第25話 同衾

 ランタンの優しい光に照らされ、メルフィナの白く透き通るような美しい肌がただただ眩しい。


「あ……えっと……」


 ブクブクブク……。


 気恥ずかしさの余り顔半分を湯船に沈めて、しまった。


「私たちは婚約者同士……なにも遠慮することはないのではないでしょうか?」

「そ、それはそうなんだけど……」


 ハラリとタイル張りの床に落ちたバスタオル……。


 あろうことかメルフィナは巻いていたバスタオルを外してしまった。慌てて後ろを向いた俺にぴたりと肌を重ねてきて……、


「旦那さまの背中……あったかい」


 感覚の鈍い背中ですら、感じ取れるメルフィナの柔らかなたわわが触れた気持ち良さに脳みそが溶けそうになる。


 エルフじゃなくて、人魚かな?


 水浴びが大好きなメルフィナは、いつも脱ぐときに恥ずかしそうにしているが水に浸かるとたちまち大胆になるようだ。


 俺の心臓がバクバクと脈打ち、今にも破裂しそうなヤバい音を立てていたが、メルフィナは落ち着き払っている、というよりも寂しげだった。


「産みの両親とは離れ離れになり、育ての両親も他界してしまいました……私を受け入れてくださる旦那さまの優しさに触れていると、ついこうやって甘えたくなります」


 いくら婚約者とはいえ、出会って間もないのに肌を重ねるとかいけないとメルフィナに伝えようと思ったが、彼女の寂しさから来るものだと知り、口を噤んだ。


「はは、俺の背中はもうメルフィナ専用だな」

「はい、ありがとうございます……寂しくなったら、また旦那さまに甘えていいですか?」

「いつでも甘えたくなったらおいで」


 ツラい目に遭ったメルフィナの身の上話を聞いていると興奮気味だった俺の心はすっかり落ち着いていた。


 しかし……、その静寂はすぐに波紋を立てる。


「旦那さまの大きな背中、私に洗わせてください」


 メルフィナはそう言ったのだが、石けんを手のひらの上で泡立て始める。タオルにつけるのか、はたまた俺の肌に塗るのか、どちらかなのだろうと思っていた。


 自らの上半身に石けんを塗ると、甘い吐息混じりにたわわに実った胸元をまさぐり始めていた。


「なっ!?」


 まさかセルフで気持ち良くなっちゃったのか!? と危惧していたら、背中ににゅるんとした感触が走る。


「アンドレアが男の子の背中の汚れはおっぱいを使って、洗うと垢が良く落ちると教えてくれました。不慣れですがやってみますね」


 あの人はうぶなメルフィナになんてけしからんことを教えてるんだ!


 いいぞ! もっと教えてあげてください……。


 メルフィナのおっぱい洗いの前に俺の理性は完敗していた。


 せっかく収まっていた腫れが再発、タオルで隠していたが、俺を過剰に心配するメルフィナが見逃すはずがない。


 メルフィナは後ろから俺の腫れ物を見つめて、悲しそうな目をしていた。


「アンドレアに旦那さまの慢性的な腫れが治まらないと相談したんです。すると彼女は言っていました。『方法はあるけどうぶなメルフィナには難しいかも』って馬鹿にするんです。でも私だって頑張れると思います!」


 メルフィナは俺に立ち上がるように促すと、彼女は膝立ちになる。石けんがついたままのメルフィナの優しさに包まれた俺。



―――――――――自主規制――――――――――


 作者はチン黙の呪いをかけられてしまった!

 本当は読者さまにこの熱くたぎる想いを伝えたい……だけど書いてしまうと運営さまからお叱りを受けてしまいます。ごめんなさいm(_ _)m


―――――――――自主規制――――――――――


「良かったです、旦那さまの腫れが収まって」

「あ、うん……」


 メルフィナのたわわに包まれ、賢者と化した俺は思考した。


 果たしてこれで良かったのかと。


 だが俺に何物にも代えがたい幸福と快楽を与えてくれたメルフィナの髪と耳を撫で、俺は彼女に感謝の意を表していた。



 お風呂から上がった俺の前に大問題が発生する。


 団長室の隣にある控え室のベッドはメルフィナが仮眠を取るためだけにあるので、当然お一人さま専用って感じ。


「俺は団長室のソファで休むからメルフィナはベッドで休んで」


 俺が踵を返して、団長室に戻ろうとすると彼女は俺の袖を掴んだ。


「帰っちゃやです……」

「いや帰るなんてことは……」


 銀髪エルフはネグリジェ姿で俺に懇願してくる。


 そう言えばエイシアが退勤するときに俺に耳打ちしていた。


『メルフィナ団長をお願いします』


 そのときは二つ返事で了解したのだが……。


「ひとりじゃ、夜眠れません。その……旦那さまに添い寝を……して……ほしいのです」


 帰宅する際のエイシアの顔が晴れやかだったのはメルフィナの夜のお守りをいつもしていたからのかもしれない。


 甘えん坊エルフと俺は同衾することになった。


「おやすみ、メルフィナ」

「おやすみなさい、旦那さま」


 ゆっくりとメルフィナの灯した精霊の炎が消えてゆく。


 ベッドに俺とメルフィナの身体はどうにかこうにか収まった。まさかこんなに早く初夜を迎えてしまうなんて……。


 って違うな。


 メルフィナはトラウマを抱えていて、ひとりで寝れないだけだ。


 背を向けて横寝しているとメルフィナが抱きついてくる。


「お父しゃん……お母しゃん……」


 まぶたに涙を浮かべていたメルフィナに邪な思いなど湧くはずもなく、彼女が目を覚ましたときに安心できるよう隣で寄り添うことが婚約者の……役目のように思えた。


 というよりこりゃ保護者だな。


 恐らく幼い頃に生き別れになったであろうメルフィナの髪を撫で、俺はゆっくりと異世界での初めての眠りについた。



 翌日。


 テレ~レッテッテン♪


【ゆうべはおたのしみでしたね】


 なんてことはなかったのだが……。


 洗面台で顔を洗っていると鏡におかしなものが映っていた。なぜか俺の身体中、痣だらけなのだ。ぽつぽつと首筋を中心に胸元まで。


 いやキスマークなんてことは……。


 メルフィナに俺の身体にキスしただろ? なんて訊けるはずもなく、なんだかもやもやしてしまった。


 その容疑者と思しきメルフィナは天使のような笑顔を浮かべてすやすやと眠っている。泣き顔から安らかな表情に変わってくれただけでも良しとしよう。


 さすがにこのまま作業するわけにもいかないので、シャツの襟を立てて目立たないように団長室で思案していた。


 騎士たちが扱いやすい刀はどういう形状が最適だろうか?


 ドキドキしすぎて寝不足気味だったからか、腕組みしているとうつらうつらと俺は首を振ってしまっていた。


「団長! 大変……」

「エイシア、おはよう!」

「トウヤさま! 団長は?」

「まだ寝てるよ」


「すぐに起さないと! 王宮からすぐ二人に来るよう知らせが参ったのです」


 普段冷静沈着を絵に描いたようなエイシアがあたふたしているところを見ると王宮からの招集というのはよっぽどのことらしかった。


―――――――――あとがき――――――――――

エルフから所有権のマーキングされちゃいましたので、もう逃げられそうにないですねw

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