第5話 初志貫徹

 茂は修司から、まっさらのレンチを手渡された。何本かのセットになった豪華なものだった。

 尻込みするので、盗ったレンチを返す役は洋一が引き受けた。


 医院の倉庫の入り口に、1本のレンチが置かれていた。

「ごめんなさい」

 とだけ、たどたどしい字でメモ書きがあった。


 3人は三度みたび、生徒指導室に呼ばれた。今度は3人一緒だった。

「返したらええちゅうもんやない。お医者さんが『許す』言うとるから、今度だけは見逃しちゃる。盗った者は、ほんまに反省しとけよ」

 黙っていたら長く説教されそうなので、3人は一応「はい」とだけ、明るく元気に答えておいた。


 3年になり、茂は町の修理工場に就職が決まった。勲叔父さんの紹介だった。茂は定時制高校に通いながら、昼間は油まみれになって工場を走り回っていた。隆は一度だけ見学に行ったことがある。


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続 村の少年探偵・隆 その8 スクーター 山谷麻也 @mk1624

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