第66話 魔剣の打ち直し

 決して生ビキニアーマーが欲しかったわけじゃない……。困っている人を助けたかったんだ……。


 も、もしメルフィナがお姉さんの身につけているビキニアーマーを身につけたりなんかしたら、想像するだけで前屈みになってしまいそう。


「それはいらない……。俺はその折れた剣に興味があるだけだ!」

「なななななななな、なんだとっ!?」


 メルフィナがいるというのにお姉さんの脱ぎたてビキニアーマーを受け取るなど言語道断、問題無用、煩悩退散である。


 お、俺はお姉さんのビキニアーマーが欲しいんじゃなく、あくまでメルフィナに身につけてもらいたいだけなんだ!


「なんて奴だ……。私のビキニアーマーが要らないという男がこの世に存在していたなど信じられん……。他の男どもは盗もうとまでするというのに……」


 俺が断るとお姉さんは拳を強く握り、わなわなと

小刻みに震るえていた。


 しまった……。


 どうやら俺は彼女のプライドを傷つけてしまったらしい。もうちょっとオブラートに包んだ物言いの方が良かったかと思ったときだった。


 お姉さんは俺の両肩に手を置き、真剣な目で見てきた。


「旦那さまっ!」


 メルフィナが俺の身を案じるが、時すでに遅し。


「気に入った。ビキニアーマーだけじゃなく、私のすべてを貴様に捧げようと思う」

「は?」


「我が婿として、帝国へ連れ帰る。さすれば私はメルフィナにも復讐ができて、一石二鳥! くくく、メルフィナ! 貴様はこの者が大事なのであろう? 恋仲なのであろう?」

「なんて卑怯で恐ろしい戦法を編み出すのっ!?」


 お姉さんが俺を誘拐しようとしていたことにムンクの叫びのような顔になり、困惑している。


「はははは! やったぞ! 私はメルフィナの男を奪ってやるのだ! ゴフッ……こんな、うれし……いこと……が……」


 さすがにここで無様に攫われるわけにもいかず、女の子に暴力を振るうのは憚られたが、メルフィナと離れ離れになるくらいなら、俺は手をあげる方を選んだ。


【次元無双流体術、腹パン】


 なんの捻りもない技名だが、俺が考えたものじゃないんだから許してほしい。お姉さんの生身のお腹に俺の拳がめり込む。


「かはっ……ま、まさか私を一撃で倒す……とは……益々……気に……入った……」

「俺が強かったわけじゃない。ただお姉さんは油断していただけだ」


 倒れ込んでくる彼女を抱え、衛生担当の騎士に介抱をお願いしていた。



――――王都の工房。


 お姉さんを捕らえ、メルフィナたちと共に工房へ戻ってきた。


 作業台の上に折れた剣の包みを解いて、お留守番をしてくれていたジュリに見せる。


「ジュリ、この剣を打ち直してやりたんだけど、どう?」

「強度はトウヤのタチに遥かに劣る。けど……」


 西洋剣に関してはジュリの方が俺より詳しい。そんな彼女が言い淀んだ。


「けど、どうしたの?」

「強い魔力を秘めている。魔法の使えない私でも分かるくらい強いものを感じる……」


 メルフィナが王宮に報告に行ってるので、ソファに腰掛け長い足で頬をかいていたセルフィーヌに仕方なく訊ねてみる。


「セルフィーヌはなにか知ってる?」

「ああ、それね……私もよく分かんないんだけど、魔力を吸収すると増幅してまとわせることができるみたい。私からすれば、ただのおもちゃみたいなもんだけど!」


 魔法系のセルフィーヌからしたら物理系の人間の使う魔法なんて大したことないんだろう。ゼルのマウントを取り、ご満悦のセルフィーヌは放っておいて、俺は検証を始めた。


「エルエスタ・ア・フォン」


 炎系魔法で最弱の威力のものを唱える。



 キュオーーーーーン♪



 俺が炎系の魔法を折れた剣に向かって放つと炎は剣に吸収されるかのように消えてしまう。


「なんにも起こらないぞ」

「もうちょっと待ってみてよ。えっちでもせっかちな男は嫌われるし」

「今晩のパリピーターン抜きな」

「トウヤの性欲抜いてあげるからお菓子ください」


 なんてやり取りをしているとブレイド剣身フラーに刻まれたルーン文字のようなものが輝き始めた。


「そろそろかしら」


 セルフィーヌが魔法を唱えると折れた剣の周りに透明なドームのような覆いが現れる。それと同時に青光りしていた文字は赤く変化して……。



 プップップップップップッ……ブーーーーッ!



 ボンッ!!! という轟音と共にドーム内で爆発していた。


「私の防御壁クリスタルティアーズがなければ、工房が吹っ飛ぶどころか、あんたたちは死んでたかもね!」


 セルフィーヌはパリピーターンをかじりながら、けたけた笑っていたが冗談じゃない。ランタンくらいの炎になるように調整したはずが工房を吹っ飛ばすとか……。


 防御壁が解除されると俺は焼床ばさみで折れた剣を掴んでまじまじ見つめた。


「よ、よく分からないが、とても不思議な金属であることは分かる……。この金属の在処を知ってるのか?」

「ブリビン帝国にあるでしょ。詳しいことは分かんないけど、ゼルなら知ってるでしょ!」


 これはお姉さんに再び会って、詳しく聞き出さないといけないようだ。


 俺は休憩用のお菓子として置いておいたパリピーターンを握り締めていた。


―――――――――あとがき――――――――――

作者、再販されたMGギラ・ドーガを買おうとしたんですが、どの通販サイトも売り切れ、見事に転売価格になっちゃってます……。

これがレズン専用機とかなら、まだ分かるんですよ。あれはプレバン限定品だから。

主役機でもライバル機でもない、ただの量産機なのに球数が少ないというのも不思議なことです。

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