第22話 お詫び

「なんだよ、これ……」


 クローディス金貨を目ざとく見つけたあきらは俺より先に拾おうとするが、そうは問屋が卸さない。


「あっ! マヌルネコが歩いてる!!!」

「どこ!? どこっ!? どこなのっ、ネコちゃん!?」


 俺はあらぬ方向を指差すとあきらは釣られて、指差した方向を見ていた。


「日本にマヌルネコが居るわけないだろ」


 金貨をポケットに仕舞い終えた俺はあきらに言い放っておいた。


「だ、騙したなぁぁーーーーっ!!!」


 あきらは俺にまんまとしてやられたことに怒りを露わにするが、俺からしたら……、


 おまいう?


 そのものだ。


 俺を散々こけにしておいて、これだからあきらは嫌だ。しかもかわいいもふもふに目がないとか……。


「とにかくあきらには関係ないだろ」

「刀哉がボクに隠し事をするなんて、許されないよ!」

「じゃあ、あきらの通帳の暗証番号を俺に教えてくれ」


「ダメ」


 こいつ!


「用事がないなら帰れよ。俺は忙しいんだ」

「さっきのは金貨だろ。見せろよ! なんで貧乏な刀哉がそんな物持ってるんだ、おかしいだろ。どこで盗んできたんだ!」


 あきらは俺の持っているバッグを掴むとぐいぐいと引っ張ってきて、俺もそれに抵抗するものだから綱引きのようになってしまう。


 ブチッ! と紐が切れてしまい、鞄の中いっぱいに入っていた金貨が地面に散乱していた。


「なんなんだよ、これ……」


 あきらは金貨をひとつ掴むとじっと見つめる。


「ホンモノじゃないか!? 刀哉、おまえ……どこから盗んできたんだ! いくら切羽詰まったからって、強盗するなんて見損なったぞ! ボクが付き添ってやるから、早く中須賀のところへ自首しに行くんだ!!!」


 本当にややこしい奴に見つかってしまった。


「これは俺の刀が売れた正当な報酬だ。おまえも見ただろ、あのバイヤーの女の子を。これらは、その子が支払ってくれた代金だ」

「ウソだっ!!! 刀哉の刀をこんな大金で買えるわけがないっ!!!」


 古物商もやってるあきらの見立てはかなり正確な方だろう。


「別に信じなくていいよ」


 俺はこぼれた金貨をすべて拾い集めると最後にあきらが摘まんでいた金貨を奪い返すと、あきらはとある提案してきた。


「ボクが買い取ってやる。どうせ換金できないで困ってるんだろ?」

「おまえの世話にはならないよ」

「なんでだっ!?」


「だって『ボクの傘下に入るのが条件だよ』とか言うんだろ?」

「言う!」


 つくづくブレない奴だ……。


 呆れてスマホに目をやるとヤバい時刻になってしまっていた。一時間遅れただけでメルフィナを一日もダンジョンで待たせてしまうことになる。


「俺はあの子との新規の仕事が入ってるんだ。じゃあな」

「えっ?」


 あきらとの茶番劇を終幕させ蔵から太刀を持ち出すとあいさつを告げて、その場を立ち去った。



 裏山を駆け抜ける際に、文化庁の人たちとのやり取りを思い出していた。


『文化庁の援助で工房を再建も検討していますので、是非ご一考願います』


 俺より年上の人から先生なんて呼ばれるとなんだか照れるというか、思い出しただけでもむず痒い。


 それにしてもあの目つきの鋭い男だ。文化庁の役人には到底思えなかった。人を見た目で判断するのはいけないが人を殺めていそうな寒気を覚えてしまう。


 師匠が戦闘モードになったときに纏う空気とよく似ている。ただの俺の思い過ごしかもしれないが、もしもってことがある。


 それにあの男が口にした斬魔刀のことは、あの場ではとぼけたが、実は親父から聞かされ知っていた。


『いいか、刀哉。俺たちの作る刀はただの刀じゃねえんだ。破邪顕正と言って禍々しい物を斬るためにある。その力を持った太刀にご先祖さまたちは斬魔刀って名付けたんだな』


『よく分かんな~い』

『はは、まあいずれ分かるようになる』


 と言ってもそれくらいだ。


 結局日本円に換金することは叶わなかったが、もし金貨をすべて換金したら、八〇億にもなってしまう。


 だけどクローディス王国から持ち帰った金貨が見つかってしまうと密輸を疑われて、工房の再建どころではない。それを知ってて、あきらの奴は俺の足下を見て、一千万なら買い取ってやってもいいとか、ふざけんな! だ。



――――村の岩戸。


「ああっ……旦那さま……」


 待ち合わせぴったりに風穴に入るとメルフィナが待っていてくれた。俺にとっては数時間前に分かれたばかりなんだが、彼女は俺と一週間離れていたことで涙目になってしまっている。


 俺の姿を見た途端走り込んできて、抱きついてきたメルフィナを受け止める。豊かなプロポーションなのに受け止めた感じはふわりとしていて、儚さを覚えてしまった。


「ただいま」

「お帰りなさい」


 ダンジョンの中にあるのに自宅に帰ってきたような感覚。


「旦那さま、大変です。ジュリさんと鍛冶ギルド長さんが騎士団に毎日来られてきて、旦那さまを出せと……」

「なんだって!? とりあえず、先を急ごう!」

「はい」



――――団長室。


 メルフィナと俺がソファーに座って緊張しながら、ジュリたちの入室を待った。


 あそこでは、ジュリのあそこにバナナシュートを決めておくのが正解だったのか?


 そんな思いが頭の中を駆け巡ってしまったが、俺を慕ってくれるメルフィナのことを考えるとやっぱり無理。


 そんなことを思っていると秘書官のエイシアから声がかかる。


「団長、ドグマさまとジュリさまがいらっしゃいました」


 メルフィナが入室を促すと髭もじゃで低身長といういかにもドワーフ然とした壮年の男性とジュリが入ってきた。ジュリの表情はどこかシュンとして落ち込んでいる。


「ドグマ鍛冶ギル……」


 あいさつをしようとメルフィナが立ち上がったので、俺もそれに倣おうとしたときだった。


「申し訳ありませんでしたーーーーーーッ!!!」


 ギルド長はいきなり跪いて頭を床にこすりつけて謝罪していた。彼はジュリの頭を押さえて同じように謝らせている。


 てっきり俺が彼女に恥をかかせたので、二人で怒鳴り込んでくるのかと思っていたので意外だった。


 でもなんで二人は謝っているのか、分からない……。


―――――――――あとがき――――――――――

昨年くらいから考えてた作品があるんです。


■タイトル

妊娠するまで帰れません! 無人島で隠キャ童貞サバイバルオタの俺がS級美少女たちと少子化対策することになった


■キャッチコピー

飯が欲しい? なら俺の子種をくれてやる!


っていうの。どう考えても作品BANどころか、垢BANまっしぐなら未来しかない……orz

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