第62話 なんでも分かる嫁候補
「先生と結ばれないのなら……、私が死ねばいいんです……」
「ク……クズ男ッ!!!」
前門の日影さん、後門の沖津さん。
日影さんは自身の喉元に短刀を突きつけ、いつでも逝けると覚悟をきめちゃってる……。
「やっぱりあなたって人は最低ですっ!!! 銀髪碧眼のあんなにかわいい彼女がいるというのに、妙子に手を出した上に自殺に追い込もうとするなんて!!!」
沖津さんは俺に銃口を突きつけていた。
誤解すぎる……。
「俺を撃つ前に日影さんを止めてあげて……」
「誰があなたなんかに従うものですか!」
完全にクズ男殺すマン(♀)と化した沖津さんに何を言っても無駄そう。
ああっ!!!
俺の眉間にレーザーのような光が当たる。
あ……これ、避けなきゃ絶対死ぬパターンだ。
「アラバラ・ウス・エラ!」
俺は沖津さんの持つ拳銃に向かって、氷柱を放っていた。それと同時に日影さんの両手を握り、彼女に告げる。
「死んじゃダメだ! 俺がなんとかするから……」
「しぇ……しぇんしぇ……」
手に触れ、言葉をかけると日影さんの前髪の間からどっと涙があふれてくる。
「もし俺のせいで日影さんが命を絶たないといけないようなお家の掟なら、俺がそんなもの壊してやる!」
「あう……あう……あ、ありがとう……しぇんしぇ……」
説得を続けたことで日影さんはようやく短刀を持つ手を緩めたのか、ストンと足下に短刀が落ちた。
一方の沖津さんは拳銃を持って、あたふたしている。拳銃のスライドを引こうとするがびくともしない。
「なんで!? なんで動かない……冷たいっ!」
さらにガチャ、ガチャと音を立て、沖津さんは拳銃のトリガーを引こうとしていたが、動かないようだった。
俺の氷魔法はちゃんと仕事をしてくれたようでハンマー、シアー、トリガーなどの内部パーツを凍らせ、動かないよう固めてくれたらしい。
「仕方ないわ! かくなる上は……」
拳銃を胸のホルスターへ収めると俺の渡した打刀を手に取る。
「自分の打った刀で討たれれば、いいんだわ!」
「先輩……やめて……ください……私の……婚約者に手を出すのは……」
沖津さんが抜刀の構えを取ったときには、俺の隣に日影さんの姿はなく……沖津さんの喉元に抜き身の刀の切っ先が突きつけられていたのだ。
「妙子!? これはなんの真似なの!」
「いくら先輩でも……許せ……ません」
緊迫する二人の様子に目が離せなくなっているたきだった。
ウーーーーーーーーーーーーーーーーーッ♪
正午を知らせるサイレントが村中に響きわたってしまう。
ヤバい!
もう異世界じゃ一週間も過ぎてしまっている。あまりここで悠長なことをしていたら、クローディス王国が崩壊していたなんてことになっていたら大変だ。
「日影さん、俺、このあと急用があるから……ごめん。沖津さんを頼むね」
「はい……先生。先輩は……私に任せて先に行ってください」
日影さんは「先輩、先生の打った刀を私に渡してください」と沖津さんに要求する。応ぜざるを得なかった沖津さんは打刀を日影さんへ渡していた。
それでも俺を逃がすまいと沖津さんが追いかけようとしてくるが、彼女は日影さんにバックを取られる。
日影さんはすかさず、沖津さんを責め立てた。
右手は胸元を鷲掴みし、左手は股間へ伸びる。
「ちょっと! 妙子! どこさわって、あふん……そこに触れちゃぁ……らっ、らめぇぇ!」
「分かりますよ……先輩の弱いところは……すべて……夜な夜な……いじって……慰めてることくらい……知ってますから!」
こ、怖い……。
日影さんに監視されようものなら、自家発のワット数まても把握されてそう。
「に……にげ……あふぅ! おほっ! んほぉーーーーーーっ!!!」
日影さんに捕まった沖津さんは瞳孔がハートマークに変わってしまったのかと思うほど、喘ぎ声を上げてしまっている。
「ありがとう! 戻ってきたら日影さんのご両親のところに行くからね~!」
「不束者ですが……よろしく……お願いいたします」
まさか喘ぎ声をきいた男性と許婚にならないといけない、なんて家訓を持ち出されかねないので、俺は日影さんにお礼を告げるとすぐさま自宅をあとにした。
――――クローディス王国。
ブウォーーーーーーッ!!!
「悪いモンスターは浄化だぁぁ!!!」
背後から襲いかかってきたモンスターに容赦なく、炎の魔法を浴びせる。数秒とせず、すべて消し炭となっていた。
身につけた魔法のおかけで、一人でもすんなりとダンジョンは通過できるようになっていた。さっきもそうだったけど、心なしか魔法の威力が上がって出力調整に気を使う。
師匠が「強い力を得たときは気をつけろ!」と言っていたのはこういうときのことを教えたかったんだろうか?
いやそんなことはないだろう。俺が強いわけない。俺は実質、嘱託捜査官みたいなものなのだから。その代わり週五勤務は免除されているけども。
ダンジョンを抜けると俺はあまりの光景にあ然としてしまった。
「焼き菓子をくれ~、あの焼き菓子を~」
「食べたい……食べたい……」
ゾンビかっ!?
そう警戒したものの、そうではなくとうやら敵国の兵士たちが列をなして、パリピーターンを求めているようだった。
いやこんなに効くかっ!?
―――――――――あとがき――――――――――
作者はにわかで詳しくないのですが、エアガン業界における老舗とされるお店が潰れてしまったようです。いっとき、サバゲのアニメが作られるほど盛り上がっていたようなんですが、あの流行病により業績悪化を招いてしまったようで……。
年々、櫛の歯が抜けるように作家が筆を置くWeb小説界隈もマジでサバイバルです。作者も1日でも長く生き残れるよう頑張りますので、応援していただけるとうれしいです。
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