第61話 逃げるは菓子だが役には……

――――【メルフィナ目線】


 旦那さまと離れ離れになり、私はクローディス王国に戻ってきました。


 寂しい……。


 旦那さまの前では最後に心配させまいと「平気ですから」なんて言ってしまったけれど、しばらくの間、会えない、声も聞けない、温かい手で触れてもくださらない……。


 こんな苦痛に耐えなくちゃいけないなんて!


 いいえ! 私は旦那さまから大役を任されたのです。この程度の苦難に負けていたら、旦那さまと再会したときに笑われちゃいます。それどころか、お仕置きされちゃうかもしれません。


 旦那さまのお仕置き……。



『メルフィナ……なんで俺の言いつけを守れなかったんだい?』

『そ、それは……寂しくて……』

『ふ~ん、確かに泣いちゃってるね』


 旦那さまは私の内股に触れてきて、さすってくるのです。


『ああん……そんなところに触れられちゃうと……声がでちゃうぅぅ……隣には団員もまだいるのにぃ……』

『メルフィナが悪いんだよ。俺はちゃんとお菓子を届けるように言っていたのに……』


『ああっ、旦那しゃまぁぁ……らめ……れすぅ』


 旦那さまの手はどんどん上がってきて、ついにはスカートの中まで入ってきちゃうのです。


『あ~あ、メルフィナがいけない声を出しちゃうから、俺の怪我が再発しちゃったよ。ほらもうこんなに腫れてる。ちゃんと治癒してくれるんでしょ?』

『は、はいぃぃ……』


―――――――――自主規制―――――――――


 特濃ミルクパーって美味しいですよね!


―――――――――自主規制―――――――――


 なぜだか分かりませんが、旦那さまの治癒を終えるたびに私の身体からとろみのある涙がどんどん出てきてしまって……。


『あ~あ、ダメじゃないか。こんなに床を濡らしちゃって』


 私の流した涙はとうとう床にこぼれてしまい、旦那さまに叱られてしまうのです。業を煮やした旦那さまは強硬手段に出てこられます。


『今度は俺がメルフィナの花粉症を治す番みたいだな』

『旦那さま!? 花粉症っていったいぃぃぃん♡』


 突然旦那さまは私の股の間に頭を入れて、涙を拭き取り始めたのです。


 じゅるる!


 拭き取る音を聞いているだけで、なんだか変な気分になってしまって、もう我慢の限界といったところで旦那さまは私に声をかけてきます。


『ダメだ……俺が拭き取ったくらいじゃ、メルフィナの花粉症はちっとも治らない。ちょっと荒療治が必要だな!』


 そうおっしゃると旦那さまは……。


『栓をしたら治ると思う』

『えっ!?』


 私は旦那さまに立ったまま……。


『ああん、旦那さまぁぁ……』



「団長ぉぉ! メルフィナ団長ぉぉ!!!」

「うわぁぁーーーっ!?」


 旦那さまと再会したときに備え、仲好しの妄想に浸っていると、目の前にアンドリューの顔があって思わず、叫んでしまいました。悲しいかな、我に返り旦那さまが側にいらっしゃない現実をつきつけられたのです。


「団長……なんかうなされましたけど、疲れてません?」


 旦那さまとの甘いひととき(妄想)をぶち壊した痴れ者に怒りがふつふつとこみ上げてきそうになりましたが、ここで彼にお仕置きしたところで私の気は晴れそうにありません。


「アンドリュー、準備は整って?」

「もちろんです」


 団員のみんなはいつも着込んでいるミススルの鎧から鎖帷子くさりかたびらのような地味な色合いの軽装へと変えていたのです。


「みんな、ダメだからね。これからしばらくブリビン帝国兵とやりあっちゃ……」

「団長ぉぉ……いいように食料を盗まれるって、なんか悔しくねえっすか?」


「うん……それはそうなんだけど、これはフレッド殿下と旦那さまが決めたことなの。だから、ちゃんと逃げないとダメなんだからね!」


「了解っす! フレッド殿下とトウヤの兄貴が言うことなら、間違いありあせんぜ!」



 ううん……。



 旦那さまは……、


「大丈夫、メルフィナ。俺の言うことは誰にでも簡単にできるお仕事だからね」


 と仰ったんだけど、銀狐騎士団シルバーフォックスは士気がクローディス王国一高いと呼ばれてるくらいだから、逃げるのを最も嫌っているんです。


 いざ食料が奪われるとなったら、彼らは帝国兵を倒しちゃわないか、心配でなりません。


―――――――――あとがき――――――――――

再会前からこの妄想っぷり……ところで刀哉の栓ってなんなんでしょうね?www 清純なメルフィナをえちえちにしてしまった責任は取らないと……。

とりあえず、作者は再会に向けて仲好しシーンに着手します!

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