陳述

確かに私は彼の研究を手伝っていましたしあの日-2023年の12月19日火曜日-の夜11時に彼と二人きりでアティモイク公園に行き三時間そこに留まっていました。しかし、私はそこで彼に何かした事はなくましてや彼の命を奪いその体をどこかに隠したわけでもありません。再三言いますが、今まで述べたことが私の知る所の全てであり、嘘は一切ありません。私は二年前、中学の同窓会で彼と再会し、彼の研究に惹かれ、手伝ってくれないかという願いを快く了承しました。彼の研究は星と大地の研究でした。それ以上の深いことは知りませんし、知ることも叶いません。彼は研究を三年前から始めたといっていました。研究の影響は彼の体に著しい変化を与えており、体はやせ細り、頬はこけ青白く、目には狂気を含む熱が表れていました。私は研究の手伝いとして彼の生活を管理していました。生活を私に任せたことで研究に没頭できるようになり、私が手伝い始めて二週間ほど経った時には一日のほとんどを机の上で過ごしていました。そこで彼は一冊ノートに何か文字らしきもの-文字というよりは何かの図に近いもの-を書き連ね、それを口に出して読み、実験の予習をしていました。たまに私を公園に連れ出し、実験の様子を見せてくれました。あの日もいつもと同じようにアルモー区アティモイク公園に行きました。彼はいつもでは考えられないほど興奮していていました。そして、彼の体には普段の生活ぶりからは考えられない変化が表れていて、食事をとらずやせ細っていた体には肉が帯び、顔には艶と血の気が戻り、顔には勝利と恐怖が入り混じった表情がありました。いつもの位置-高さ7m、横幅12mほどの大理石造りの滑り台から右手に20mほど離れた所-に着いた時、「今日はちょっと危ないから、合図をしたら目を閉じるのと一緒にこれをしっかりと握り続けるんだよ。」と彼は私にその図が描かれた紙を渡しました。彼はすぐに実験の準備を終え、印を結び詠唱を始めました。三分ほどの詠唱を終えた直後、私は彼の左手の小指を握る合図を受け、すぐに目を閉じました。目を閉じる直前、私は彼が何かに握られるようにして体を曲げるのを見ました。助けに向かおうとした足をもう一方の理性で止め、手を叩き合わせたような破裂音の合図を待ちました。八秒ほどして合図がありました。目を開けるとそこに彼の姿は無く、何の痕跡も残っていませんでした。私はそのまま彼の家に直帰し、彼の研究の成果を全て燃やして処分しました。私は彼を助けたいのです。今、知ることはこれで全てですが、私は彼を助けるために彼の研究を受け継ごうと考えています。私に彼を害する動機はなく事実もありません。むしろ、あなた達を同じように彼を救いたいと考えている事を理解してほしい。

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