第9話 エルフと肉林を楽しむ
「あのさ、メルフィナ……言いにくいんだけど、大事なところが見えてしまってるんだ……」
俺は清水の舞台から飛び下りる気持ちで、それとなくメルフィナに見えていることをそれとなく指摘すると、
「ひゃんっ、旦那さまのいじわるぅ……」
白く透き通る肌を真っ赤にして、両手で股間を押さえて前屈みになってしまった。内股になりながら、あまりの羞恥心からなのかメルフィナは涙目になり、俺を上目づかいで見てくる。
そんなメルフィナがかわいくて堪らない俺はド変態さんなんだと思う。
「旦那さまは見ちゃいましたか?」
「み、見てないよ……」
まさか下も銀色モザイクだとは思わなかった。
羞恥心のない子だったらどうしよう、と思ったけど、あって安心した。
洗濯物が乾くまで優希が置いていったスパッツを穿いてもらうことにしたんだが……。
下着替わりに穿いたもんだから、余計にエロくなってしまって困る。ぴちぴちだけに、くっきりはっきり見えてしまうのだ。
ナニというか、メルフィナの造形美が!!!
彼女が着てきた服と下着は洗濯してしまったので乾くまでの間、我慢してもらうことにした。
ぐうぅぅぅ~。
洗濯物を干しているとメルフィナはまた顔を赤くした。
「食事にしよっか?」
「はい!」
あのヲークの目は、俺を牙でぶっ差してニヤついていたように思う。そいつが今やメルフィナにより的確に食肉処理され、ポークステーキとなり俺たちのお皿に乗っかっている。
俺が怪我したときのメルフィナの目に宿る怒りの感情を思い出すと思わず、身震いしてしまっていた。
【深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている】
そんな格言(?)を思い起こさせるものだった。
俺は知っている。
イノシシの突進は軽自動車如きでは止められない。むしろ軽自動車が炎上してしまうほど、奴らの頭蓋骨は固いのだ。
おそらくだがヲークの頭蓋骨はそれ以上だと思われる。いくら俺たち親子の打った太刀が頑丈とはいえ、メルフィナは初めて使ったであろう太刀でヲークの頭蓋骨ごと一刀の下に両断してしまったのだ。
ふふふふ~ん♪
メルフィナは鼻歌混じりでヲークの肉をBBQコンロに並べてゆく。さながら肉奉行ならぬ、肉騎士だ。いやなんか彼女と一緒にお風呂に入ったせいか、ちょっと語感がいやらしく感じてしまう。
蔵に仕舞われてあったキャンプ道具だったが、メルフィナは俺が使い方を説明するまでもなく、手際よく準備をし終えてしまっていた。
「もしかして遠征に行ったとき、野営とかもするの?」
「はい! 騎士団のみんなと野営することは多いんです。でもこんなに簡単便利に展開できるテントやコンロは初めて見ました」
メルフィナは俺がライターで炭に着火させようとすると驚いていた。「どこにも精霊さんたちがいないのにどうして?」と。
それを聞いて逆に俺の方が気になった。
「さっきメルフィナはどうやってお風呂の火起ししたの?」
「精霊さんたちにお願いしました」
俺にはまったく見えないが、メルフィナは指でなにもないところを撫でて笑顔になった。
「こちらの火の精霊さんは変わったお名前ですね、訊ねたらカグヅチさんと名乗られていました」
「なっ!?」
メルフィナ、それ精霊ちゃう! 神さまや!
異世界の住人から日本の神さまの名前が飛び出してこようなんて思ってもいない。清太が節子にツッコミを入れたように心の中で叫んでしまっていた。しかも彼女は彼らを使役しているのだから……。
「それにログインボーナスというのがあるらしくて、毎日カグヅチさんのところに通うとフレンドポイントが溜まって、魔法の効果が増すと言っています。一体、なんのことでしょうか?」
「ソシャゲか!?」
きょうび神さままでソシャゲの影響を受けてるなんて知らなかったよ……。
「もしかして
「はい! よく分かってるな、と。世話してくれる者たちを食わさないといけないから、とも言ってますよ」
益々ゲームじゃねえか!
まあ今の時代、神さまも金次第なのかもしれない。貧乏な俺には廃課金なんて無理だ。それでも取りあえず役に立つかは分からないけど、覚えておいて損はないだろう。
日本人の俺でも知らなかったことを教えてくれたメルフィナだったが、そんなことお構いなしに本人は慌てていた。
「まあ、大変ですぅ。お肉が焼けちゃってます」
俺は左目を右手のひらで押さえ、言い放つ。
「食っていいのは食われる覚悟がある奴だけだ!」
「旦那さま? どうかされました?」
「あ、いやなんか言ってみたかっただけ……ただのお祈りみたいなものだから」
別に左の呪眼が
しかし一つ疑問に思うことがある。
非常に旨そうな匂いを漂わせるヲーク肉なんだが、いつの間にか食べるということになっていた。
「メルフィナ、一つ訊きたいんだけど……」
「はい、なんでしょう?」
「ヲークは食べても大丈夫なのか?」
「ええ、とっても美味しいんですよ! だから冒険者さんたちは危険を冒してまでヲークを狩りに出るくらいなんです」
「ふ~ん、そうなのか……」
猟銃を持たずに狩猟免許を持っていた師匠が喜びそうなネタだな……。あの人なら「ひと狩り行こうぜ!」とか言い出しかねない。
ぶすっとヲーク肉にフォークを刺して、まじまじと見る。
タレと相まって、マジで旨そう。
しょうゆとみりんの甘辛ダレに焦がしニンニクをトッピングしたトンテキをいただく。
「う、うめえぇぇぇーーーーーーーーーー!!!」
ぼたん肉に似て、しっかりとした噛み応えに噛めば噛むほどコクが染み出してくる。俺の隣でメルフィナも小さくてかわいらしい口でパクついていた。
「はい! とっても美味しいです! もうヲークをひと狩りいけそうなくらい」
どうやらメルフィナと師匠は同類だった……。
「い、いや……メルフィナがいなかったら俺、死んでたから……」
「旦那さま……それは私も同じです。旦那さまからお借りした太刀という剣がなければ私もヲークにきっと『クッコロ騎士』にされていたことでしょう」
蔵に樽置きしていた調味料、皿に移し変えていたのだが、メルフィナは赤橙色と琥珀色の皿を手に取り、見比べながら言った。
「オショウユ、ミリンという調味料は初めてですが、こちらにはこんなにも美味しいものがあるんですね。是非持ち帰ってみんなに教えてあげたいくらいです」
「俺も村の人たちにヲーク肉を振る舞ってあげたいくらいだ」
メルフィナとキャンプ飯をいただきながら話したことなんだけど、今のところ素材の美味さと豊富さなら異世界、調味料なら現代ということに落ち着いた。
食べても食べても尽きないヲーク肉に舌鼓を打ち、俺は満腹になってしまった。
メルフィナは
紆余曲折あってメルフィナと楽しく過ごしていたが、腹がいっぱいになると問題が途端に頭をもたげてくる。当面は蔵を整理して、そこで暮らせばいいけど、工房が無くなってしまった以上、生活基盤がもう立たない。
どうしようかと思っているとメルフィナが俺に声をかけてくる。
「なにかこちらに近づいてきます」
庭木の外を見ると遠くから高級外車が近づいてきていた。
あきらの車だ!
―――――――――あとがき――――――――――
ガンダムSEED FREEDOMが絶好調のようで歴代のガンダム映画の中で興行収入1位になったとか。その余波でなぜかしぐれうい先生の『粛聖!! ロリ神レクイエム☆』の再生数が今まで以上に伸びたりとお祭り騒ぎです。ということで作者もWeb物書きV Tuberを目指します!(←目指さんでいい)
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