第12話 やっぱり治癒されちゃう
「うぐっ!?」
俺にだけ見えるような形で胸元を見せてきたメルフィナだったが、谷間どころか輪っかがうっすらと……。
「大変です! 旦那さまの股間がまた腫れちゃってます。今すぐ治癒しますので、中へ……」
「メルフィナっ、ダメだったら!」
彼女は俺の手を引き、試着室へと引きずり込もうとする。
「旦那さま、痛いところがあればいつでも私に言ってください。私と旦那さまの間じゃないですか、なにも遠慮することはないんです」
ああっ! なんと悩ましいことか!!!
メルフィナは俺を治癒したいというビュアピュアな想いで言ってくれているのに、俺は性的興奮を抑えられないでいる。
中に入るとメルフィナはメイド姿になっていた。選んだブラウスのサイズが小さく胸元がはだけていること以外、おかしなところは見当たらない。
「まだお怪我が完治されてない旦那さまを放っておいて、私だけはしゃぐなんて、自分が恥ずかしいです……」
「そんなこと気にしなくていいから!」
目に涙を浮かべていることから、本気で俺のことを心配してくれているらしい。だけどメルフィナの
興奮のあまり俺がお猿さん程度の思考力に落ちてしまっていると、メルフィナは涙ながらに俺の前でしゃがみこんでズボンをずり下げて、下着の上から触診していた。
「こんなに腫れちゃうなんて、痛くないですか?」
「あうっ、痛くは……ないよっ」
むしろ気持ちよくて変な声が出る。
「そんな我慢されなくてもいいんです。私がすぐに癒やしてあげますから」
断ると断ったで、またメルフィナが悲しい表情をするので、上目遣いで俺を見てくる彼女に治癒をお願いした。
お猿脳で考えてもメルフィナの治癒をうまく断れる理由が思いつかず、賢者の知恵に預かろうと思ったからだ。
―――――――――自主規制―――――――――
カルピスの原液を飲んだら、咽せるよね。
―――――――――自主規制―――――――――
「良かったです……旦那さまの腫れが引いて……」
「ありがとう、メルフィナ」
とってもえっちだよ、メルフィナ。
賢者と化した俺はこの境遇を甘受……いや真っ正面から受け止めることにした。そうメルフィナは俺の邪悪な心を鎮めるために身を呈して、ご奉仕してくれているのだ。
悪いのはメルフィナじゃない。
俺なのだ!
聖女とも言うべき、メルフィナが俺を助けてくれている。彼女の献身を受け止め、自分の性欲から逃げずに向かい合うべきなのだ。
ただメルフィナの大事なところを見たと伝えただけで、あの恥ずかしがり方をしたんだ。おいそれとと彼女に真実を打ち明けることを考えると気が重いな。
とりあえず、メルフィナには近い内にこれはえっちな行為なんだよ、と話し合う機会をつくりたい……。
メルフィナは他にもマネキンの着ていた服装に目を止める。
「どうしたの?」
「……」
俺の問いにメルフィナは無言で答えない。だが手で抱えていたメイド服をキュッと掴んで、ふるふると首を横に振っていた。
「そっか、あの服がほしいんだね」
「そんな……旦那さま……」
遠慮がちなメルフィナだったが、俺は構わず近くにいた店員さんに声をかけた。
「すみませ~ん」
「は~い、ただいま」
「この上下なんですけど、彼女に合う物をお願いします」
「かしこまりました」
メルフィナのサイズに合う物を選んでもらい、試着室から着替えて出てきたメルフィナは俺に晴れ姿を披露した。
「ど、どうでしょう? ……似合ってますか?」
「……」
今度は俺が無言になる。
親切な店員さんでメルフィナに色々とアドバイスをしてくれ、なんと髪型までそれらしくしてくれたのだ。
メルフィナが欲しがった服はピンクのブラウスと黒のワンピース、ともにフリルがついていてフェミニンな感じ。所謂地雷系ファンションで店員さんはリボンでメルフィナをツインテールにしてくれていたのだ。
これで彼女の髪色がピンクだったら、ヤンデレまっしぐらで死ぬまで愛され尽くすことだろう。
なんて馬鹿な妄想をしながら、買い物かごに地雷系の服を追加する。
ちなみに……「ツインテールも彼女さんにとってもお似合いですよ」と店員さんにリボンもおすすめされてかごに入ってしまった。実に商売がうまい……。
適性なサイズのブラウスに選び直したうえで、治癒のしてもらったときにメルフィナが着ていたサイズのブラウスもお買い上げしておいた。
彼女はこぼしてなかったと思うが、もしものことを考えたらその選択しかなかった。さすがにブラックライトを当てられでもしたら、終わりだから。
「こんなにいっぱい買っていただいて、なんとお礼を申し上げたら……」
「いいんだよ、それくらい。むしろ俺の方がお礼を言いたいくらいだ」
お手頃価格のしのむらでこんなに喜んでもらえるなんて思ってもみなかった。
メルフィナみたいなかわいい子に治癒……みたいなことを専門店に頼んで田舎まで来てもらうことを考えたら、服なんて安いものだ。どんな子が来てもこんな田舎じゃ、申し訳なくてチェンジもできないだろうし。
さすがに優希がいた手前、頼んだことはなかったけど。
メルフィナのおかげで夢見心地を味わわせてもらっていたが、家に戻ると自分がいかに現実逃避していたのか思い知らされた。
「はあ……」
住むのは蔵を片づければいいが、工房が壊れてしまった以上、生活が成り立たない。そう思うと深いため息が漏れた。
「旦那さま……どうされたのですか?」
「いや俺の生活の糧を得ていた工房が潰れてしまって、どうしようかなって頭を抱えてるんだ」
太刀は滅ーっ多に売れることはないが、細々とやってる包丁で糧を得ていた。だけどそれも終わりだ。
「旦那さまの太刀というサーベルは売れないのですか?」
「う~ん、売れないね……」
「おかしいです! こんなにも素晴らしい旦那さまの武器が売れないなんて……皆さん観る目がありません」
メルフィナは憤慨していたが、白兵戦が行われなくなった現代で俺の太刀は売れなくても当然と言えた。ただ爺ちゃん、親父と代々受け継がれてきた太刀作りを継承したに過ぎない。
倒壊した家屋と工房から取り出せるものはすべて取り出したんだけど、あきら曰わく美術的が皆無ゆえに買い取ってくれる人はほとんどいない。
うちの親父は懇意にしていた常連客がいたようなんだが、その人たちとはもう音信不通になっている。
優希が俺の下を去った時点で先はなかったんだ。
「メルフィナには悪いんだけど、俺……刀鍛冶辞めてどこか仕事を探すよ」
「待ってください! 旦那さまの太刀はクローディス王国……いいえ、各国が競って欲しがるほど売れるに決まっています。だから私といっしょに売りに行きましょう!」
肩を落とす俺の手を取り、メルフィナは女神さまのような微笑みをくれていた。
―――――――――あとがき――――――――――
誰ですか!? メルフィナがえっちな子と思ってる方は! あくまで彼女の純粋な治療行為に過ぎないのですwww
ちなみにメルフィナはヲークなど一部のモンスターが女の子を犯すということは知っていても、具体的にナニをするのかまでは知らないです。異世界に現代のような性教育があるわけではないので。
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