第96話 秘技暗殺返し
ゼル姉さんと様子を窺っていたが、死刑宣告を終えたミランダはさっさと宮殿のような屋敷へと引き上げてしまった。従者たちはあのグラスランナーをロープでぐるぐる巻きに縛る。漫画かよ、ってくらいに……。
そのまま荷馬車に荒っぽく投げ込まれ、出発した。
「あいつら、どこに行くんだ?」
「この先に廃鉱山がある。多分そこだろう」
――――廃鉱山。
あのグラスランナーはミランダの従者たちにより縛られたまま廃坑へ運び込まれた。従者たちにバレないように見ていたら……。
「オレらで始末しなくても廃坑に巣くったモンスターどもが食い尽くしてくれる。特に
「し、死にたくなぃぃぃぃ!!!」
「ははっ! 笑える。おまえ、暗殺者なんだろ? 散々人を殺しまくって今更命乞いとか恥ずかしくねえのかよ」
従者たちに指を差され、ゲラゲラと腹を抱えて嘲笑われてしまっていた。
そんな彼らを見ていて、一つの妙案が浮かぶ。
「トウヤ、おまえ……悪役令息みたいな笑みを浮かべているな。どうしたんだ!?」
「ああ、ちょっといいことを思いついた。あのグラスランナーを助けよう」
一旦外へ出て、廃坑の出入り口の両脇に潜んでいると笑いながら従者たちが出てきた。手慣れたやり口を見るに幾人も命じられるがままに屠ってきたんだろう。
「行こう」
「ああ」
置き去りにされたグラスランナーの下へ駆けつけると廃坑を住処にしているモンスターたちが消化液を垂れ流しながら、取り囲んでいた。
ジジジジッ。
「やだぁぁぁぁ! 死にたくなぃぃぃぃ!!!」
昆虫好きの人でも人間の頭を一口で噛み砕く大顎を見れば、生理的嫌悪を覚えるに違いない。お化け蟻がグラスランナーの身体に脚を乗せ、そんな大顎が今まさに頭を噛み砕こうとしていた。
「うわぁぁぁーーーっ!!!」
【
グラスランナーの断末魔のような叫び声が坑道に響いた瞬間、大顎を持つ蟻の頭部がころころと地面を転がる。すべての荒れた波風を静める居合いを放って、グラスランナーが噛み砕かれないように図った。
その向こうではレーヴァテインに付着したモンスターの体液を振り払うために血振りしているゼル姉さんがいる。
「トウヤ、こっちの雑魚モンスターの処理は終わったぞ~」
「お疲れさま~!!!」
ゼル姉さんの剣技はメルフィナと再戦したときより遥かに向上していた。
「愛は人を強くさせるんだな」
ボソッとデレるゼル姉さん……。
あえて、ゼル姉さんのつぶやきはスルーしておいた。
「なんで……助けてくれたんですか……? ボクはあなたたちを殺そうとしたのに……」
縛られたロープをナイフで切っているとグラスランナーが涙目になりながら、訊ねてくる。
「勘違いするな。私は貴様がどうなろうと知ったことじゃない。だが私のトウヤが貴様を助けたいと言ったから、助けたまでだ。トウヤに死ぬほど感謝するんだな」
ゼル姉さんはグラスランナーにツンとした対応をしているが、あくまでグラスランナーが俺を狙ったことに怒りを覚えているだけのようだ。
ぐるぐる巻きのロープを解くとグラスランナーは女の子っぽくぺたん座りで大人しくしている。
この子は女の子なのか?
胸元をチラ見するがだぼっとした服装なので判別はつきがたい。それより今は……。
「いくらで俺たちの暗殺を依頼された?」
「銀貨二枚です……」
「一人につき銀貨二枚か……私たちの命も安く見積もられたもんだな」
「いえ、二人で二枚です」
やっす!
というか、よくそんな破格で引き受けたと思う。
「じゃあ、俺はキミに金貨百枚で雇いたい」
「「ひゃっ、百枚ーーーーっ!?」」
グラスランナーだけじゃなく、ゼル姉さんまで驚いていた。正直、金貨は現代でも使いづらく困っていた。
二人は驚いていたが、グラスランナーは魔力を込めた矢を放てるくらいなのだ、暗殺スキルはなかなかの技量が見込める。
うんうんとゼル姉さんは腕組みしながら頷いていた。なるほど彼女も認めるほどグラスランナーは良い腕をしてるんだな、と思っていたら……。
「さすがメルフィナ、ああ見えてちゃんと優良物件を確保するとは……。やはり私の見立ては間違いなかったのだな」
メルフィナが玉の輿に乗ったみたいに思ってしまったらしい。
生々しい女子の感想止めて……。
「だが私はメルフィナのように金に惚れたんじゃないぞ。私はトウヤの心意気に惚れたんだ」
「いやメルフィナは俺が金持ちになる前から婚約していたよ」
「なんだ……それは残念だ」
ゼル姉さんが帝国からいくら給与や報償をもらっているのかは分からない。だが彼女に射○管理されてしまっている以上、その返礼はしないとならないだろう。
そう、風俗なら浮気に入らないのだ!
そんな馬鹿なことを思っているとグラスランナーのか細い声がする。
「あの~、ご主人様、ボクは何をすれば……」
「ああ、ゼーコック親子に復讐してくれればいい。やり方はキミに任せる」
ゼル姉さんがお金の話を持ち出すから、彼? 彼女? のことをすっかり忘れていた。
難しいようなら、俺たちに矢を放ったように攪乱してくれるだけでも十分だ。
「分かりました! 自己紹介が遅れました。ボクの名前はレイス、あの女狐に復讐する機会をお与えくださっただけじゃなく、報酬までいただけるなんて……このご恩は仕事の成果を以てお返ししたいと思います」
レイスは俺たちにぺこりと丁寧に頭を下げていた。
これから面白いことになりそうだと思っていたら、ゼル姉さんはレイスのバックを取って……。
ふにっ、ふにっ。
「ちゃんと確かめておかないとな!」
「なななななっ、なにをっ!?」
がっつり胸元を揉んでいた。
いや、俺もレイスが男子なのか、女子なのか気になったけど、やり過ぎだろ~! と思いつつも、いいぞもっとやれ、とゼル姉さんを応援してしまっていた。
―――――――――あとがき――――――――――
作者、ZOZOなんてオシャンティなファッションサイトとはご無縁だったのですが登録してしまいました。何故なら、ZOZO限定の美プラが抽選販売されるからなのです! 当たるのか、当たらないのか……当たらなかったら、会員登録した意味がない(≧Д≦)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます