第6話 エデンの東
陽子と出会ってから2年、勿論幸也は性欲に任せたかったが彼女が18歳を超えるまでは自分のルールとして、そういう行動にはうつさなかった。
陽子は幸也の行為と節度を感じていたからいつの間にか好きになっていたが彼女が18歳の誕生日を迎えた日に二人は結ばれた。
この希望のない世の中では子供をどうするのかと思って悩んだが、世界から人が消えてしまったら自分たちの痕跡も残せないと、二人は生む決意をする。
出産と育児の本を片っ端から集めて、すぐに妊娠した陽子を幸也は気遣った。そして妊娠10カ月すぐに男の子が生まれた。
二人は急いでタバコの煙を吸わそうとしたが、健康的に生まれたこの子供は生まれながらにして耐性を持っていた。タバコを吸わなくても生きていけるのだ。
それから7年後。
陽子は近所中を調べつくしてから得た畑で大根とさつまいも、玉ねぎとジャガイモを毎日手をかけて育てていた。一人子供を産んでから体は一回り大きくなった。
二人の子供、和彦は元気に走り回り、二人は読み書きや基本的な勉強を教えた。陽子は和彦がものすごい勢いで知識や経験を吸収することを喜んだ。
幸也はPCの使い方、ソーラーの直し方、車の運転、幸也自身が自力で得た技術だが和彦に教えていた。
和彦が8歳になる年、それは来た。
良く晴れた朝に和彦が、
「お父さん、UFOだよ!見て!」
空をさした方向を見る幸也、そこには大型のドローンが浮かんでいた。
幸也はすぐに和彦を隠れさせて、自身は銃を手にしてドローンに向けた。そしたら、
「撃たないでください!私たちは敵ではありません。そちらのことは宇宙空間の衛星で知っていました。お子さんがいますよね?その子は未来の希望です。
どうか、滋賀県に来てください。生きていたワクチン開発学者が今の大気で生きられるワクチンをようやく開発しました。三人でお越しください。お願いします、私たちは81人のグループです。全員がワクチンを打ちました。西にはあなたたちしかいないのです。東から、ほんの少しですが生存者がいて彼らも呼んでます。
お願いです、社会を作り直す手助けをしてください。私たちの座標は今落とします。この地図と今もある道路の行き先を使えばたどり着けると思います。
私たちはいつまでも待ってます。お願いします。」
若い女の声だった。合成音声ではない。幸也は銃を下ろして、考えた。
三人は二日話し合って向かうことにした。ここにいても人口は増やせない。ならば可能性に賭けてみようと。
陽子も運転を身につけている。三人は大きめのキャンピングカー二台で滋賀県に向かうことにした。
山ほどの食料と残り少ないタバコを詰めて、持っていける娯楽は全て詰めた。
「まさか、この地を離れる日が来るとはね。準備はいい?」
陽子も和彦も笑顔だ、和彦は他の人に会うのをワクワクしている。
「じゃあ、行こうか。東へ!」
三人は旅立った。希望を求めて。空は初夏の陽気だった。シロサギが空を舞っていた。
ライフ&シガレット くま既知 @kikiuzake001
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