第31話 捕らえられた幼馴染【ざまぁ】

――――【あきら目線】


「なっ!? 刀哉!! なんでおまえがここに?」

「いや、それはこっちのセリフだよ!」


 無実の罪で捕らえられたボクの前に刀哉がいた。だけどその隣には忌々しいあの女がさも刀哉の恋人のように寄り添っている……。


「ボクは無実だ! あの変態男爵がボクをバカにした。だからあいつの魔の手から逃れるために最低限の抵抗したら、この様だ……」

「あの~あきらの言っていることは本当なんですか?」


 刀哉はボクの言葉を信じようともせずに、あろうことかボクを連行してきた衛兵に事の詳細を訊ねていた。


 なんで幼馴染のボクの言うことを信じないんだ!


 バカ刀哉っ!!!


 衛兵は大げさな身振り手振りで刀哉に語り始めた。


「とんでもない! この者は大罪を犯したのです。かの有名なディルノ・ビエール男爵を公務から遠ざけてしまうほどの傷害を負わせたのですよ」


 衛兵はボクを指差し、語気を荒げて刀哉にあることないこと吹き込んでいる。


「メルフィナはそのビエール男爵って知ってる?」

「はい……ですが……」


 あの狐のように尖った耳をした女が頬を赤らめて、恥ずかしそうな表情で刀哉に答えた。


 なんなの! あの女狐!!!


 かまととぶって、ボクの刀哉にべたべたするとか許されないよ!


「それについては私が答えよう。ビエール男爵はクローディス王国にとって欠かせない外交官で、彼の言語魔法で我々クローディス王国は助けられている。しかし彼が外交官を辞めるとなれば一大事だ」


 イケメンの王子らしき男が刀哉に解説していた。


 魔法? よく分からないけど、急にこの変なヨーロッパの昔みたいなところの話していることが分かるようになったのか……。


 ボクの趣味ではないけど。刀哉はメルフィナと呼ばれた女とひそひそと話しており、終わるとイケメンに伝えた。


「殿下、お言葉ですが、多言語ということでしたら、メルフィナでも精霊を用いれば、問題ないのではありませんか?」


「ビエール男爵は単に言語だけで外交を進めていたのではないんだ。彼と諸外国の外交官の間には切っても切れない縁みたいなものがあり、その友誼によってクローディス王国の平和は保たれていた。そのなんだ裸のお付き合いと言ったらいいのか……」


 刀哉はイケメンの説明に首を傾げていたが、ボクにはイケメンが言いたかったことをすぐに理解できた。


「隣国の外交官は女性だったのですか?」

「いや……そうではないな……」


 刀哉はボクの姿を見て、『あ~、なるほど』みたいな顔をしていた。


 なんだよ! マジムカつくんだよぉぉ!!!



――――回想。


 ボクがあのビエールという貴族に介抱されたときの話だ。


「そなたは美しい! もしよければ私と契約をせぬか? 望むものはすべて買い与えよう」

「契約? なんの話だ! さっさとボクをここから解放しろ」


「解放したら、また傷だらけになっちゃう。私はあなたの傷つくところは見たくないの。契約はね、もちろん私の愛人に決まってるでしょ」


 もしかしてボクが女だってことがこの男にバレたのか!?


 いやだ! こんな変な男に処女を捧げるくらいなら死んだ方がマシだ。こいつは女のボクに興味があるんだ。


 なら取り得る方法はひとつ!


「おまえは頭がおかしいのか? どっからどう見てもボクは男だ! 決して男装の麗人なんかじゃないぞ!!!」


「おほっ! そうなのね! 安心したわ。私ね、あなたが女なんじゃないかと思っていたの。あそこで出会ったのは運命ディスティニー。私とあなたは今宵ひとつになるの」


 キモ髭の男はボクのついた嘘を真に受けると小躍りを始めていた。上着を脱ぎ捨てシャツも脱ぎ、ズボンを下ろすと下着が露わになる。


「も、もしかして、おまえは……!?」

「そう! 私が好きなのはオ・ト・コ! もうあなたみたいなかわいい子は特に好みなの。今夜はたっぷり楽しみましょう!」


 信じられないことにキモ髭はボクの寝ているベッドに上がり込んでくる。


 ヤバい!


 このままではヤられるっ!


 これじゃ刀哉に処女を奪われる前に、ボクのおしりが非処女になってしまう。どうしてボクはこんなところに来てしまったんだと後悔したときだった。


「さあ、早く! 私のおしりにあなたの熱くたぎるモノを入れるのよ! 私のプリティなおしりは最高にセクシーでしょ?」


 キモ髭の男は後ろを向き四つん這いでおしりをふりふりさせながら、ボクを誘ってきていた……。


「こんの! 変態がァァァァァァーーーーー!!」


 ボクは思いきり、キモ髭男のしりにサッカーボールキックを放った。


「アギャーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」


 今だ!


 ボクはスーツとシャツを脱ぎ捨て、大きくなりすぎた胸を隠すために巻いていた晒しを解く。


「おまえはボクを男だと勘違いしているが、ボクは歴とした女だ!!! 間違えるんじゃないっ!」

「なんというおぞましいものを私に見せるのだぁあーーーっ!!!」


「なに逆ギレしてるんだよ! 怒りたいのはこっちだぁあーーーっ!!!」


 ボクは気づくと力の限り、キモ髭男のおしりを蹴りに蹴っていた。


「た、助けてぇぇぇ……」

「ビエールさまっ!!!」


 ボクは怒りに任せて、キモ髭男のしりを蹴っているところを男の従者に見つかり、連行されてこの牢獄に捕らわれてしまったのだ。



 衛兵から詳細な事情を聞いていた刀哉はふむふむと頷いている。一通り聞いたところで刀哉はボクに向かって言い放った。


「いや、あきらが悪いだろ」

「私もそう思います」


 なっ!?


 ボクの愛する刀哉はその隣にいる耳長女に洗脳されてしまっていた。


「刀哉っ! そんな女の言葉に耳を貸すんじゃないっ!!!」

「あきらはそこでしばらく反省した方がいいと思う」


 あっ、あっ、ああーーっ!!!


 刀哉はボクを見捨てて、耳長女と仲むつまじく地下を去っていってしまった……。


 そ、そんなぁぁぁーーーーっ!!!


―――――――――あとがき――――――――――

指揮官氏~! 今日ガチャったらルピーを二体従えてエレグをお出迎えできたですぞ。まさに勝利の女神~!!! メイドプリバティを逃してしまうという悲しみにくれていた作者を癒やしてくれるようなむちむち目隠れエレグたんに満足しておりまする。

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