ちょこっと茜色
めいき~
ちょこっと茜色
それは、帰り道の事だった。一生懸命作ったチョコは、まだ自分の鞄の中にある。
ちらつく雪が顔を刺す、まるで意気地なしと空から叱責されている様。
机の中に入れるのも、下駄箱に入れるのも勇気が出なかった。
分厚い雲の、薄暗い中どんよりとした気持ちで歩いていた。
「はぁ……」さっきから、自分の溜息と一緒に白い息。
「もう、自分で食べちゃおうかな」そんな悲しい気持ちで胸が締め付けられる。
一生懸命、ラッピングも選んで。精一杯絞り袋で、考えた告白も書いたのに。
「バカ…」最後の勇気がでなくて、自分の手首を押さえて言葉につまっていれば世話はない。
(どんどんと、自宅へと近づく。当たり前だ、これは帰り道なのだから)
「あれ?!雄介。どうしたの?」
自転車で転んでいたらしく、バツが悪そうに苦笑した。
「あっ、優子か。相変わらず、辛気臭い顔してんな」
「うるさい、それより大丈夫?」
「なんてことねぇよ」そういって、その青い色の安物の自転車をおこした。
「早く帰った方がいいよ、風邪ひいちゃうよ」
そういって、自分の鞄からハンカチを取り出して差し出した。
「ありがとよ、これ洗ってかえすわ」
そういって、軽くハンカチを使ったあと乱暴にポケットに入れる。
「そういえば、これ本命に学校で渡しそびれちゃったから食べてよ」
「こういのは好きな奴に渡してこそ意味があるんだろうが」
それを聞いて、優子は大きく溜息をついたあと笑い出す。
「私の本命は貴方なんですけど」
その言葉に何とも言えない顔して、雄介も笑いだす。
「学校で渡されてたら、チョコは俺同様に泥まみれになってたトコだから結果オーライって奴だな」
「そうね、でもお互い散々なバレンタインね」
「違いねぇ」
そういって、二人でゆっくり帰って行った。
おしまい
ちょこっと茜色 めいき~ @meikjy
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