第34話 売られる幼馴染【ざまぁ】

――――翌日。


 ゴンッ!


「判決を言い渡す! アキラ・カンザキを奴隷刑に処す!」


 ざわざわ! ワーッ! ワーッ! ワーッ!


 木槌が打たれ、あきらの刑が確定してしまった。あきらは手枷、足枷に繋がれて奴隷が確定する前から奴隷のような状態にある。白髭を顎に蓄えた裁判長から罪状が言い渡されるとあきらはうなだれた。


 傍聴席からあきらの判決の行方を見守っていたが、ここに来て奴隷らしい奴隷は見たことない。


「メルフィナ、クローディス王国に奴隷制度なんてあるのか? それらしい人たちは街で見かけなかったけど……」


「はい、王国はすでに奴隷制度を廃止しています。ですがそれは身の潔白な人のみに限られます。貴族ですら、罪を犯せば奴隷身分に落とされるのです」


 おお……。


 はい処刑! みたいな感じではないことは救いだが奴隷身分に落ちてしまったら、どうなるんだろう?


 気になって夜も十分寝れそうだったが念のため訊ねてみると、


「まずは隷属の首輪をはめられ、競売にかけられます。被害にあった人たちに資金的な余裕があれば、犯人を買い……落札者が首輪に名前を刻めば文字通り、その者は隷属する他なくなります」


 メルフィナは途中で口を噤んでしまったが、なんとなく奴隷になってしまった者の末路の想像がついてしまったのでそれ以上訊ねるのは止める。


 合法的私的制裁とでも言っていいんだろうか。きっと生き地獄を味わわせられたり、性の捌け口にされたりするんだろう。



 結審したことで、すぐさまあきらは鉄格子の荷台がついた馬車に乗せられていた。


「出せっ! 出せったら! ボクは家畜じゃない! 人間なんだ! こんなことをして、あとで吠え面かいても知らないぞ!」


 馬車が出発するところを見ると俺の脳内にドナドナが再生されてしまう。


「男爵さまに手をあげるなんてなんて奴だ!」

「すぐに断頭台送りでも良かったのに!」

「殺してしまえーーーーっ!!!」


 テレビにゲームにスマホ、動画配信のない世界の娯楽は刑罰を与えられる人を見ることだって聞いたことがある。裁判が行われた教会の前は観衆でごった返しており、あきらは彼ら彼女らから罵声を浴びていた。


「私の大事な旦那さまを罵倒したんです。あの人は罰を受けて当然です!」

「トウヤを馬鹿にしたの? なら死刑だね」

「こればかりはジュリに同意します」


 いや怖い怖い。


 メルフィナとジュリは往生際の悪いあきらを見て、非難している。彼女たちが言うには平民よりも貴族に手をあげるのは重罪であるらしい。しかもビエール男爵はそれなりの人望がある模様。


 それよりも俺は気になることがあった。


「なあ二人とも。あの馬車ってどこに行くんだ?」

「罪人を乗せて、街をぐるりと回ります」

「悪い奴は見せしめにする」


 現代でも悪いことをすると動画で晒されたりするから、異世界の住人を一概に野蛮だとは言えないんだよなぁ……。


 馬車はうれしくない熱狂的なあきらのファン(?)を引き連れ、行ってしまった。なぜかあきらに刑を下す広場には露天が出ており、俺たちはそこで買い食いをする。


 メルフィナがリンゴのような果物を見て、じゅるりと唾を飲み込んでいる。


「みんなで食べよう! おじさん、この赤い果物三つ欲しいんだけど」

「まいどあり!」


 果物を売っていたおじさんに銅貨六枚を渡すと赤い果物を渡された。メルフィナは目をキラキラさせてお礼を伝えてきた。


「旦那さま、ありがとうございます! 私、プルプルの実が大好きなんです!」

「私も嫌いじゃない。好き」


 食べるとシャクっとした噛み応えでリンゴそのもののような気がした。メルフィナは頬が落ちそうって顔をしており、ジュリはパクパク食べて完食してしまっている。


 噴水で手を洗っていると街を一周回って、あきらを乗せた馬車が戻ってくる。馬車はちょうど俺たちがいる前に停車した。


「刀哉っ!? 暇そうに見てるならボクを助けろ! ボクがいなければキミの工房は終わりなんだぞ」

「あきら、それなら心配ご無用だぞ。ちょうど俺の工房がこっちの世界にできて、サクッと一振り打ち上げたところだ」


 ジュリに新作を預けていたが、俺の話を聞いた彼女は背負っていた袋から太刀を取り出し、あきらに見せつけていた。


「うそだっ!!」

「無理に信じなくていいぞ。俺は困らないからな」


 鉄格子にしがみついていて俺に噛みついていたあきらだったが、奴隷オークション担当の衛兵により馬車から引きずり出されていた。


 広場には舞台が設けられ、あの上に断頭台が置かれていてもちっともおかしくないといった雰囲気だ。


 あきらはその舞台へ手枷足枷をはめられたまま上がらされた。オークションの進行役はあきらに対して、低い声で命令する。


「脱げ」

「いやだ! なぜボクが脱がないといけないんだ」

「決まっているだろう、入札者におまえの身体の価値を見てもらうためだ!」

「やっ! やめろぉぉぉーーーー!!!」


 あきらの絶叫虚しく、上着とシャツを従者たちに剥がれ下着だけになり、あきらの丸みを帯びた肢体が露わになる。晒しも外され、ふくよかな乳房を彼女は必死で隠していた。


「男かと思えば、女だったとはなぁ……まあいい。ビエール男爵さまが『おまえの顔など見たくない』と断られたので奴隷オークションを行う。覚悟しておけ」


 男装していたあきらが女と分かったことで観衆はざわめいていたが、司会は構わず大声で叫んだ。


「開始は金貨一枚から! あるか?」


 しーん……。


 あれだけ騒がしかった広場だが司会が入札がないか訊ねるとまったく手が上がらない。


「メルフィナ、競売で買い手が現れないとどうなるんだ?」

「はい、断頭台送りですね」

「は?」


「わざと入札せずに罪人が断頭台送りになることを望んでいるのです。恐らくなんですがビエール男爵さまは街の人たちによく施しをしており、人気が高かったから、なおさらでしょう」


 断罪からの断頭とかかなり笑えない冗談だが、司会は俺がメルフィナから聞いたことをあきらに伝えていた。


「入札がないと死刑だぞ。入札してもらえるようもっと媚びたらどうだ?」

「なっ!? ボクは死刑だなんて聞いてないぞっ!」


 観衆が「死刑だーーーっ!」と叫び始めると、あきらの顔がどんどん蒼白に変わってゆくのが手に取るように分かってしまった。


―――――――――あとがき――――――――――

千束の銃の発売日が決まったぜ! 3月14日ってホワイトデーかな? 

リコリス・リコイル人気と相まって普段エアガンに興味がない方々も買い求めてるような感じです。業界が盛り上がるのでよきよき!!! 同じデトニクスベースのAM.45とヴォーパル・バニーから比べるとやや割高感は否めないものの、昨今の円高を考えると仕方ないのかなと。

作者も初期ロットで入手か未定ですが予約済みです。マルイさんは期間生産と謳っていますが待っていれば、その内供給されていくと思います。つか転売ヤーは滅して欲しい!

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