第28話 脱税、詐欺、パワハラで立件【ざまぁ】
――――【あきら目線】
最近、優希が会社に来ていない。体調不良ってことらしいけど……、入社間もないというのに一週間以上休んでるなんて、彼女の両親は甘やかし過ぎなんじゃないの?
優希は刀哉の弟子を自認するだけあって、そんじょそこらの刀匠よりも優れた技量を持っていたけど、やっぱり刀哉には及ばない。
刀哉が欲しい……。
年商五〇億を誇るボクと刀哉が組めば、一〇〇億も夢じゃないって言うのに……。
刀哉に贋作を作らせれば、バレることはないし。
ホント、刀哉のバカ!!!
ボクの気持ちなんてちっとも分からないとか鈍感とかそんなレベルじゃないよ。刀哉の工房が倒壊してしまったのは、ボクの誘いを無碍に断った天罰なんだ!
ホントいい気味。
銀行から借り入れして、かなり無理して建てた自社ビルだけど、一番高い階にある社長室から人を見下ろしながら飲むコーヒーは実に美味い。
どうせ、しばらくすれば刀哉もボクに頭を下げて、お金を貸してくださいって泣きついてくるんだ。他の刀匠と同じくね。
ボクが刀哉を手にいれたとき、どうしてやろうかとわくわくしながら妄想に浸っていたときだった。
「社長ーーーッ!!! 大変ですっ!!!」
「なんなのうるさいわね」
会計部長がドアのノックも忘れて、社長室に飛び込んできた。だけど部長が次の言葉を発したとき、ボクは凍りついた。
「こ、国税局がぁぁぁーーーッ!」
えっ!?
まさか海外から金を輸入していたことが気づかれたって言うの!?
「当然足止めしてるのよね?」
「は、はいっ! ロビーで……」
「すぐ帳簿ファイルの二から九までを破棄して!」
「でもそれじゃ、顧客情報も……」
「いいから! あなた今すぐクビになりたいの?」
ボクは渋る会計部長の胸ぐらを掴んで、脱税の証拠隠滅を図るよう指示してるときだった。
「はぁっ、はぁっ……。しゃ、社長ぉぉ……警視庁捜査二課の刑事が社長にお聞きしたいことがあると来ています」
「なんですって!?」
営業部長が駆け込んできて、慌てている。
捜二って確か、詐欺の捜査をやって……まさか贋作を本物だって、ネットオークションで流したことがバレたなんてことは……。
だいたいネットオークションなんてもので安く刀剣を手に入れようとする素人に本物なんて、猫に小判、豚に真珠、免許取り立てにスーパーカーってものよ!
そもそも目利きのイロハすら知らない素人に真剣なんて扱えるわけない。私は優れた美術刀剣をそんな彼らから守ったの。それなのに逮捕とか世の中狂ってるのよ!
更に悪いことに人事部長まで駆け込んできて……。
「社長ぉぉぉ!!! 労働基準監督暑が従業員に対するパワハラと長時間労働の件でお話を……と」
まったくどうしろって言うのよ!
「どうしてそんな急に……」
ボクの頭の中でたくさんの警告音が鳴り響いて、まさにクリスマスツリー現象が起こっていた。
優希が休んでいるときに重ねて、こんなことが起こるとかって、どういうこと?
まさか……まさか……あの子が疫病神と貧乏神をうちに呼び込んだって言うの!?
マズい……。
このままだと会社どころか、ボクまで終わる!
「あなたたち! なんとしても招かれざる客を阻止しなさい! できないなんて答えたたら、いますぐクビだからね」
「社長はとごへ?」
「まさか私たちを置いて逃亡とか……」
「そんなの許されるはずが……ない」
ゾンビのように両手を伸ばし、ゆっくりと私に迫る社員たちにデスクの引き出しから鍵を取り出し、ロッカーに入っていた猟銃を持つと社員たちに突きつけた。
「うるさいわね! 死にたくなかったらボクを黙って行かせなさいっ!!!」
「ひいっ!?」
「撃たないでっ!」
「私には小さな子どもがいるんですっ!」
「じゃあ、さっさとやることやんなさいよ。ホント無能なんだから!」
猟銃のスリングを肩にかけ背負うとボクは非常階段を降りた。これから雪崩込んでくるであろう国家の犬どもは知らないだろうが、こんなこともあろうかと隣にある旧社屋に通じる隠し通路を用意しておいたのだ。
やはりボクは天才だ。
有事に備え、万全を期す。会社経営者として最善を尽くす。これが年商五〇億の実力さ。
地下ガレージ付近にいた若い社員に言付けすると彼はよろこんで引き受けてくれた。刀哉と違って素直でよろしい。こういう社員でいいんだよ、こういう社員で。
馬鹿だけどな!
ボクは国道を走り、都心を離れた。するとラジオのニュースから流れてくるボクの近況。
『神崎あきら容疑者は猟銃を持ったまま逃走中、赤い高級車に乗り成田方面へ向かったとされています』
危機的状況にあるにも拘らず、本当に笑いが止まらなくなる。天がボクを見放さなかったことに。
一時間半ほど車を走らせると村山村に到着した。ボクが緊急手配されるとも知らずにこの村は長閑なもの。そのまま田園風景の広がる道を進み、真っ直ぐ刀哉の工房跡に向かった。
なにごともなく工房跡に到着したが好都合なことに刀哉の姿は見当たらない。
社畜営業たちご用達のライトバンを庭へ無造作に停める。エンジンを止めるまで聞いていたラジオからはボクの身代わりになった社員を確保したという情報は流れてきていない。
馬鹿どもめ。
まんまとボクの撒いたデコイにひっかかるなんてな。若い社員に跳ね馬を貸してあげるから遊んできてって言ったら、大喜びでダッシュして行ったから。
スーパー経営者であるこのボクが、わざわざ都心から
刀哉をストーキングして、分かった村の岩戸が崩れてできた風穴……。あの風穴のとこかで、どこの国とも、いつの時代とも知れぬ金貨が見つかったに違いない。
「ボクも必ず見つけて、再起を図ってやる!」
中はかなり暗いのでヘルメットについたライトを点灯させる。
「へ~、この中、こんな風になってるんだ」
ボクが入ってきたことでコウモリたちがキキーと騒ぎ立て暴れていたが、不思議と風穴の出入口付近へは逃げていかない。
「なんだあれ?」
まあ昼間だから、ともっともらしい理由をつけて進んでいると前から、見たこともないような緑色の肌をした子どものような見た目をした生き物が集団で歩いてきていた。
―――――――――あとがき――――――――――
あきらがゴブリンからリョナァァァーーーッ!!!
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