守する生き様を指します。
とはいっても騎士だって人間です。
人間である以上は不完全であり、ときには欲望に負けてしまいます。
なので騎士道を極めている人間は、ほとんどいないのが現実です。
だからといって人間の弱さを言い訳にして騎士道を無視するのが悪いことだというのは説明するまでもありませんよね?
とくに男子陣!
騎士がモテるからって間違っても結婚をちらつかせて婚期を逃した女性を弄ぶなんて論外です!
絶対にやってはいけませんよ!
え?
私がそんな目に遭ったのかって?
そんなわけないです……そんなわけ……うあああああっ!
○●○●○●
はーい、騎士歴論の授業ですよ。
騎士の歴史は戦争の歴史でもあります。
かつては主に領土の理由から北のサファルド教国や南のダイアーダ共和国との戦争が絶えませんでした。
当時、騎士の役目は現在のような治安維持ではなく、他国から自国を守ることが主でした。
そして最初に英雄として語り継がれるようになったのが、原初の英雄とも呼ばれるサンドラ・クリスタルです。
彼こそが、この王立サンドラ学園の創始者であり、騎士の育成制度を定めるよう国王に進言したのも彼だと言われています。
あと、これは私個人の意見ですが、英雄を目指してると公言してる男性にロクなのはいません!
男性だから英雄に憧れるのは理解できます。
だけど!
そういう男性に限って口だけなんです!
待ち合わせには来ない!
約束は忘れる!
最初は子供みたいでかわいいと思っても、半年も付き合えばその子供っぽさにうんざりしてきます!
○●○●○●
みなさん、第一闘技場に揃ってますね?
それでは、いよいよ彩能を発現させる授業に入りますよー。
入学初日にも話したように、彩能とは個人のなかに宿った色によって発現する、特別な力です。
けれど、色だけで力は発揮しません。
色が強い願いと結びついた時に初めて、彩能として発現されます。
注意しなければならないのは、願いと言っても《お肉が食べたい》や《お昼寝したい》といった、表層的な願望ではないことです。
もっと深い、心の奥の奥に眠った、本人も自覚していないような、根源的な願望でなければなりません。
ですので、発現した彩能が本人の望まない能力だった、なんてことがよく起こります。
そのあたりは覚悟しておいてください。
あと、これも先に説明しておきましょう。
彩能には、色によって発現する能力の傾向があります。
赤系統は無生物に関する能力。
青系統は空間に関する能力。
黄系統は生物の外面に対する能力。
白系統は記憶、認識、精神など生物の内面に対する能力。
黒系統は時間や場所に関する能力。
この五系統が基本となります。
が、これはあくまでも基本です。
何事にも例外があるように、必ずしもこの分類に従った能力が発現するとは限りません。
青でも無生物に関する能力になることもあるし、赤でも空間に関する能力になることもあり得ます。
そして基本以外の色は混合色となります。
たとえば水色なら青色と白色の混合といった感じですね。
ここで勘違いしがちなのが、二色の混合だからといって二系統の能力が発現したりはしません。
一人が発現できる彩能は一つの系統だけです。
また、注意が必要な色もあります。
それは緑色です。
本来なら緑色は青色と黄色の混合になりますが、なぜか青系統の能力だけが発現します。例え黄色の割合が多い緑色であっても発現するのは青系統になるんです。
理由はわかっていませんが、昔から緑色を青色とする場合がありますからね。
ほら、生い茂った草を青々と、なんて表現したりするでしょう。
もしかすると色の世界では青色と緑色は同じようなものなのかもしれませんね。
ちなみに私の紫は青と赤の混合ですが、青のほうが少しだけ濃い紫なので、彩能も青系統でした。
色によってある程度の能力が決定してしまいますから、そういう意味では願いよりも宿っている色のほうが重要と言えるかもしれません。
はい、ここまででわからない人はいますか?
いないですか?
わからないからって恥ずかしがることはないですよ?
むしろ、あとからわからないほうがずっと恥ずかしいですよー?
本当にみなさんは優秀ですね。
わかりました。
次の段階に進みましょう。
これからみなさんには自分のなかに宿った色を知ってもらいます。
まずは着ている物を脱いでください。
あ、パンツも全部ですよ?
大丈夫、みなさんにばかり恥ずかしい思いはさせません。
私もお付き合いしますから安心してください。
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