第41話 これからも

 その後、次男は何とか腹痛と付き合いながら、無事大学受験を通過し、大学生になった。ストレスフリーになってしばらく腹痛もめまいもなかったのだが、また時々発作が起きるようになってしまった。それでも、食べ過ぎなければ大丈夫だとか、お腹が痛くなったら食べなければ治る、などの対処法を自分なりに見つけているようだ。

 修学旅行の後、文化祭のクラス劇でナレーションを担当した次男。すごく練習したら上手くいって、とても好評だったようで、すっかり自信を付けた。また、大学ではバンドサークルに入り、ボーカルを担当。歌もそうだがMCも得意で、危なげない様子。すっかりあがり症ではなくなったみたいだ。若いうちは1年でもすごく変わる事がある。あの時薬を飲まないで良かったと思っている。

 また、周りによく気づく子にもなってきた。私が手の込んだものを作ると、必ずねぎらってくれるようになった。私が寝込む事はそうそうないが、もしあれば何か気の利いた事をしてくれるのではないか、と期待している。


 子供が高校を卒業すると、親は「保護者」ではなくなる。病院でも散々「保護者の承諾」を求められたが、もう必要がなくなった。大学やアルバイトを欠席する際の連絡なども、親がするものではなくなった。ある意味、子育ての終わりを感じさせる。

まだまだ未熟な部分があり、それは長男も同じだが、私が特別気負わなくても少しずつ成長している。気づいた事だけ、そっとアドバイスをして、後は自然に、家族として接していこうと思っている。


 ただ健康でいてくれたら、それでいい。あとは好きなように生きて欲しい。そして、私は少しずつ自分の事だけを考えていくようになるのだろう。ん?いや、どうだろうか。世間では孫育てに忙しいという話も聞く。孫は生まれるかどうか分からないが、まだまだ人生何が起こるか分からない。今は全く思いつかないような何かを始めるかもしれない。

 第二の人生、いつから?もう始まっているのかも。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

第二の人生への過渡期~初めて救急車を呼んだ出来事~ 夏目碧央 @Akiko-Katsuura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ