第43話 ちょろいダークエルフ
――――村の岩戸の中。
俺が考え事をしてしまい足を止めると、メルフィナが気にかけてくれる。
「旦那さま……」
「何者か、分からない。けど俺の人間国宝就任に嫉妬したからって、こんなことをするなんて……だったら優希を無事親子さんに返すために、こんなくだらない勝負、早々につけてやる! メルフィナ、俺はクローディス王国で新しい太刀を打とうと思う。協力してくれるかな?」
「もちろんです! 私も旦那さまのお考えに賛同します」
俺はメルフィナとともに異世界へ戻ったのだが……。
なんだこれ……。
ダンジョンの外へ出た光景が現代に戻る前と一変していた。ダンジョンの前にあった森は焼き払われ、辛うじて燃え残った幹の残骸が無数に見られるだけで一面の景色は黒と灰の世界になっている。
荒廃した森林に人影が見えた。
メルフィナと同じく耳の長い女性、メルフィナよりもボリュミーな胸元はチューブトップに覆われ、下半身はホットパンツという軽装。
大きく違うのは褐色の肌に金色の髪……長い耳には多数のピアス……。耳さえ長くなければ黒ギャルとして都心を歩いていても違和感が仕事しないような出で立ちだった。
「ふ~ん。クローディスにエルフが仕えているって聞いたことがあるけど、あなたのことよね?」
「そうです! 私はクローディス王国銀狐騎士団所属メルフィナ・フォルトナス。あなたは何者なんですか!」
う~ん、メルフィナは良い子ではあるものの駆け引きみたいな物は苦手なようで、ダークエルフの問いに素直に答えてしまう。
まあそんなところが俺がメルフィナに惹かれた理由でもあるんだけど……。
「私? よく聞きなさい! 私はブリビン帝国四魔将が一人、ダークエルフのセルフィーヌ! おまえたちを全員奴隷にしにきたのよ」
相手も似た者同士というか割と素直らしい……。
「奴隷だと!? そんなことさせてたまるか!」
「それよりも私が陛下から言われたお仕事は騎士エルフの側にいる鍛冶師を捕縛することよ! あなた……鍛冶師よね?」
「俺は違う! 俺はただのメルフィナの使い魔だ!!!」
「うそ!?」
「ホント」
「そんな……ど、どこにいるのよ! 噂の凄腕鍛冶師は?」
「さあ?」
「あ~ん、これじゃ無駄足じゃない……どうしよう、どうしよう……陛下から怒られるぅぅ」
ちょ、ちょろい……。
ダークエルフは俺が探しにきた鍛冶師でないとの嘘を真に受けたようで頭を抱えて、困惑しているようだった。
「まあいいわ。メルフィナと言ったかしら? 人間に組するエルフなんて、私は大嫌いなんだからね! 次に会ったときは鍛冶師を連れてきなさい! 私が必ずあなたから奪ってあげる」
「そんなことは絶対にさせません。私の旦那さまは私が守ります!」
バチバチと互いに電気を走らせ一触即発と言った感じの二人だったが、どうも俺はセルフィーヌというダークエルフが憎めないでいる。
「あ~、一つ訊きたいんだがセルフィーヌの仕えている陛下っていうのはどんな人なんだ?」
「えっ? 陛下のこと? 陛下は足が臭くて、口も臭いの。それでね、人使いも荒いし、成果を出しても全然誉めてくれないから嫌になっちゃう。一言で言ってダメ人間ね」
ほらぁ。
敵である俺たちにペラペラと機密をしゃべってしまうような子なんだから……。
「じゃあ陛下というのは人間なんだな」
「そうよ、それになんか文句あるの? あるというならここで消し炭にしてあげるんだから!」
「いや文句というほどのものじゃないんだが、さっきセルフィーヌは人間に組するエルフは大嫌いって言ったよな? じゃあセルフィーヌも人間に仕えているということは自分のことが大嫌いってなると思うんだが、どうだろう?」
「はっ! わ、私が人間に仕えている? しかも大嫌いな人間に。ど、どいうこと? わ、分からない、分からないぃぃ!」
セルフィーヌは跪いて頭を抱えて、混乱していた。メルフィナとは違った意味で素直なセルフィーヌは俺の問いにゲシュタルト崩壊しているようだ。
お馬鹿だが焦土と化した森を見る限り、戦術眼はありそうで侮れない。伏兵を置くための場所がなくなったのだから。
「なあ、メルフィナ。この森を焼き尽くしたのはあのダークエルフがやったと思うか?」
「はい、充分あり得ます。ダークエルフの魔力は私たちより上回る者が多いと聞きます。警戒を怠らない方が良いと思います」
「そっか、なら無駄な交戦は控えて王都に向かう方が良さそうだな」
「さすが旦那さまです。あの驚異的な魔力のダークエルフを混乱させ、戦闘不能に追い込むなんて大賢者さまでもできるものではありません」
誉め過ぎじゃね?
「セルたん悪くないもん。陛下が悪いんだもん」
俺とメルフィナがセルフィーヌの危険性について議論していると幼く舌足らずな声が聞こえてきた。まさか精神がゲシュタルト崩壊して、幼児退行を起こしてしまったのか?
身体は大人、心は子どもになってしまったダークエルフに戸惑い、メルフィナと顔を見合わせた。
「帰りたくない、帰りたくないよぉ!」
手足をじたばたさせて、駄々を捏ねている。このままえっちな身体をした彼女をここに置いておけば、悪い奴らに捕まってあんなことやこんなことを教え込まれてしまうかもしれない。
「じゃあ、俺といっしょに来るか?」
「怖いことしない?」
「しない」
「あいっ!」
思わず頭撫でたくなるような素直な返事に驚いた。メルフィナも幼児退行したとはいえ、敵将を放置しておくわけにもいかず連れて行くことには同意せざるを得なかったみたいだ。
―――――――――あとがき――――――――――
えちいギャルダークエルフを捕まえたw
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