昔日
中学生の頃、私にはとても仲のいい友達がいた。
その子はある日、ずっと好きだった男の子に告白をして、とうとう付き合うことになる。
そして、その後。なんでかはよく覚えていないけど、屋上に2人、色とりどりのお弁当を並べて、昼の休みをそこで過ごした。
私はおめでと!てその子を祝福しいて、そしてその流れで、なんとなく言った。
「そういえばわたしさ、恋ってしたことないんだよね。恋をするってさぁ、どんな感じなの?」
それに対する友達の答えは、少女漫画のように、とても美しいものだった。
その子は話してる間中、ずっとキラキラと輝いていて、その様子に私は、可愛いと思うと同時に、何故か少しだけ、もやもやとした、嫌な感情が湧き出してくる。
そんな私になんて気づかず、友達は茶化すように、そんなふうに思う人は居ないのかと聞いてくる。
ちょっと考える。思い当たる人がひとり、いなくもない。やめておけって脳が激しく訴えるのに、ちらりと顔を覗かせはじめた本心は、その声に耳を貸さない。
「えぇ、そうだなぁ。私にとっては、(その子の名前)かなー」
疑われないよう、あえて冗談を装って、軽く。今思えば、それが失敗だったのかもしれない。
「え?」
その子は一瞬、困惑した表情を浮かべた。
でも、私の言葉は冗談であると思ったようで、すぐに笑いだす。
「もう、冗談やめてよ」
その前後に、何か言っていたような気がする。多分、私の
向こうはきっと、本気で言ってるわけじゃない。それは分かってる。
だけど、その一言で、わたしは"振られた"って思った。
笑いと共に話すその言葉が、軽い態度が、何故だかとて悲しくなって、私は彼女と目を合わせられない。
それと同時に、振られたことで、はっきりと気づく。やっぱり私は、この子のことが好きだったんだ。
そして彼女は、半年もせず、例の彼氏とは別れることになる。
あの時のことはよく覚えている。傾き始めた太陽が身体を差す教室で、彼女はずっと泣いていた。
大丈夫だよ、だって私がいるじゃん。これから先も、ずっとずっと、君のそばにいるから。
彼女のそばで、私は何度も口を開き、でも結局は何も言えず、ただ震えたその背中を撫でてあげることしかできなかった。
そのまま私たちは卒業して、そしてわたしは最後まで、言い出すことができなかった。
「ずっと前から好きでした」
その、たった一言が。
この関係を壊したくなかったとか、きっと話しても迷惑だからとか、理由はたくさん挙げられる。
だけどきっとそのどれもが、本当の理由じゃなかったんだとも思う。
ただ私は、怖かっただけなんだ。今度こそ本当に、あの子に振られてしまうのが。
あの子は今、大学で出会った別の男と結婚していて、そろそろ第一子も産まれるらしい。男の子だそうだ。
電話も住所も知らなくて、卒業してから一度も会っていないけど、風の便りにそう聞いた。
どうか私がいなくても、ずっとずっと、お幸せに。
そう願わずにはいられない。
きっと私も、そのうち誰かと結婚して、子供なんかもできるかもしれない。
だけどもし本当にそんなことが起こったとしても、あの子はきっと知りえない。
私が残したこの感情を。
結婚かぁ。できるのかな、私に。
正直な話、私の隣に男の人が歩く未来を、うまく想像できない。
私が隣にいたいと思ったのは、これまでの長い人生で、あの子だけだ。
まあでも今さら、こんな未練がましいことをことを言ったって仕方がない。
あの子のことを考えるのは、今日で終わりにしよう。
さようなら。もう二度と関わることの無い、私の愛した初恋の人。
こうして、あの子と過ごした時間の全ては、"仲のいい友達"で完結した。
百合妄想置き場 千歳依瑠 @iruka_millennium
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