第74話 怪我したら貼る物

――――工房の寝室。


「くっ、屈辱だ……」


 俺は儀式の立ち会い人を務めていた。いや立ち会い人、いる?


 そんなツッコミたくなる状況ではあったが、メルフィナはゼル姉さんのビキニアーマーを外そうとしていた。


 俺は幻の秘宝が数十年ぶりに公開されるかのような込み上げる興奮が隠し切れず、鼓動は高鳴り鼻息が思わず荒くなる。


 い、いやここは紳士であるべきだ。


 メルフィナはまるで令嬢の服を脱がすメイドかのように淡々とゼル姉さんのビキニアーマーの紐を解いているが、当のゼル姉さんはいつもの勝ち気な言動はどこへやら、ただ顔を赤くして恥じらうばかりだった。


「余計な真似をするな! 腐っても元帝国四魔将だ! 武具を脱ぐくらい自分でできる、それくらい……」


 ゼル姉さんはドンとメルフィナを突き飛ばした。


 これって、俺の前で生着替えじゃないか!?


 鉄甲に臑当を除くとほぼ水着ぐらい素肌を晒しているゼル姉さんだったが、トップスを脱ぐのは相当抵抗があるらしく、瞳はぐる目になり、脱ぐのにもたついていた。


「私は戦士だ……私は戦士だ……。男に裸を見られたくらいでは狼狽えない……はわわわわわ……」


 紐が外れてしまったビキニアーマーのトップスを両手で抱えるようにして、保護していた。狼狽えないと独り言で言っているのだが、彼女はどう見ても狼狽えている。


「まだですか? 早くしないと……」

「わ、分かっているっ! 私の裸体を見て驚くなよ!」


 ゼル姉さんはメルフィナに煽られたことで俺から見られないように背を向けていたのだが、わざわざ俺の正面を向いてしまった。


「ふ、ふわぁぁぁぁっ!?」


 俺と目があったゼル姉さんはリンゴ飴のように顔を赤く染めてしまう。


 お姉さんキャラなのにメルフィナを越える初心うぶさ加減に庇護欲みたいな気持ちが生まれそうだ。


「ぬ、脱ぐぞ!」


 覚悟を決めたゼル姉さんはビキニアーマーをテーブルクロス引きの如く、素早く引き抜いた。ビキニアーマーから手ブラに変わったが、当のゼル姉さんは羞恥の極致のようで全身を真っ赤にさせていた。


 普段はあんなに勝ち気でお馬鹿なキャラなのに、ただビキニアーマーを脱ぐというだけで、なんというエロさと初々しさなんだろう……。


「み……見たいのか!?」


 あろうことか、俺はゼル姉さんの肢体に釘付けになってしまっていたようで、俺のいやらしい視線に気づいた彼女は上目づかいで訊ねてくる。


 見たい!


 欲望に素直に従いストレートに答えたいところだが、俺には無理だった。何故ならメルフィナが俺たちを見ているから……。


 目を細めて微笑みを湛えていたメルフィナだったが、ゼル姉さんは嘲笑されたと思ったのか、メルフィナに対抗心を燃やしてアンダーの紐にまで手をかけた。


「わ、笑いおって! 戦士は素肌を男に見られても気高さに傷はつかんのだ!」

「えっ!?」


 メルフィナに投げつけるようにアンダーを脱いだゼル姉さん。あまりの大胆さに俺は驚いたのだが、メルフィナは落ち着いている。



 絆創膏!?



「どうだ! 武人はいつも備えを怠らないのだ」


 腰に手を当て胸を張ったゼル姉さんだか、大事なところ、三ヶ所に貼られており、ちょっとはみ出ていて逆にエロさを増してしまっていた。


 胸は横向きに、筋は縦向きに貼るという抜かりのなさに驚くばかりだ……。


 俺は隣にいるメルフィナに問い質した。一応ゼル姉さんに聞こえないように、メルフィナの耳元で。


「まさかメルフィナが絆創膏をゼルに渡したの!?」

「はい! 旦那さまの家の蔵にあった本にあのようにしている絵がありましたので!」


 間違いない! 乳首当てゲームに負け続けたヒロインがニップレス代わりに絆創膏を貼るという俺秘蔵のエロ漫画を見てしまったようだ。


 謎のエルフの気づかいを受けて、自分はエロくないと思っているゼル姉さんだった。


 メルフィナがゼル姉さんに首輪をつけて「お散歩に行きましょう」なんて言い出さないことを願うばかりだった。


―――――――――あとがき――――――――――

コトブキヤ……ホント恐ろしい子!

今月にロリの予約を開始したかと思えば、17日にはソフィエラという下乳小悪魔を召喚しようとしているではないですか。

おかげで作者のインセンティブは搾取し続けるのでありますよ(いいぞ、もっとやれ!)

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