第98話 攪乱
――――【メルフィナ目線】(帝都の路地裏)
木箱を背にして隠れ、二人の男性のやり取りを妙子と見守っていました。妙子が私に「隠れます」と言うとまったく気配がなくなって姿も見えなくなったので、本当に驚く他ありません。
フードを目深く被った男性が袋を渡すと、身なりのよい貴族風の男性は袋の中身を確かめました。
「味見するぞ」
「ああ」
貴族風の男性は透明な包装の端の捻られた箇所を緩めると粉が落ちてきます。その粉を手のひらに集めた貴族風の男性は……。
「堪らないな、こいつは本物だ……」
旦那さまが持ち込んだ黄金色のあのお菓子゛パリピーターン゛です!
フードを被った男性は貴族風の男性からお金を受け取ろうとするときでした。
「悪いがこいつはすべていただいてゆく!」
「くそっ! 売人狩りかよ」
杖に仕込んでいた剣を抜き、フードを被った男性に刺突を見舞います。それを後ろに跳び
被ったフードが落ちると彼の頭には山羊のような耳が露わになります。
「ははっ! 畜生の分際で人間さまの上前を跳ねようなんて、死んで当然。人間さまに屠殺されることを感謝するがいい」
「うわぁぁぁーーーーーっ!!!」
恐怖のあまりフードの男性は固まってしまい、身なりのよい男性が逆手に持ち替えた仕込みの剣が胸に迫っていました。
【エレメンタルファイ……】
咄嗟に私が精霊魔法を放とうとした瞬間に後ろから、ヒュッ! という音と共に何かが掠めます。
「うぐっ! な、何者だっ!」
私の後ろを掠めたのは尖った棒状の物体で身なりのよい男性の手元に当たり、地面に転がっていました。男性は逆手に持った剣を痛みからか手放してしまっています。
私は抜刀して、身なりのよい男性へ突きつけました。
「あなたには用がありません。素直に立ち去るなら、不問にいたします」
「覚えていろ! この借りは必ず返してやる」
すると男性は捨てゼリフを残して、壁際すれすれを通って逃げていったのです。残された獣人の男性が起き上がれないまま、私に訊ねました。
「何者だ……あんた?」
「あなたにお話があります」
「なんだ!? てめえらはもしかして、帝国魔導兵かっ? さてはオレを捕まえて、吐かせよう、って魂胆だな! だがその手には乗らねえ!」
獣人の男性はさっきまで立ち上がれないでいたのに、左右の壁を連続で蹴り、どんどん建物の上へと駆け上っていきました。
【エレメンタルエア!】
彼を追いかけるために風の魔法で宙に浮いて跡を追います。でもそれ以上に獣人の男性の身のこなしが素早くて捉えきれません!
「ははっ! 悔しかったら、追いついみろよ!」
屋根を縦横無尽に駆ける彼についていけこそすれ、追いつくには難しいようでした。
「もう……追いついて……いますよ……」
「うわぁっ!?」
彼の先回りしていた妙子がむくっと壁を登り、姿を現すと獣人の男性は驚き、屋根の上で転んでしまいました。
「くそっ! 煮るなり焼くなり、好きにしろっ!」
「そんなことしません」
私は彼を安心させるためにフードを取り払い、彼に見せます。
「うおっ!? ま、まぶしい……美しすぎて、目が焼けちまいそうだっ!」
「えっ!?」
彼の言葉に驚いてしまったのですが、私の耳を見た彼は溜め息をついていました。
「なんだよ、エルフかよ……。それなら早く言ってくれって。わざわざ逃げたオレが馬鹿みてじゃねえか……来いよ」
「来いって、どこへ?」
「ボスんとこだよ、森人さんよ」
一応、ご挨拶を……と思い、獣人の男性に素顔を晒すと彼の警戒感はすっかり抜け落ちていたのです。いえ、演技という線も考えられますが、何か同朋と出会ったかのような笑顔を見せるあたり、彼についていっても良さそうな気にさせていたのです。
私たちは彼に連れられ、路地裏の最も奥へと案内されました。
「ここだ、入んな」
彼はドアをノックしたあと、部屋に入り私たちを紹介します。
「ボスに会いたいっていう酔狂な客人を連れてきましたー!」
「あたしに会いたいだって? 何者だい?」
獣人の男性が彼のボスであるという女性を紹介しました。
オオサカのオバチャン!!!
私の目の前には旦那さまのお家のテレビという物で見たそっくりな生き物がいたのです。
―――――――――あとがき――――――――――
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