第4話 つよつよエルフ

「さあ、召し上がれ」


 西洋系の顔立ちから米は苦手かもしれないと思い、村のコンビニで買ってきた食パンに優希が作り置きしておいてくれたハンバーグを挟んだサンドイッチを彼女に差し出した。


「えっと……これは……」


 お皿に盛られたハンバーグサンドを前にどこか戸惑った様子のメルフィナ。う~ん、サンドイッチってイギリスが発祥の地でそこからヨーロッパに広まっていったと思ってたんだけど……どうやら彼女は知らなさそう。


「いただきます」


 俺が食べ方の手本を見せるために手を合わせたあと、サンドイッチを手で掴んで口へ運ぶ。


「あのお祈りとか、手で掴んで食べてもよろしいのでしょうか?」

「あ、うん。手を合わせるのがお祈りみたいなものだね。それに『いただきます』というのは命をいただくって意味なんだ」


 メルフィナは視線を横に移し、数回こくこくと頷くと俺に倣いサンドイッチを手づかみしていた。


 まさか彼女の肩に本当に精霊がいるんだろうか? そんなわけないよなぁ……。


「いただきます」


 上目づかいで俺に本当に食べていいか、目で合図を送ってくるので、「とうぞ」と伝える。なんだろう、若くてかわいい子からそんな風に見られるとこっちの方が緊張してしまう。


 俺の緊張をよそにメルフィナはかぷっと小さい口で頬ばると一言。


「お、美味しいです!!! 私、こんなに美味しい食事は初めてです」


 あの特徴的な長いをぷるるっと震わせて、美味しそうにもぐもぐと咀嚼していた。飲み込むとメルフィナは身を乗り出して俺に訊ねてくる。


「こちらはなんというお料理なんでしょうか?」

「サンドイッチだよ」


 彼女はきょとんとした目で俺を見る。何を言っているのかまったく分かっていなさそうな顔をしていたが、また横を向くとうんうんと頷いて納得した様子だった。


「それにハンバーグとレタスなんかの生野菜を挟んである」

「ハンバーグ? レタス?」

「ま、まあ分かんなくても食べられるから」

「はい!」


 よほどお腹が空いていたのか、メルフィナは二切れのサンドを平らげた。すると彼女は身なりを整え、俺の前で片膝を着いて頭を下げた。


「刀哉さま、介抱していただいた上にこんな美味しいお食事まで提供してもらえるなんて……このメルフィナ・フォルトナス、心よりお礼申し上げます」


「そんな大したことはしてないから。それに刀哉さまは止めてよ、刀哉でいいから」

「は、はい……」


 なんだろう? あちらの人はフランクに名前で呼び合うものなんじゃないのか。それと同時にむくむくと俺にメルフィナに対する興味が湧いてくる。


「メルフィナは日本語がとても上手いんだね。なにか日本にゆかりでも?」


 特に気になったのが日本語が上手いのにサンドイッチなど簡単なことが分からないというアンバランスさだ。


「日本語? ああ、こちらの言語のことですね。それなら簡単です、精霊の加護のひとつ【言語最適化ローカライゼーション】により彼らが私と刀哉さんとの仲介をしてくれるのです」

「へえ~、精霊ってそんな便利なんだ!」


「じゃあ、メルフィナは日本……えっと、ここへ何しに来たの?」


 気分は『Y○Uは何しに日本へ?』のレポーターになった感じだ。


「はい、実はハイヲークが王国の村で暴れていると聞きつけ騎士団で討伐に来ていたのですが、ダンジョンに逃げ込んだ形跡を見つけ、追っていたらこちらへ迷い込んでしまったようなのです」


 メルフィナは、あくまでコスプレのために日本へ来たとは明かずにファンタジー設定を語る。俺はメルフィナの言ったことにうんうんと理解あるように頷きこそすれ、内心かなり戸惑っていた。


 こいつは手強いぞ……。


 本気度が厨二病だった俺の師匠並みだ。いわゆるギミックという奴で自分の世界観をちゃんと持っているタイプのレイヤーさんらしい。まあぶっちゃけ痛い子とも言えなくないが……。


「この国は素晴らしいです。こんなにも精霊があふれているなんて!」


 メルフィナは両手を広げて、見えない物が見えているかのように振る舞っていた。手のひらの上でまるで精霊が存在しているように指で撫でて戯れているような笑顔を見せる。


 スーパーモデルではなく、演技力の鬼ってる女優なのかもしれない。


 団長っぽいコスプレをして、来日するくらいだ。キャラ愛ゆえに多言語マスターであってもなんら不思議ではない。


 しかし付け入る隙はある。


 Web小説のように後半に至るにつれ、設定がブレブレになったり、作者が忘れたりすることはよくあることだ。


「あの鎧は精巧にできてるね。素材とかどこで売っているのか教えてくれないか?」

「はい! あれはミススル製なんです! それに……」


 ちょ、ちょ……待って!


 なんですか、そのミニスカ生足ファッションで白衣を着ている女医さんの真逆で「私失敗するので」みたいな金属名は……。


 俺が吹き出すのを堪えている横でメルフィナは設定語りを続けている。


「売り物ではなくクローディス王国工廠で作られ、プレスター陛下から下賜されたものなのです」


 手強い……。


 師匠ならこの程度くらい突っ込むとすぐにボロを出してくれたものだが、ここまでスラスラと設定が出てくることをみると彼女の言っていることに嘘はなさそうに思えてくる。


 並べられたミススルのプレートメイルを見て、どこか誇らしげに振る舞うメルフィナ、俺は甲冑よりもたわわに実った二つのメロンの方を誇った方が良いように思えたのは内緒だ。


「あっ!? ないないない……あ、ありません」

「急にどうしたの?」


 しかし誇らしげだったメルフィナは急に顔が真っ青になって挙動不審ぎみに焦りだした。


「刀哉さん、あの……私と一緒に剣は落ちてませんでしたか? お養父さまからいただいた大事な物なんです!」

「剣? 見なかったなぁ……」


 洋の東西を問わず刀剣に目がない俺だ。特に珍しいとあれば真っ先に拾っているはず。


「それじゃ二人で探そう」

「ありがとうございます!」



 二人で手分けしながら庭を捜索していた。植え込みや用水路の辺りまで探したんだけど……、


「あった?」

「ありません……」

「こっちも見つからない」


 お互いの成果は芳しくない。さっきまで快活だったメルフィナの表情はどんより曇り模様で、よほど彼女が大切にしていた物だと分かる。


 もしかしたら田んぼに落ちてしまった可能性も微レ存微粒子レベルで存在するかと思い、顔を上げたときだった。



 グォォォォォォォッッ!!!



 ファンタジーでお馴染みの豚顔のモンスターが目の前におり、俺たちを威嚇するような咆哮が辺りに響いた。


「なんで……ヲークがここにいるんだよっ!?」


 目の前には屋根より高い手負いのヲークが棍棒を構えて、俺たちを睨んでいたのだ!


―――――――――あとがき――――――――――

作者、通販で某社の美プラを買ったはずが、なぜかガ○プラパーツが届きました。おかしいと思い伝票を見ると美プラの商品名と番号。注文は間違ってなかったんですが、どうもお店が入れ間違えたらしいです。たぶんですが、作者の買った美プラは間違えとはいえ別の方へ嫁いでしまったかと。


_人人人人人人人人人人人人人人_

> 作者、BBSされた気分!! <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^YY^Y^YY^Y^Y ̄


そんなの【好きな子がBSSされたら、当然NTRるよね】という新作を書いちまえ! と思った優しい読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。

お風呂なんですが書き切れなかったので、

⇦To be continued……

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